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最低価格の俺が錬金で成金!~The Lowest price man Promote to Gold with Alchemy~  作者: 巣瀬間
第四章 夢指す羅針盤を目指して
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第40話 子供の憧憬心?

「正直言って3国が同じ事を考えて、同じような年の子を連れてくる状況たぁ俺も予想の範囲外だったぜ……」

「ああ、我としてもこの状況は想定外、貴殿の国ではパトラというのが候補にあがるかと思ったが」

「姉さんはムリムリ、大陸全土の男を手玉に取る人だぞ? たった1人のものになったら戦争起きちまう。コーウィン様もそこを恐れてるぐらいだからなぁ。この国にも姉さんの虜になった男が既にいるんじゃないか?」

「タイリクビジョの5シにハイるとイわれている。イセイドウセイ、ゼンシュゾク、オとすケイコクのリュウサヒメだったか? オレとてフれられたらクチがカルくなりそうなキケンなオンナだ」


 傾国の流砂姫?

 確かにその名に相応しい美貌と立ち振る舞いを有していた。自分に自信のある男だったり女性慣れしてたら逆に堕ちやすそうだ。俺ぐらいモテた経験が無ければすぐ現実に戻って来られる。特別な一人じゃなくその他大勢の一人だと認識すればな。


「──とにかく! お互いのことをよく知るためにも早速デートするわよ! あたしはこの国については全然知らないからあなたに手取り、足取り、しっかり──案内してもらわないとね」

「エルダも! ──じゃなくてエルダといっしょにデートして!」


 左腕を抱きかかえるようにがっちりと掴まれる。再び柔らかいモノが押し付けられて腰が砕けそうになる。


「あ──」

「なっ──!?」

「抜け駆けは許しません! 私、プリムラと逢瀬を重ねて共に親交を深めましょう」


 もう片方は両の手で挟むように手が優しくもしっかりと握られる。ほのかにひんやりした感覚が何とも気持ちいい。


「何で言い出したあたしが出し抜かれる羽目になるのよ! 最初に言ったアタシと行くのが筋でしょ!」


 素早い動きで俺の背後に回っておんぶみたいな体勢で組み付かれる。背中越しに伝わる湯たんぽみたいな温かさとしなやかな感触に背中が跳ねそうになる。

 これらにより俺は両手と背中が女の子達に捕縛されたような状態に陥る。羨む状況だと思うが、何だか俺は最近似たような状況を思い出した。森で出会った俺を玩具にするように身体に引っ付いたり食べ物をねだったあの子達。

 モチフを──

 モフモフ具合は無くとも体温やら自分の物だと主張するかのような引っ張る力になんだか心が自然とほのぼのしてしまう。子供に懐かれるというのは気持ちの良いものだ。俺という存在が怖くないとか気持ち悪くないの証明になるようでほっとする。

 ただワイワイ姦しいのは納めないといけない。


「落ち着かんかわっぱども!! 王達がそんな姿を見たら落胆するだろう! 淑女たるもの殿方を玩具にするような無礼は恥ずかしいと思わないか!」


 威厳ある声が響き渡ると三人の動きがピタっと止まり、ゆっくりと少女達が俺から剥がれる。ちょっと寂しいけどこれは正しいことだ。

 まさか小竜さんに助けてもらうとは……。


「ごめんなさいね、全くあたしとしたことが……こんなんじゃ姉様に全然届かないわ!」

「テツオ様、申し訳ありませんでした。スピリア様も止めてくださりありがとうございます」

「ご、ごめんなさい……き、嫌わないでくださいぃ……」

「そこまで気にしなくていいですよ。痛くなかったし」


 子供が凹んだ様子はあまりみたくはない。正直悪い気はしてなかったけどそれを素直に口に出したら気持ち悪い大人だ。内に留めておこう。


「とはいえ我もデート自体は賛成だ。娯楽な交流でしか見えない部分もあるだろう」

「でもよぉ、この国には数日程度しかいないだろ別々の日程なんてできるか?」

「エルダはベツにアセるコトはナいがな。トオいイコクだとタイザイヒもバカにならないだろう?」


 俺が出会った人達で三国の人は全員な訳が無い。飛行船を動かすのだってそうだし護衛もまだいるだろう。使用人も何人もいるだろうし、飛行船に特産品を積んで交易もしているだろう。


「──! ならまとめてデートすればいいのよ! 明日テツオと私達3人が!」

「無闇に争うよりもそれが最善でしょうね」

「…………エルダは……うん、皆といっしょでもいいと思う」


 ルチアさんの案に二人も賛成し、護衛の三名も異論は無いという表情を浮かべている。


「ちなみにあなたはレディの誘いを断ったりはしないわよね?」

「……皆さんが願っているのなら、とても光栄です」


 予定は話が出た時点で決められたのだ。

 しかしデートか……本当にどうする? セクリやアンナと買い物に行くのとは訳が違う。相手の事を考えて気分を良くさせる……三人は国の偉い人だから接待みたいなものだ……。

 まだアメノミカミ戦の方が気が楽だった。自分がどうなろうとアンナが無事に過ごせれば良いと、小さな子供が泣かずに過ごせれば良いと、犠牲になっても他者の思い出に残る。覚悟が未来への道となった。

 でもデートとなれば話は変わる一方的に会話や行動を押し付ければ良い訳じゃない、互いのやり取りが大事。なはずだ。

 三者三葉のこの子達を楽しませることなんて俺にできるのか?


「ところでだけど……背中、いえ腰に何か変なの仕込んでない? 何か吸われるような感覚があったんだけど」

「ああ、それは──」


 彼女が背中に乗った時に服越しとはいえ密着状態になった。その際に破魔斧に魔力を吸われてしまったのだろう。そうだ、この際だから紹介するのも悪くはない。

 そう何気なしに腰のアレに手を伸ばそうとした瞬間、空気が変わった。

 緩かった空気が一瞬で張り詰めた。平穏と殺伐その狭間に立たされた感覚。彼達は護衛、大事なお姫様を守るのならほんの僅かな傷も許さぬ覚悟を感じられる。

 この切り替わりの速さは紛れも無くプロ──


「……少し離れて」


 穏やかな表情を維持しつつ、ゆっくりと一つ一つの動作を確かめるように破魔斧の封のボタンを外し。絶対に俺が先手を取れない立ち位置で取り出し、刃を俺側に向けて両手で寝かせるように持つ。


「これが破魔斧レクスです。多分報告とかで聞いてはいるんじゃないですか? 魔力を吸い取る力があるのでご注意を」


 テーブルの上に置き、一歩離れると彼女達は興味深々と言った様子で斧を見つめ、護衛の三人は斧よりも俺に顔を向けている表情が見えるのはトルバさんだけだが相当驚いているようでもあった。


「これって触っても大丈夫なの?」

「お嬢!? 好奇心が過ぎますよ!」

「ここを逃したら次がくるかわからないじゃない!」

「刃は危ないから注意してください。側面や持ち手でもどこでも効果は感じられるはずなので」


 最近綺麗に研いだりクリーニングしたばかりだからな、汚れとは無縁だろうけど、お姫様方にお披露目となると少し緊張する。

 三人は囲うように集まり、恐る恐るといった様子だが好奇心に満ちた表情で破魔斧に指先を当ててすぐに引っ込め、互いに目を会わせて確認し合っているようだった。


「力が抜けてく……こんなの初めてかも……!」

「こんな感じなんだぁ……!」

「手入れがしっかりなさっておられる綺麗な斧ですね……竜の横顔に、雪のように白い刃。お城でもお父様にも散々危険な代物だと言い付けられましたがとてもそうは見えません……誇りというのを感じます。それに魔力が吸われる感覚も幼い頃タコの吸盤に吸い付かれた時と比べれば羽毛でくすぐられるようなものですね」


 その言葉に俺は目頭が熱くなりそうだった。

 『惨劇の斧』という名前で二度と呼ばれないように努力が実った気がした。子供に怖がられずに触れてくれるのもそうだ、過去の汚名は消えようとしている。言われたい言葉も言われて気分が嬉しさで満ちていく。


「あなた達も試してみますか?」

「我は止めておく、この体は魔力体だからな相性としては最悪だろう」

「トウテイショウキとはイえないコウイだな。オレタチのダレかがヌすむとはカンガえないのか?」

「できるならどうぞ」

「だったら俺が試して──! っ!?」


 柄を握った瞬間に苦悶に満ちた表情を浮かべる。何度も色々な人に試してもらったから分かる。手で握って持ち運ぶことは不可能。重さで持てないは無い、皆が言うには持つこと自体が辛いらしい。

 『(そら)』と呼ばれる魔力の放出を0にした状態にすれば魔力吸収(ドレイン)は防げる。けれど破魔斧に直接触れた場合は効果がないらしい。


「……体の内側から力が抜けてく感じだ……!」


 テーブルから離れきることなく元の位置に戻る。

 苦悶の表情を浮かべずとも持つ方法はあるにはある。密閉された鎧のような厚い手袋を使うといったとにかく触れないことに全力を尽くすことで影響は最小限に抑えられる。多少の布では容赦なく貫通して奪ってくるらしいので警戒し過ぎが丁度いいらしい。

 そもそも、俺が使わない間でも自動的に魔力吸収は行われる。盗みに成功しても保管の問題が次の課題として襲ってくる。俺の近くなら効果は極小だが、離れると中にいるレクス次第。


「この吸収した魔力ってどうなるの? あなたの中に入ってくの?」

「破力って言う魔力に似た何かに変換されて俺の中に溜まってく感じですね。俺には魔力を生み出す能力が無いから変換した破力を貯めて術を使っています」

「なるほど……文章で読むよりもこうして見て聞いた方が分かりやすいですね。あの、では今はテツオさんは触っていませんけどこの時の破力はどうなっているのでしょうか?」

「中々鋭いところを突きますね。おそらくだけど破魔斧自体に溜め込まれているんだと思う。俺の手に渡る前は膨大な破力を溜め込んでいたから、今も同じように溜めてるはずです」

「あ、あのあの! この破魔斧を使ってどんな風にアメノミカミと戦ったんですか! どんな術を使ったのか見せてください!」

「そうだな……」

「危険が無いものなら構わない。我とて興味はある」


 視線をそっと護衛に向けるとスピリアさんの意見に同調して頷いてくれた。まあ、危ないと判断したら止めてくれるだろう。


「じゃあ簡易的だけど色々術を見せようか。本当に危ない時は言うから迂闊に触ったりしたらダメだよ?」

「はーい」「はい!」「は、はい──!」


 この部屋での完全再現は土台無理な話。でも、俺はキャミルさんの修行の成果で術を小さく使う事には慣れている。

 魔力吸収(ドレイン)の霧をわたあめ程度のサイズで浮かべたり、要らない紙に消滅の力を見せたり、ボトルを使って全身黒鎧の『黒鎧無双(こくがいむそう)』を見せたり。護衛の人にも協力してもらって術の的になってもらったり、あの戦いでやった技は大体見せた。流石に『ラストリゾート』はとっておきすぎるし出力を抑えた簡易運用法も構築できていないので出さなかったが。

 興味深そうに目をキラキラさせて聞いてくれる態度に俺も気が良くなりすぎて、答えられることには大体答えたと思う。

 そうして全てを話し終えた頃には日は傾き始めていた。

本作を読んでいただきありがとうございます!

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