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最低価格の俺が錬金で成金!~The Lowest price man Promote to Gold with Alchemy~  作者: 巣瀬間
第四章 夢指す羅針盤を目指して
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第45話 明日の不安

 同日 クラウディア城


「はぁ~……本当に緊張したぁ……こんなのやってらんないって。お父様だってこんなの経験したことないんじゃないの?」

「クラウド王、言葉と顔が緩んでます」


 大きな溜め息と年相応の言葉遣い。ライトニアの王という仮面が剥がれ落ちた。


「失礼……ただ、やはり……彼達との差に打ちのめされましてね……王としての圧、カリスマ性。今の私には渡り合うだけの胆力はありません……カーラさんに至っては王ではなく宰相。なのに、同じだけのオーラがありました」


 クラウド・サンライズ・ライトニア。22歳。

 十年前のアメノミカミ戦の最中、前王であるコメット・サンライズ・ライトニアはガイア・ローズの凶刃によって倒れた。一命は取り留めたものの現在も病院で眠っている。

 当時12歳のクラウドは空いた王の椅子へ座り国をまとめあげなければならなかった。崩壊した西区、隊長の裏切り、我先にと避難した貴族、前王の治療、混沌を極めていた。

 頼れる者は少なく、他国の慈悲や援助もあり十年前は殆ど運だけで乗り越える。


「あの方達にも若かれし時もあったはずです、誰もが最初から最高の王にはなれません。時と実績を重ねて今の姿になったのです。貴方が前を向いて成長を望み続ければいずれ同じ高見へ到達できるでしょう」

「だといいのですが……」


 王の椅子に着いて十年、実力不足を感じずにはいられなかった。

 言葉を通す力の差、同じ言葉でも話す人によって感銘を受けるか興ざめするか。残酷なまでに人は人の持つ背景や風格に弱い。カリスマ性に酔ってしまえば人は正当性に疑問を抱くことなく受け入れてしまう。

 クラウドはまだその資質を有していないと自分で分かっている。このライトニア王国という箱庭だけでしか通用しないことも。


「それよりも今は、三国の王と姫……ライトニアに集まっているこの状況、カリオストロから見れば絶好の好機と取るでしょうか……」

「確かにあの方達にもしものことがあれば私達の責任問題になりかねません。ですが、この情報はほんの数日前、知る者は少ないです。発着場の整備もどの国の誰が来るかは伝えておりません。王が来ることまでは私達も予想外でした」


 カリオストロ、その総統メルファの目的はライトニア王国への復讐。

 現状を把握されれば、国際問題を引き起こす種は幾らでも作れるだろう。王や姫に怪我をさせれば管理不行き届き、情報漏洩による信頼失墜。

 慰謝料により金銭だけでなく技術力も搾り取られかねない。

 客人を守ることすらできない貧弱国力と揶揄され、観光客も激減する未来もあるだろう。


「ええ、鷹が届けてくれた封書も私が開けるまで誰も開けていません、それに部屋にはあなた以外は誰も入っていませんから」

「もしも起こるとしても突発的な暴徒が限界でしょう。明日は防衛部隊が多く哨戒致しますから。不審者がいればすぐに取り押さえられますよ」

「王達も偶然とはいえこの機会に会談を明日行いますからね。王城に踏み入れることは不可能、レインも護衛に付けるので1番安全な場所となりますよ」


 だが、そもそも情報を得ることが不可能に近い。

 三国も襲われることを望まない、自分の娘が傷つくことを望む親はいないのだから。

 クラウディア城で会談する王達の安全は約束されたようなもの。では姫達は?


「1番の心配はテツオとデートを行う3人の姫ですね……」


 暴徒に襲われて守り切れず怪我をさせないか──


「ええ、確かに心配です……」


 彼女達に粗相をしでかして傷つけないか──


「護衛を付けた方がよいのではないですか?」

「ご安心ください、何かが起きたときに対応する者に当てがありましたから」

「話が早くて助かります」


 デートを無事に完遂させるサポート役。王が頭に思い浮かべているのは。

 急な襲撃に柔軟に対応できる屈強な騎士団員がやってくること。

 だが実際は急な要望に柔軟に対応できるであろう鉄雄の知り合いに話をつけた。

 クラウドはルビニアを全面的に信頼している。問題ないだろうと満足そうに深く頷いた。


「明日のデートとやらはどこに行くのか決まっているのでしょうか?」

「ええ、先程大まかな計画は立て終わりました。彼が向かうのは────ですよ」

「なるほど……! しかし、観光名所となる建物を作っておいて良かったと思いますよ。先代達に感謝ですね」


 明日、国の繋がりを懸けた戦いが始まる。全ての中心は神野鉄雄と三人の姫のデート。失敗すれば会談が和やかに進もうとも無に帰する。

 方向性が真逆を指せど二度目な護国の戦いが鉄雄に訪れようとしていた。

本作を読んでいただきありがとうございます!

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