第60話 ラストミッションミーティング! 01
(まず初めにどんな道具を作ったんだ?)
(空間の魔力を剥ぎ取る道具。爆発するみたいに吸収する空間が広がって、その中に存在する魔力を根こそぎ吸収する道具。量や密度も全部関係無くね。それでコアを露出させるの)
(なるほど……俺ができなかったことができる道具ってわけだな。それで名前は?)
(名前? こんな時に?)
(こんな時だからこそ、その中で生まれた存在は大事だ。名前を付けた方が存在が確かになる。頼りにするなら尚更な)
(う~ん……そっちに付くまでに考えとく。で、そっちはどんな状況なの?)
(……レインさんとアリスィートって子が時間を稼いでくれてる。門までの距離は100m切りそうだ。そっちからも門が網張ってるのは見えるか?)
(うん、ナーシャがやってくれたみたい)
(そいつはすごいな……!)
「感心してないで、壁の上にいるのを倒す手段があるか聞いてみて。外側には攻撃を届かせる手段がないから」
(壁の上にいる分身が見えるか? そいつを倒す手段はそっちにあるか?)
(倒そうと思えばオールプランターもあるからだいじょうぶ! 起爆のタイミングで直撃させればもんだいない!)
(頼もしい限りで何よりだ)
「ならよかったわ。じゃあ次は如何にして魔力を奪う道具を当てるかね」
(その切り札の詳しい技能や起動方法はどういうのなんだ?)
(技能に関してはルティでも認識できてないの。でも、魔力を奪う力は間違いなくある。使い方は紐を引いて5秒後に爆発するの。範囲は多分……最低でも半径10mはあると思う。あと、わかってると思うけど1個しかないから)
(……あいつの大きさから考えて余裕はそんなにないな……ほぼ触れる位置で起爆の必要がある。それにチャンスはワンショットのみか)
「来ると分かっていたら絶対に当たらないわ。防御に専念されたらまず何も届かない」
(作戦としては壁の上から凄い勢いで投げればいいと思うの)
(順番としては分身体を倒す、門の上に移動、切り札を投げる。で最後はどうするんだ? ずっと魔力を奪う空間が作られる訳じゃないはずだ。その隙を突いて何をするかが重要)
(それはもうテツがコアに向かってレクスを叩き込むの! 魔力が無くなる空間が何秒続くかわからないけどテツなら動けるでしょ)
(……やるだけ──いや、曖昧な言葉はダメだな。正直言って今はこうして通信しているだけで精一杯なんだ。戦力として期待はしないでくれ……)
(うん……わかった。これいじょうのムリはしなくていいから……)
(悪いな──少し戻すが当てる算段はそっちにあるか? 相当上手く不意を突けなきゃ当てることは不可能だとキャミルさんも考えてる)
(こっちじゃアメノミカミをどうしようもないから、テツ達でどうにかできない?)
(なるほど納得……)
切り札はアンナ側。
アメノミカミは鉄雄側。
立ち位置からして当てる状況を作るのは鉄雄達の役目。しかし、動ける者が殆どいない。現時点においても攻撃の隙を狙うレイン。それに挟み込むようにして攻撃をひたすら避けるヴァンロワとアリスィート。
アメノミカミの動きにまだまだ余裕はあった。
(……そういえば何であそこに分身が残っているんだ? あの位置から援護攻撃を仕掛ける訳でも無くただ立っているだけ。観察役にしては豪勢というか過剰じゃないか……?)
(倒そうと思えばいつでも倒せるから気にしなくてもいいんじゃない?)
(奴は無意味なことは絶対にしない、狙いがあるはずだ……水の塊……いや、まさか……もしかしてだが……コアがあいつに入ったらどうなるんだ?)
「いきなり何を……」
(本体はあくまでコア。水は服。射出して分身という服を着直したらそれが本体になるんじゃないか? 門も飛び越えられるし、あの場所で戦われたら誰も勝てない)
「それは考えたくなかった……」
(なら早めに倒した方がいいってこと!?)
(冷静に考よう。今一番されたくないのは何だ? アメノミカミにとっても俺達にとっても? 王都に侵入されて、何かの目的を達成されることが俺達にとって最悪。奴にとってはアメノミカミが壊されること……いや違う。それ以上に正体がバレることを何よりも嫌うはずだ。例えここで負けてももう一度二度ってチャンスが作れる。正体がバレてないんだから捕まることはない。つまり正体に繋がる何かをここに残す事態になることを嫌う)
「それはコアね。コアを鹵獲してしまえば手がかりなんて探し放題。でもそれはあくまで最善。国の平和が保証できないなら完全破壊も視野に入るわ」
マナ・モンスターのコアは錬金術によって生み出された。アメノミカミクラスとなれば特別力を入れて作成された。つまり、製作者の色というのが浮かび上がる。癖であり、実力であり、感情であり、生き様。加えて、本人の魔力が吸収程度では消えぬ痕跡となって残る。
(コアを確保されることが一番の敗北。それにもし……もしだが、あの分身が奴にとっての最後の賭けだとしたらどうする? 門を越えて目的を達成するたった一つの手段となってしまったら?)
(あっ!? たしかに! 門を越えてもっていうより普通に網を破って入って来たら、状況最悪な気がする!)
(そんなに最悪なのか?)
(大通りがあのダンジョンの1番奥みたいにツルや根がビッシリなの!)
(そいつは頼まれても入れないだろうな……)
「いくら雨の恩恵があっても、環境が最悪なら入れない。だからツルが届いてない壁上が唯一の道ってこと!?」
疑問が確信と変わる。
分身体より王都の状況を確認した時点で次の一手を変えていたとしたら? 負けない戦い方に移行していたとしたら?
切り札を使う為の最初の一手は、相手にとって敗北が決定する決り手。
選ぶ手段は想像に容易かった。
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