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最低価格の俺が錬金で成金!~The Lowest price man Promote to Gold with Alchemy~  作者: 巣瀬間
第四章 夢指す羅針盤を目指して
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第17話 先行き不明の戦利品

「いやいやいや──とにかく! 全部、詳しく、話して!」


 アメノミカミの結晶!? 今まで出てこなかった言葉だし、名前からして本当に嫌な予感がすごくする!


「コレ自体の詳しい情報は殆ど無いと言っていいわ。でも、できてしまった原因は単純明快『ゼロ・ゾーン』でアメノミカミの魔力を大量に奪い盗ってぎっちりと押し固めたことでこんな結晶が完成したと判断できる」


 対アメノミカミにみんなで作り上げた『ゼロ・ゾーン』。

 アメノミカミは魔力を利用してコアの周りを分厚すぎる水の鎧を作って守ってた。だから魔力を全部奪えば水の鎧も剥ぎ取れると思って作った。

 結果は大成功。


「ぜんぜん気付かなかった……」

「彼の身が危なかったから気付けないのも無理はないわよ。そもそも見つけたのは私じゃなくてヴァンロワだもの。でも、別の誰かの手に渡らなくてよかったと思うわ」

「何かすごいことでもあったの?」

「詳しい情報は無いって言ったけど、正確には怖くて深く調べられなかったのよ。使い方を間違えたら制御ができなくなって、アメノミカミが出現するかもしれない。そんな想像が頭によぎってね」

「そんなになの……!?」

「コレにはアメノミカミの情報が全て入っていると言っても過言じゃない。水属性への適正が薄い私ですらコレに魔力を通すだけで自在に水魔術が扱えた。風呂場で手を抜いて試してあの程度……本気で使ったらどうなることか……それに、アメノミカミを生み出す重要な素材にもなりかねないわ。どうしたって嫌な想像が先走る……」

「つまりは魔術刻印みたいな働きを持ってるってことなんだ……水属性の魔力だけを集めたんじゃなくてアメノミカミに刻まれてる術式や技能もいっしょに奪う、というより複製したのかな?」


 そんなことが可能? なんて疑問はどうしようもない。あの日あの時全てが練習無しの本番。完成品を試す余裕なんてなかった。何が起きてもおかしくない。

 だから、できてしまったんだ。


「私もそう思う……」

「でもどうしてこれをわたしに? 言わなきゃ誰も知らなかったと思うしアリスの物にしてもよかったんじゃ?」


 大事なのはそこだと思う。

 アメノミカミ、テツが死んじゃいそうになったぐらい本当にすごい相手。でも……使い方が変わればどれだけ役に立つか、明るい可能性に溢れてるとも思う。

 畑の水やりだったり水の運搬、それに魔獣が来た時の防衛。いくらでもすごい使い方は出てきそう。

 立派な貴族としてがんばってるアリスなら正しい使い方もできると思うのに。


「……いざという時にコレを壊せる人があなたの傍にいるでしょ? 私が持っててもその選択肢は作れない可能性が高い。錬金公爵の娘として国を悪戯に危機へ誘う訳いかない。それに悪用しようと近づく者がいてもおかしくない。だから活かすにせよ壊すにせよあなたが相応しいと思ったからよ」

「もしもこれを使ってわたしが悪さするとは思わないの?」

「悪さする人はそんなこと言わないでしょうに。それにあなたは倒れた彼の姿を忘れてない。できるわけがないのよ。もう何も知らない間柄じゃない、この程度考えるまでもないから」


 うん、確かにそうだよ。今でも冷たくなってくテツを忘れることができない。今でも手に残るあの感触。誰かにあの冷たさを押し付けることはできない。

 あの戦いは本当に大変だった。失いかけたこともあったけど、あの戦いがなかったらこうしてアリスとお茶とお菓子をいっしょにする時はなかったと思う。 


「さてと……押し付ける形になって悪いわね。どの選択をするにしても力が必要ならいつでも貸すから」

「えっ? もう帰るの?」

「用は済んだから。そもそも謹慎中、これ以上は馴れ合いにしかならないから失礼するわ」

「またいつでも来ていいから」

「気が向いたら」

「お菓子も沢山持ってきていいから!」

「──気が向いたら!」


 ちょっと照れた感じに怒った声。部屋を後にするのを見送ってアリスのマドレーヌを口に運ぶ。うん、おいしい。テツやセクリにも食べさせたいな、と思うけど。

 わたしの手と口がそれをよしとしないようで困った。帰って来るまで持ちそうにないや。

本作を読んでいただきありがとうございます!

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