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最低価格の俺が錬金で成金!~The Lowest price man Promote to Gold with Alchemy~  作者: 巣瀬間
第三章 雨の魔神と太陽の錬金術士
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第58話 完成する切り札

 6月9日 水の日 13時45分 錬金学校マテリア


「完成した──!」


 錬金釜の中から取り出したるは一つの球体。透明な球の中心に黒き結晶が支えも無く浮かんでいる。そして、尻尾のように半透明の太い糸が繋がっていた。


「発現している技能は──っ!? 『魔力根絶』!? 他は……全然見えないじゃあないか!」


 モノクル型の『スキルチェッカー』で発現している技能を確認するもユールティアの目には煙りがかかったように認識ができない。たった一つだけ理解することができた。


「それだけわかればじゅうぶん! 師匠っ! 急いで向かいましょう!」

「了解よ! 悪いけどこの場はあなた達に任せる!」


 残されたオールプランターと完成品を袋にまとめて、サリアンはアンナを抱えて窓から外に出て屋上へ跳ぶ。

 残された二人が「えっ」「あっ」と声を掛ける間もなく脱出し呆気に取られ。

 その後支えを失った片方の扉より職員と守衛が雪崩れ込むように突入し、二人に対して強烈な視線を送る。


「やれやれだね……」

「まったく同感だね」


 この状況に二人は鼻で笑い、抵抗の意思を微塵にみせず大人しくお縄に付くことになった。

 その尊い犠牲を持って脱出した二人は屋上より王都の状況を見渡すと、目を見開く光景が広がっていた。


「何この光景!? 木に侵食されてる? それに分身体が蔓延っているんじゃ……」

「まるであのダンジョンみたい……あ、師匠! ナーシャがあそこに!」


 本来なら最短で西門に向かう心情であったが、状況が状況。術の出始めとされる場所にナーシャが膝を付いているのだから。足が向かう先は決まっていた。


「ナーシャだいじょうぶ!?」

「ええ、なんとか……それよりもどうやら無事完成したようですわね……私は魔力を殆ど使い切ったので……お役に立つのは難しいですわ」

「まさかこれをあんた一人で!?」

「いえ、正確には伽羅とアリスィートさんが補助してくれたおかげですわ。それにソルも力を貸してくれたので何とか成功できましたわ」


 ナーシャは満身創痍。伽羅は花が蕾へと戻り小雨と光を浴びながら目を閉じて休息へと至る。


「このソルって……ミュージアムに収められていたはずじゃあ!? まさかあんた……!」


 輝きが示す罪の証明。騎士だから分かるソル回りの事情。頭上で燦々と光をもたらすそれはここまで迅速に簡単に貸し出しされることはありえない。厳格な書類に利用目的や日時を細々と署名し、会議し承認が決議されてミュージアムの職員が一緒にいることで初めて利用できる。

 紛い物といえど最低限の保証された逸品。技術の漏洩は防がなければならない。 


「ここまででじゅうぶんすぎるわ!?」

「とにかく……どんなものが出来上がったのでしょうか? 作戦はありますの?」

「この魔力吸収爆弾を気付かれずに範囲内で起爆させるのよ。たぶん正面からどうどうと投げても絶対に当たらないと思うから……壁の上から投げれば!」

「難しいですわ……あちらをご覧ください。壁上に一体大型の分身体が残っていますわ。地上の残りは騎士様達が処理していると思うのでおそらく最後の一体」


 王都の城郭、その壁上を我が物顔で這いずる水人形。西北西に位置し、物理的な遠距離攻撃は意味を成さず、狭い足場で騎士団も迂闊に攻め入れない。


「あの位置に陣取られると上からの援護攻撃は一切できないわ……それに、アレを壊せば奴は絶対に注意が上を向く。位置的に視界からは隠れられるかもしれないけど、破壊できる脅威に気付けば、注意は逸らす事は無い……」

「でも、ほうっておいて投げるのはムリな気がする……」

「ちょっと待ってなさい。通信で状況を確認にするから………………ダメね、向こうの戦況が流れて来ない。植物だらけとかホーク隊長の離脱。聞くだけの通信具じゃ限界があるわ……」

「何と言いますか……混乱の一部に私が関与しているようで申し訳ありませんわ」


 情報は混迷を極めていた。発信する拠点は王都内の騎士団派出所。壁上より常にアメノミカミの動向を観測していた騎士は神域魔術から逃げる為に下へ、西側から上がることは壁上の分身体のおかげで不可能。現在は南門近くの壁上へ渡る橋が掛かっている建物に向かっている。

 誰もが欲しい外側の情報はまったく手に入っていない。 


「通信……そうだ! 向こうにテツがいる! 全部教えてくれる! え~と……テレパシー!」

「無事だといいのですけど……」

「テツならだいじょうぶ! わたしが約束を守ろうとしているのにテツが守ってないはありえないから」 


 サイドテールを結ぶ黒いリボンに触れる。「だいじょうぶ」という言葉を口にしていながらも胸中は不安が大きかった。


(だいじょうぶ……! あの感覚は気のせい……! ちゃんと生きてる……! 繋がりは消えてない……! だからはやく声を聞かせて……!)


 過去に体験した人との繋がりが千切れる感覚。それに似た悪寒と喪失感。違うと願う。使い魔契約はどちらかが亡くなると解除される。主には契約の証は無い。使い魔は刻印が消えれば解除の証明。

 解除されてしまうと、念話は通じなくなる。


本作を読んでいただきありがとうございます!

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