第55話 可能性の分配
同日 16時01分 マテリア寮
「みんなに集まってもらったのは他でもないの」
アンナによってマテリア寮の食堂に集められる寮に住む若き錬金術士達。
ジョニー。
ユールティア。
ナーシャ。
アリスィート。
そして本人を合わせて合計五名。に加えて複数名の使用人。
「世界樹で手に入れた素材をみんなで分けようと思うの」
「世界樹の素材──!? 確かに魅力的だけども、あなたの施しを受ける気はないわ」
貴族であり、錬金公爵の位を持つ父がいるアリスィートにとってアンナの施しは侮辱にも聞こえた。アンナの存在はライトニアにとって曖昧。錬金伯爵と血の繋がりがあるとされているが、それを証明する物が何もない。
最悪、階級社会を知らぬ田舎娘から物を与えらえるという屈辱が残る。
護国の為に協力するのとは訳が違う。
その素材が持つ力を知らない訳ではない。むしろ詳しい。父の権威を利用したとしても滅多なことではお目にかかるのは難しいことも知っている。
「ううん、そういうつもりはないの。これはわたしがそうしたいと望んだことだから」
アリスィートの敵意のこもった鋭い視線も気にせずと言った表情で話を続ける。
「ちなみにそれは枝かい? それとも葉? 確かに珍しいとは思うけど僕達で手に入れられない訳じゃない。流石に今はまだ実力不足だと思うけど受け取る訳にはいかない」
錬金術士にとって素材収集も実力の内に捉えられる。
労働、技術、金銭、そういった対価として受け取るなら納得するが、同年代より無償の施しには賛成しかねていた。ジョニーは貴族で無くなってもその誇りまでを失った訳ではない。
「枝はわたしが使いだけ使って余ったらわけてもいいけど……とにかく見て、これだから──」
『どこでも倉庫』を起動させ、異空間を繋ぐ門を展開し両腕を伸ばしある物を掴み取り出す。
「巨大な胡桃? ……えっ? まさかそれは──」
「世界樹の実だとでも言うつもりかねっ!!?」
アンナは頷いて肯定すると。
全員の視線がその実に集中する。
錬金術士でなくてもその身が持つ力は理解している。彼女達なら尚更その価値を理解している。存在していることは知っていても姿形までは図鑑に載っていない。
「偽者──なんて言いたいけど、直に見ると力強さが肌で伝わってくるわ。これを見て偽者なんて決め付ける錬金術士なんていない……! 言うとしたら審美眼が腐ってる凡流錬金術士ね」
「アンナさん、これを分けるとおっしゃいましたが、それは何故でしょうか? あらゆる可能性を有しているこの実はまさに至宝! アンナさんの叶えたい全てを叶えられるのではありませんか!?」
「だからこそだよ。多分わたしの頭の中で思いつくことなんて限られてる。でも、みんなの技術と発想力を加えたら単純に5倍の可能性が広がる! この実はテツとセクリの力もあって手に入れることができた。だからひとりだけで使うことはできない。この実だってこれまでみたいにただ食べられるだけの未来を望んでないと思うから」
素材としての格が違った。
国が総力を挙げても入手できるか怪しい希少素材。ただの実にあらず、一般人が見れば巨大な胡桃と勘違いするが、優れた目を持つ者には実から発せられる蠱惑的な魔力に視線が釘付けになるだろう。
「なるほどね……施しを受けたくないって誇りもあるけどこれを前にして何にも研究しない調合しないなんて錬金術士の誇りが許してくれないわ」
「中々面倒な性格をしているね君は。その点ぼくは貰えるのだったら遠慮なく貰うよ、世界樹の実なんて生きてる間にお目にかかれるなんて思ってもなかったからね。長寿なエルフでも難しいことなんだよこれは」
「誰もがあんたみたいに大雑把じゃないのよ」
「心が広いと言ってほしいがね」
これを前にして誇りは意味を成さない。知的好奇心が理性を無視して湧いてくる。既に頭の中では「あれが作れるかも」「こう使えるかも」と言った未来予想図が描かれ始めていた。
「みんなの意見もそろったみたいだね──というわけで、ファイさんお願いします!」
「まさか世界樹の実を切る大役を任されることになるなんて思いもしませんでしたわ。使用人長を続けていた甲斐があったというものです」
姿を現すは冷静沈着、万能無敵、マテリア寮の安寧は彼女が作り上げていると言っても過言ではない。一騎当千の完璧使用人長。『サファイアス・ピアニ・ブリミアンス』。
そんな彼女も世界樹の実を前にして緊張が走っていた。
幾千もの食材を捌き、飾り切りで作れぬ物は無いと言わしめる実力があれど、この実は初見。
初めて触れる実を優しく撫でながら調べ指先に力を入れて強度を確認する。豆腐のように柔くないことを理解すると、底が広く深さが浅い金ダライの中心に世界樹の実を音も無く乗せる。
「チェック──」
続き、実の頂点へ指先が触れると魔力の波が実を包むようにゆっくりと浸透していく。
「なんと……! こんな実の形をしているとは……あらゆる果実を切って割いてきましたが、これは初めて目にします! 外側の果皮と内側の果肉の間に液体が満たされ、それに果肉のこの形は……完全な球体!? そして中央には種……でしょうか。しかし、この感覚はまるで鉱物──?」
調査魔術、閉ざされた物体の内側を魔力によって分析する。彼女は食材の内側が腐っていないかの確認に多用しているが、本来は封鎖された扉の奥や宝箱の罠を確認するのに使用される。
「あ、あの。折角の機会なので写真に収めてもよろしいでしょうか?」
カメラが趣味の使用人が恐る恐ると言った様子でカメラを取り出す。世界樹の実の希少性は使用人達にも周知の事実。これは逃す訳にはいかないと給料三ヵ月分を超えるカメラを持ってきていた。
「いいよ。スケッチするよりも早くて詳細に記録できるからわたしとしても助かるから」
「ありがとうございます!」
カシャリとシャッター音が響くと現像された写真が吐き出される。写真を見ただけでは突然変異で大きくなった胡桃と言っても通用しそうである。
「おぉ~やっぱりカメラって便利だよねぇわたしも買おうかな?」
「やめた方がいいと思うよ。1台30000キラを優に超えるというじゃあないか。錬金術で作るのも大変だと言うし、撮影所で撮ってもらうほうが安上がりだといいんじゃないかい?」
「フィルム代もかかりますし、壊したら大変ですよ。私も外に持っていくことはしませんし。温室で撮るのが限界です」
「さて、記録もそこまでにして始めましょう」
「長こちらを」
「ありがとう。──では、皮の繊維に沿って果肉を傷つけないように切らせていただきます」
「これが包丁なの……? というより、この厚くて硬そうな果皮を切るなんてできるの?」
アリスィートが疑問を持つのもおかしくない。彼女が持っているのは長さはあれど紙のように薄い包丁、力を少し入れたら歪んで折れてしまいそうな脆弱さを放っていた。
「精斬紙切……一枚の紙を二枚に切ったとされる名包丁ですわ……!」
「おお……ん? それのどこがすごいことなのだい? どんな包丁でもできそうなことな気がするが?」
「厚みの部分を切り、縦も横の長さを全く損なうことなく二枚するということです」
「厚み? …………いやいや切るような部分は──本当なのかい?」
「世の中にはそれぐらい細く切らねば調理できない素材も数多く存在しますからね。扱える方を見るのは初めてですが……」
包丁が実に向けられると部屋に緊張が満ちていく。
使用人長の額にうっすらと汗が浮かぶ。世界に自分しかいないような超集中状態に移行し、包丁の時が止まったかのように微細な揺れが無く、それでもゆっくりと目に映らないような実の繊維の隙間へと入りこむ。
セクリを含めた多くの使用人が実の行く末を見守ると同時に長の実力を身近で見られることに心が躍っていた。サファイアスの実力を見る機会は少ない、何より今回は彼女の全力を見られる貴重な機会かもしれないのだから。
何時だって尊敬の証明は圧倒的な技量と実力。部下達の信頼や従順さは自分達では超えられない学びたい何かがあって確固たるモノとなる。
この世に二つと存在しない実。失敗したら取り返しが付かない。信用と期待、プレッシャーに押しつぶされかねない。自分だったら緊張で吐いているだろうと包丁を置いているだろうと簡単に想像できた。
そんな重圧をものともせず、精密な動きで実をゆっくりと傾けながら刃が進ませる。半円を描くと一度実の位置を正し、続き反対方向へと刃を進ませる。切り跡が見えないぐらい薄くとも隙間は出来上がっている。
再び半円を描くことで円の切断が完成する。
その証明のようにファイは実から包丁を離し、小さく呼吸を整えた。
けれど実は切られていないのか、切られたことに気づいていないのか隙間を埋める液体は零れない。
「あれ? 切られてない?」
「いいえ、済んでいます。ごらんください──」
実を横に倒し切断面を真横にし、蓋を回すように指を躍らせると──
「わっ!?」
果皮が動き、全方位から液体が流れ落ち、蓋となった果皮を外すと果肉の姿が露となった。
「これが……! 世界樹の実!? き、きれい──!」
「なっ──香りが一気に広がりますわ!?」
実に一筋の切傷も無く、宝石のような半透明を持ち黄金の輝きを放つ果肉。圧倒的な美しさもさることながら多くの生物を惑わせ引き寄せる香りを放った。
人より鼻が良すぎるナーシャは誰よりもその香りの影響を受け、脳が多幸感に包まれ醜態を晒しそうになるのを思わず鼻を覆って堪える。
「何この芳醇な香り……!? どんな完熟した果物よりも強い甘い香り、ピーチにだってグレープに負けてない。なのに、レモンやオレンジのような清涼感のある香りもある。今まで食べた果物の集大成、いえ、むしろ全ての果物はこの実から分化して生まれたと思ってしまうわ」
「写真撮っておかないと……!」
ガラスで作ったと言っても信じてしまいそうな、果実としては異質な見た目。図鑑に形が載っていなかったのは誰にも信用されなかった。と言っても通じるだろう。
「保存容器の準備は出来ています」
「クッション──」
皿のようになっている果皮を掴みゆっくりと液体をタライの中に零しながら傾けていき、果実を手の平を狙って転がり落とす。
しかし、手の平には触れず魔力によって支えられ黄金の果実は宙に浮かんでいた。
「後はここから五等分に致します……」
じっくりと観察し刃を通す先を見極めようとする。
繊維の流れが細胞の向きが存在している。その流れに沿って傷めず切る技術をサファイアスは有している。
しかし、目に映る果肉の球体は人智を超えていた。
隙間も窪みも無ければ皺も無い、オレンジのように複数の房が繋がっているわけでもない。全体が陶器のような滑らかさに加えて完全な球体。
内心驚き、混乱に満ちているがそれをおくびにも出さず呼吸を整える。
全てが滑らかであるならどこを通しても同じ。
包丁を当て力を入れて奥へと進ませていく。
(これは……!? 柔らかいとか潰れていく感覚がまるでない!? 液体を切っているかのよう……でも確かに個体、それに果汁が漏れることもない。そして中央の種子は特別に硬い、これは切ろうと思って切れるものではありませんね……無理に通す必要はない)
72度ずつに切り終えると、花が開くように中央が丸く窪んだ半月の果肉が広がり、中心に細胞のような種子が露となる。
「おお、おみごと──!」
全員の感嘆の溜息と同時に黄金の花が写真に収められる。
そして、五等分の窪んだ半円は特別製の保管容器で密閉され、虫一匹入ること叶わなくなった。
「本当にこれが世界樹の種なのかい……!? 植物の種というよりももはやガラス細工じゃあないかい?」
「種だけじゃなくて、中身全部が人工的に作られたと言われても信じられるわよ……それに切ったっていうのに果汁が漏れてない。鉱物か何かかしら……?」
「とにかく、分析はこれからにしておいて……種はわたしが貰うね。他は……ピンと来ないから誰かもらっていいよ」
「流石にこれらを捨てるのも勿体無い気がしますからね。では私は皮の片方をいただきますわね」
「なら、もう片方は僕が貰うよ。これにも可能性を感じるからね」
人が見ればゴミにしか見えない、果皮はあくまで中身を守る為の鎧。中身にこそ価値がある。食べることもできない、器にするには不衛生な半球の殻。
それに彼達は何かを感じ取り手に取った。
「ではぼくはこの液体もついでに頂こうかな。実を保護するための役割だけだとは思うけれど気になるからね。それと失礼して……ペロリ」
「ユールティア!?」
誰かが止める間もなく、タライに溜まった果肉と皮の隙間を満たしていた液体をスポイトで採取し、手の甲に数滴落としそれを舐め取る。
「……少々甘いが殆ど水と変わらないじゃあないか」
「ふぅ、先走って何やってるのよ! 果肉を保護する役割がある液体なんだから毒性があってもおかしくないのよ」
「流石にそれは考えすぎじゃあないかな? 木の実を丸呑み、丸齧りする生物だって──はぅっ!?」
キュルルルルル──
異音がユールティアの腹部からはっきりと他の者に聞こえるぐらいの音量で聞こえた。品が無いと笑い話にできそうな音でも、状況がそれを許さない。
「す、すまない。この場を離れさせていただこう」
「ま、まさか本当に毒が!?」
真剣な表情の使用人達の視線がユールティアに集中する。医療魔術、解毒魔術の準備も整えられており、さらに胃洗浄の用意も始まる。
「すぐに解毒を──」
「い、いやお花を摘みにいくだけだ。大事にしなくていいとも!」
「ですが──」
「いいから──!」
そうしてユールティアはトイレに駆け込み。念の為使用人の一人が後を追った。
その間、残された者達は心配しながらも残りの作業を進めた。舐め取った液体も警戒しながらビンへ小分けし集められ。合計で1l近い量が採取された。
数分の後、トイレから戻ってきたユールティア。
「みんな待たせたね」
「身体に異常は……あら? 何か変わった」
表情は晴れ晴れとして、体から羽が生えたのかと思うぐらいに軽々とした足取りで戻ってきた。
「どうやらすこぶる快調になったようだとも! 抜けなかった疲労も無くなった感じで中にあった悪いモノが全部抜けていった気さえするとも」
「品が無いわよ……でも、体調が改善されたってこと? たったアレだけで?」
「どうやら世界樹の実がもたらす不老不死もあながち間違いではないかもしれないね。果肉本体でなくともこれだけの効果を発揮される。この液体はボクが大事に研究させてもらうよ」
「あなただけに独占させるわけにはいかないわね」
確信を持って一本ずつ彼女たちは掴み取る。
身を持って可能性を知ったユールティアはお腹をさすりながら実と液体を見比べながら何を作るか決め始めていた。
「使い方、調合の仕方で本当に何でもできそうだ……! 特に人の成長や治療に関して想像以上の効果を発揮するかもしれない!」
「死者蘇生……は流石に夢物語すぎるわね。でも、それに近しいことは可能かもしれないわ……」
「私はこの香りについて研究いたします。ここまで芳醇な香りは初めて体験しましたからね。熟成しきったドリアンを超える香りの強さですから」
「確かにそれも注意すべき事柄と言えるね。保管容器のおかげで匂いも漏れ出していないから今は平気だけど、常にあの匂いを嗅いでいたらおやつ感覚で食べてしまいそうだよ」
「わかる。そうならないためにも冷蔵庫の奥に保管しといて果実の研究は後回しにしとくかな。枝を使って色々と作ることになりだから。やっぱりみんなに分けて正解だね」
「……アンナさん。一つよろしいでしょうか?」
「ファイさん? あらたまってどうしたんですか?」
気品と強さに満ちて隙の無い彼女が切羽詰まったような表情で、深々と頭を下げる。
その所作に跳ねるようにアンナは驚き、背筋を正して向き合う。
「その実を少し分けていただくことはできませんか?」
「長!? いきなり何を!?」
使用人たるもの、主の調合品や素材に手を付けてはならない。
マテリア寮に従事する者、最初に誓約させられる事柄。希少な物品に留まらず研究成果を横流しする事態があれば使用人の信頼は地に落ちる、安心して錬金術に勤しむことができなくなるから。
足りない調味料を分けてもらうとは訳が違う。
許可を取ろうとしているから清廉潔白ではない。これを許せば次に繋がる、破ってはならぬ不壊の誓い。
それを使用人の長が破ろうとしている。場はざわめき、よりにもよって世界樹の実に対して欲を見せた事実に使用人達の心象を揺らがせるものとなる。
「どうして欲しいんですか?」
アンナは冷静に耳を傾ける。
そもそも欲しいなら何時でも盗むことができていた。いくらでも技術を利用して一部切り取り誤魔化すこともできた。加えてこの中で一番武の実力が高いのもサファイアス。盗った時点で誰も止めることができない。
「──前王コメット様を目覚めさせる鍵となるかもしれないからです」
「前の王様……? あ、そういえば病院でそんな話を」
昼頃の出来事を思い出す。あの出来事が無ければ頭の疑問符はもっと浮かんでいただろう。なにせアンナにとっては顔も知らない相手。
「確かコメット様は今も尚床に伏せているのでしたよね?」
「外傷は完治しております。体内に腫瘍がある訳でもありません。眠り続ける原因がわからないのです。時が薬となるとしてもそれがいつ目覚ましになるのか……世界樹の実を与えれば何か変化が現れるのではないかと思いまして」
十年前、アメノミカミの襲撃と同じ時にガイア・ローズの凶刃によって倒れてしまった。
目覚めの手段となる──そう確信を持ったのがこの世界樹の実。見て触れて、ユールティアに現れた効果でその可能性は高いと判断できてしまった。
「だとしたら、私の分を使用すべきです。錬金公爵の娘である私が王に対し敬意を示すのは当然ですから」
アリスィートがそう言って差し出そうとするのをアンナが制した。
「アリス待って。ファイさん、1度王様を直接診ることはできませんか? 分けるかどうかはそこから決めたいです」
「一度相談してから──」
「ファイさん。この実の価値はあなたもすごくわかってるはず。沢山の人に知られたらどうなるかわからないんです。だから、今決めてください」
「ちょっとそんな横暴な!? 希少なのはわかるけど人助け、それも王なのよ? サファイアスさんには日頃お世話になっている。渡さない理由がないわ」
「わたしが嫌なのは、わたしが信じた皆以外に勝手に使われることなの! 自分が手に入れた物には最後まで責任を持つ。できないならわけない。大きな力ならなおさら注意が必要」
「その心構えは大事だけれど……」
「そもそもね、多く必要は無いと思うんだ。世界樹の実の力は本体でないあの1滴でも発揮されてた。だから実際に王様を見てからあげる量を決めるのが正解だと思う。ここにいる誰よりもわたしが実の力を知ってる。与え過ぎたら別の存在に進化してもおかしくないから」
他にも懸念点があった。適当に切り分けたとしても正しく王に与えらえるかの不安。この情報が広がり求める者がマテリア寮に入り込む可能性が想像できた。
「わかりました。貴方を信じます。ですが、姉と主治医には話を通させていただきます。私の一存では面会は不可能ですので」
「それを今日中にできますか? 早い方がいいので」
「……通して見せます」
大きすぎる力は、それも人が求める終着点とも言える寿命に干渉する力は誰もが抗えない。現時点で十数名に知られている、写真にも残っている。
本気で前王を救うとするならば、時間と秘匿が重要となる。
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