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最低価格の俺が錬金で成金!~The Lowest price man Promote to Gold with Alchemy~  作者: 巣瀬間
第四章 夢指す羅針盤を目指して
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第23話 嫉妬なら簡単だった

 写真撮影を最後に長かった取材も完了し、後は完成して届くのを待つだけとなった。

 理想通りの新聞が完成して他国に配布され、ロドニーさんの行方が知ることができればアンナの役に立てたと恩を返したと胸を張ってもいいだろう。

 そんな期待も確かにある……けど、この関係を終えるカウントダウンを早めているんじゃないかと、後ろ暗い寂しさも否定できない。


「ねえ、これってどう保存すればいいか知ってる?」

「写真サイズの額縁に入れたらいいんじゃないか? ほら、あんな風に──」


 壁には社員の集合写真が並べられている。人数も少なく白黒の写真もあり中に若かれしカーメルさんも確認できる。こうして見ていくと、この世界の人って若いよなぁ……一番古そうな写真から五年十年以上経ってるはずなのに変化が薄い。髪型や髭で年を重ねているように見えるけど肌は全然若々しい。魔力で体を覆ってるから紫外線やら粉塵も防げてたりするからなのか?


「ふんふんなるほど……難しく考える必要はなくて小さい絵を飾ると思えばよかったんだ」


 アンナの手には二枚の写真、若かれし父親の写真と俺達三人の写真。

 全部が全部都合の良い未来にはならないと思う。でも、過去と現在、将来的にはこの二つが合わさったような写真を撮れるようにがんばらないとな。

 

「それではこれで失礼します。本日はありがとうございました」

「ああ、こっちこそいい飯の種ができてよかった。国民向けの新聞も来週辺りに発行されるから買い逃すんじゃあないぞ」

「もちろん! ──ってなんだか自意識過剰みたいですね」


 そんな事言いながらも最低でも読む用と保存用の計二部は購入することは確定している。大事に保管して俺の証を思い返せるためだ。普通に過ごしてたら新聞に載るなんてありえないことだ。それも内容が正の方向なら尚更。


「英雄様はそれぐらい自信に溢れてた方が花があるもんだ。だが、気を付けろ──この新聞が広まった時何かしらの変化が訪れるはずだ。良くも悪くもな……その時の咲き方を間違えなきゃいい」

「調子に乗るなということですよね?」

「……ただの年寄りのお節介だ。聞き流せ……」


 重々承知している。過ぎた力過ぎた評判、自分の認識する以上の何かで満ち溢れている状態は酒に酔った時よりも恐ろしいと言う。

 アンナとレクスの出会う順番が逆だったなら俺は今の俺じゃなかった。もっと力に溺れていたはずだ。


「テツ、はやくいくよ?」

「ああ、失礼します」


 願掛けをするように一礼して場を後にする。

 ここから先は神のみぞ知るということだ。



「さて、これから原稿仕上げて印刷か……」

「今日中を希望している。最低でもテツオの姿と偽物の注意喚起について書かれていればすぐに他国に届ける」


 事の発端は「鉄雄の偽物が詐欺と脅迫を働いた」というもの。王は危険性をすぐに理解した。

 レインとクラウド王では情報を受け取った状況が違う。

 レインは複数の被害が別人によって行われている事を知っている。しかしクラウド王は一人の偽物が複数の犯行に及んだと判断した。すぐに誤解は解けたが、尚の事状況が切羽詰まってると把握。

 本物の神野鉄雄を知らない人達にとっては偽物達の犯行だと気付かない。被害者同士の口伝により連鎖的に罪が重なっていき、短期間で大犯罪人の英雄と認識してしまう。

 簡単に神野鉄雄は極悪犯罪人と簡単に堕ちてしまう。

 破魔斧を所持している国。過去の文献により国落としの武力であることは証明されている。危険視されるのは当然。だが、弱体化に加えて斧の情報収集、他国にとっても将来の益があることで静観されていた。

 犯罪者となれば話は変わる。首輪が機能しなくなったことの証明、自国に被害が出る前に排除することが挙がる。

 無論、ライトニアも非難の的になるのは想像に容易い。


「そいつは聞けないな。全部完璧に仕上げるまでは渡す気ねえよ」


 王からの勅命であっても新聞屋としての誇りが半端な物を作ることを許さない。

 彼等は半端な情報が爆薬となることを知っているから。


「いつ最悪に陥ってもおかしくない。なら急いでく──」

「社長、下書きが完成したので確認してください」

「おう待ってろ! ──お前さんがあいつにどんな腹抱いてるか知らんが、あんたの無様な姿が目立たなくなったのもあいつの活躍だってこと忘れんなよ。嫉妬じゃないのは分かるが、隊長が目を曇らせていい訳じゃないだろう? 話のネタがあるんだ、力を合わせりゃ今日中に終わるから心配すんな」


 ひらひらと手を振りながら仕事場に戻っていくカーメル。

 ライト新聞社が発行する新聞は毎週一紙か二紙、比較的平和なライトニアでは毎日発行するだけの事件は存在しない。社員の殆どはネタ収集に奔放している。

 しかし、誰もが喰い付くような特ダネがあるなら話は変わる。パズルを埋めるためにピースを集めるのではない、既にピースが溢れんばかりに揃っている。

 すると記事作成に人力(マンパワー)が集中され普段の倍以上の早さで完成にこぎつける。


「……嫉妬の方がまだいい」


 友を侮辱されたことへの憤り、宿敵を相手に無様な活躍しかできなかった情けなさ、十年かけても届かなかった黒幕の正体を三ケ月程度の男が暴いてしまう。父の汚辱を雪いでしまいかねないことへの焦り。

 レインは自分の存在意義が蝕まれているような不安に襲われていた。

本作を読んでいただきありがとうございます!

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