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クエストを求め、ギルドへ

前回のあらすじ(簡略版)

精神的苦痛に耐えながら無心で稼ぎ続けたユットはようやく目標金額を達成

だが、何故か貯まっているはずのお金が減っていることに気づき

管理していたレーネを問い詰めると、レーネの夜食に消えていたことを自白する

怒ったユットはレーネに夜食の禁止と食事制限を義務付ける

こうして消えたお金分を再び稼ぐことになったのだが……

ステータス画面『ユーネスト』

総合魔術レベル10

チャームレベル10

その他、レベル1


 そんなわけで僕は今レーネと共にギルドに向かっている。

 ん? 例のグレーゾーンの商売は止めたのかって? 勿論、きっぱり辞めた。レーネにも『効率的に魔術レベルと金銭が稼げるのになぜ辞めるのか、辞めないでほしい、ここが頑張りどころだから、ここを乗り越えればもっと稼げるから、もっとトップになれるから』みたいな悪徳マネージャーが言いそうな甘い言葉には騙されず引退を決めた。

 まぁ、理由は精神的にしんどいのが1番かな。正直イケメンは得だと思ったし、実際得だと思うけど、こういう商売をしている人は楽にお金稼いでいるんだろうなって最初の頃は思っていたけど、これを続けるって普通に出来ることじゃないよ。ほんとアイドルとか、ホストとかって顔だけじゃないんだ、すごく大変な仕事なんだなって、痛感したよ。そりゃ早めに引退とかしたくなるよね。

 それで、ギルドにある仕事の依頼をこなしお金を稼ぐと言う方法にシフトしたわけだけど、1番心配なのは僕に出来る仕事があるのかどうかと言うことだけど……、う~ん、これは随分と随分な場所に来ちゃったな。

 薄暗い路地裏を抜けると少し開けた広場のような場所があって、そこに薄いピンクと言うか紫と言うかそんな光が漏れている小さな建物がある。なんて言えば伝わるかなぁ、夜のお店? バーテンダーがいてお姉さんが居そうな。そんな建物。

 近くにギルドらしい建物が無い以上、『ギルバー』と看板に書かれているこの建物がギルドと言うことだろうけど、この怪しげな雰囲気、とても僕のような子供が来ていい場所じゃない気がする。と言うか、凄く帰りたい。

「何をしているのですか? そんなところに立ち止まってないで早く中に入りましょう」

「えっ、ほんとに行くの? ここじゃない別のギルドでも――」

 そんな僕の制止も聞かず扉を開けて中に入ろうとしたレーネは、次の瞬間、突風と共に外へはじき出され、台風の時のビニール袋のように僕の横を通過し、そのまま倒れ込んでしまう。

「レ、レーネ!? ちょ、大丈夫!?」

「くっ、不覚、空腹でさえなければ」

「いや、さっき朝ごはん食べてたよね、トースト4枚も食べてたよね!」

「全く、まぁた、タダ飯たかりくるとはねぇ、ちょぉっと優しくご飯あげたからって調子に乗ってんじゃないわよぉ、野良猫か何かなの? アンタは?」

 そんなオネエ口調で建物の中から現れたのは、身長180センチは裕に超える屈強な男? 一応、言っておくけど綺麗だから女性かどうか見分けがつかないと言うわけではなく何と言うか、配慮という奴だからね。どう見ても男、ゴリゴリの男なんだけど、服装や化粧の感じが女性なわけで、まぁ、所謂そう言う人だ。

「え、えっと、そのレーネが何かご迷惑をおかけしたようで……」

 ノビてしまったレーネを抱えるようにしながら僕はその大男? に話しかけると僕の顔をマジマジと見つめてくる。

「ん? んんん? あら~? ロリかと思ってスルーしようかと思ったけど、やだぁ、もしかして男の子? 男の子よね? 名前は?」

「え、えっと、そうです。男でユーネストって、言います」

「きゃぁぁ! なんて可愛らしい坊やなのかしら! どうしたの? お腹空いてない?」

「い、いえ、その、ギルドで仕事の依頼を受けたいなと思ってきたんですけど」

「そうだったのぉ! 偉いわね、こんな小さいのに仕事なんてぇ、ささっ、入って入って、特別にサービスしちゃうわ」

「え、その、ちょっ――」

 有無を言わさずとはこのことかと言わんばかりに抱えていたレーネを当たり前のように退けて、僕は腕を掴まれそのまま建物の中へ連れ込まれる。

 中は外観の通りと言うか、海外ドラマとかで出て来そうなBARって感じの内装で暗い店内を薄いピンクのライトが照らしている。僕はされるがままカウンター席に座らされると、温かなミルクとクッキーを出してくれて、促されるまま食べるとすごく落ち着く味と言うかホッとする感じで、単純かもしれないけど、この人、良い人なんだなって思った。

「どう? そのクッキー、ワタシの手づくりなのよぉ、美味しいかしらぁ?」

「美味しいですよ、何と言うか、ホッとするというか」

「『ホッ』トミルクだけにですね」

 何事もなかったかのようにしれっと、いつの間にか僕の隣に座っていたレーネがそんな下らないことを真顔で言う。

「くだらない事言ってんじゃないわよ、また吹き飛ばすわよ」

「(あっ、ツッコんでくれた、やっぱ、良い人でまともなんだな。もう僕の周りにはまともな人が現れないんじゃないかと思ったけどよかった)」

「まぁまぁ、そう言わず、マスター私は焼きそば大盛りで」

「何当たり前に注文してんのよ、どうせお金ないんでしょ? ぶっ飛ばすわよ」

「(そうそう、言ってやってください)」

「ハグ、してもいいですよ」

 レーネ自身をハグする代わりにご飯を貰おうとするのかと思ってレーネの方を見ると、レーネの親指は僕を指し示していた。

「はい、お待ち」

 一瞬のうちにレーネの前には出来立ての大盛り焼きそばが現れる。それと引き換えに僕は息を荒げた大男に抱きしめられる。肋骨が折れるんじゃないかってくらいハードに。

 レーネが食べ終わる頃に解放された僕は疲れ切ったようにテーブルに倒れ込みながら、やっぱりまともな人なんていないんだなと悟った。

「レーネ……僕を平気で売るのは止めて……」

 息も絶え絶えながら、そう抗議してみたけど、レーネは聞こえていないのか目も合わせてくれない。

 冷静になって考えてみてほしい、お腹が空いたからという理由で年端も行かない子供を差し出し、互いに欲望を満たす。どう考えても異常じゃないかな。

「う~ん、スッキリしたぁ、さいっこぉうの抱き心地だったわ、そのまま持ち帰っちゃいたいぐらい」

 舌なめずりされた瞬間、初めて悪寒が走ると言う経験をした。

「さて、お腹も満たしたし、本題に入りたいのだが、この子でも達成できそうなクエストはないか? 攻撃魔術もまだ覚えていないから、町の中でこなせる奴で頼む」

「本来なら、アンタみたいな顔だけいい女の頼みなんて聞きたくないんだけど、なぁんか訳アリっぽいし、まぁ、いいけど、その内容だと稼げる依頼はほとんどないわよ」

 そう言って大男は店の掲示板のようなところへ行ってしまう。

「レーネって、あの人と知り合いなの?」

「ええ、ちょっと野宿時代に空腹で倒れているところを何度か助けてもらいました」

「(こいつ、いっつもお腹空かしてるな)」

「奴はこのギルド、『ギルバー』のギルドマスターで……名前は……なんでしたっけ?」

「『マッカオ』をよ、全く助けてあげた恩人の名前も忘れるなんてね、はいこれ、それでなんであんたみたいな、ろくでなしがこんな可愛い坊やの保護者みたいなことやってんのよ」

「可愛い坊や? ああ、ユットのことか」

 可愛いって思われるのも抵抗あるけど、そこでレーネに疑問符を付けられるとイラッとするのは何故だろう。

「まぁ、アレだ。カクカクシカジカあって、色々あったと言うわけだ」

「(いや、それじゃあさすがに伝わらないよ)」

「なるほどね、世界異変の調査団に加わりたいと、小さいのに立派ねぇ」

「(通じるんだ!? と言うかなんか都合のいい話なってるような)」

「(異世界から女神の命令で異変を正しに来た何て言えるわけがないですから、この世界にすでに存在する調査団に入りたいと言うことで話を上手く合わせておいてください)」

「(そんな調査団があるんだ、って言うか、当たり前のように脳に直接話しかけてこないで)」

「でも、それじゃあ、外にいるモンスターたちとも戦えるようにならないとねぇ」

「ええ、なので、これを受注します」

「ちょ、何勝手に決めてるのさ!」

「心配ありません、ただのお使いクエストですよ。依頼者の代わりに市場などで買い物をしてそれを運ぶだけの簡単なお仕事です」

「まぁ、そうね、少し大変かもしれないけど、これくらいなら大丈夫かしらねぇ」

「(正直、この2人への信頼度は0に等しいけど、このステータスじゃ仕事も選べないだろうし何より前の仕事に比べれば何をやってもマシだろうし)……わかったよ、それでいいよ」

「わかったわ、それじゃあ気をつけるのよ、無茶しちゃ駄目なんだから」

 そう言われ、投げキッスを別れ際に頂き、ギルドを後にした。

 それから30分後、マスターが何故心配してくれたのかがすぐわかることになる。


今回もここまで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字ありましたらご報告いただければ助かります。

高評価、ブクマなど頂きありがとうございます励みになっています。

ブクマ、感想、評価などお待ちしていますのでよろしければお願いいたします。

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