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最低価格の俺が錬金で成金!~The Lowest price man Promote to Gold with Alchemy~  作者: 巣瀬間
第四章 夢指す羅針盤を目指して
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第65話 お別れと始まり

 エルダ達は馬車に乗り、プリムラとルチアは自分達の飛行船に乗り込んだ。

 馬車は外壁外周の道を駆けて北へと向かう。木々や建物に隠れるまでエルダはこちらに手を振っていた。

 膨らんだ気嚢が今まで地と縫い付けられていた鬱憤を晴らすかのように空へと昇っていく。

 客室の窓から手を振る少女達。三人共こういうところは年相応でちょっと安心する。

 整列して敬礼の姿勢を取っている俺には残念ながら応えることはできないけれど。

 なにはともあれ無事に発進してくれて一安心だ。急な爆発も突風も無い見ていると不安だけが風に流される。


(テツ! 聞こえてる?)

(──ん? どうかしたのか?)


 急な念話(テレパシー)に体が一瞬ビクッと跳ねたけど平静を装いながら返答する。少しルールを決めといた方が良いと思う。俺がする時もアンナも同じ状態になってるかもしれないし。


(今壁上でそっちを見てるの! 飛行船ってあんな風に飛んでいくんだ……! あんなに大きいのに……すっごい……)


 念話越しでも心から感動した声が伝わってくる。聞くだけで何だか俺も純な気持ちが塗り替えられていくみたいだ。

 視線を壁上に向けると……流石に距離があってよく見えないけど青い空と白い雲を背景に小さい褐色の少女の姿が見える。


(こっちからだとまた景色が違うぞ。どんどん空に吸い込まれていくみたいだ)

(へぇ~! わたしもそっちで見ようかなって思ったけど、ナーシャ達とも見たかったからこっちにいるの。他にもおじさんやおばさんも飛行船が上がってるのを見てるよ!)


 確かにこんな光景滅多に見られることもないだろう。観光しに来る人がいるのも頷ける。ああ、こういうことも含めてがっしりと巡回やら色々やっていた訳か。ここ西のレーゲン地区は十年前の戦いで半壊した、住んでいる人もほぼいないからその意識が抜け落ちてた。

 観光客に紛れて襲撃もあり得たかもしれないってことだ。 

 ただ──もうそんな心配はいらないだろう。ここまで高く飛んでしまったら何もできやしない。

 そして、進路を整えた二機の飛行船は真逆の方向へ飛んでいく。北と南へ。

 

(最高のソウルチェイサーを完成させたら飛行船でむかえにいってあげないと!)

(ああ、そうだな!)


 一直線に自分達の国へ帰る飛行船。

 アンナは想像したんだろうなどんなに遠くにいても飛行船に乗せて父親を真っ直ぐライトニアへ連れて変える。そんな光景を。

 何も実現不可能な夢物語じゃない。父を指し示す羅針盤を完成させれば実現できるのだから。



 7月4日 風の日 20時00分 クラウディア城


 激動の三日を駆け抜けて最も疲労したのは鉄雄よりもクラウド王と言えるだろう。

 傍らに置くルビニアだけがこの国民に見せられないくたびれきった顔を見ることが許される。

 だが、彼の仕事はまだ終わっていない。


「……さて、開けるとしましょうか」

「私は席を外しましょうか?」

「いえ、そばにいてください。私が卒倒してしまった場合あなたが近くにいないと大変なことになりそうですから」


 三国より渡された要請書。

 手渡された時は走馬灯の如く様々な情報と想像が駆け巡り、自分の代で国が滅んでしまうのではないかという不安と恐怖で頭が真っ白になりかけていた。


「カミノテツオがいなければ戦火が上がっていたかもしれませんね……」

「彼がいなかったらこの事態は起きな──いえ、もしそうならアメノミカミ戦で国が今も大混乱に陥っていたでしょう……」

「難しいものです……此度の国交でライトニアでは手に入らない素材や調味料が多く手に入ったのも事実。それは彼との縁談が影響しています。彼がいなければ発生しなかった益です……では向き合うとしましょうか」


 これを渡した王達の様子は気になっていた。互いに内容がわかっているような様子が気になっていた。しかし、相談して決めた様子はなかった。

 一つ一つを見て頭のそろばんを弾くよりも全てを見てから賠償を支払う計算をした方が得策と考え三つの封筒を開き、全てを広げてテーブルに置く。

 するとそこには──


「……む? これはいったい……!?」

「どうなさいました?」

「まさか3人共似たような内容を要求しているなんて。ルビニア、あなたも確認してください。見間違いでないか私の希望的妄想でないか知りたい」

「そこまでおっしゃるのなら。かしこまりました」


 書かれている内容に大きな数字が書いてあるわけでも、鉄雄や破魔斧を要求する内容が書いてあるわけでもない。

 ただ、これまで許可されていなかったことを認可する必要がある。


「これは……断った方がよろしいのでは? 確かに破格な条件ですが、同じことが繰り返されてもおかしくありませんよ? 二度目はこれで済まない可能性が高いですよ」

「ですが、相手にとっては逆に狙い難くなります。襲撃者を操った者を炙り出すチャンスでもあるでしょう。これを私達側から断れば次の要求は想像できません」


 想定以下の要求に心が緩んでしまっていた。もしもこれを受け入れなければ次は金銭か? 錬金術士の強制招集か? はたまたライトニア負担の飛行船を使った定期的な交易か?

 これらと比べれば明らかにローリスク。将来的な国交に繋がりさえするだろう。


「……かしこまりました。ではファイにも連絡しておきます」

「ええ、お願いします。しかし……問題は部屋割でしょうね全員が10階を望むでしょうが……」

「1001が空室で隣です。他に使えそうな部屋を考えると04、05、06。計四部屋。念のため十階層の部屋は全て使えるようにしておきます」

「ええ、お願いします。では、彼女達の錬金学校マテリアへの留学受け入れ許可を返信致します」


本作を読んでいただきありがとうございます!

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次回から第五章に入ります!


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