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とある大規模魔術の断切方法(ファイアウォール)

前回のあらすじ(簡略版)


容赦なく魔弾を撃ったレーネだったがほとんどダメージの無い状態で起き上がるリザ

久しぶりの再会でテンションが上がるリザは自分の目的を話し協力を求めたが

レーネが自分の計画(世界の再構築)の邪魔をしようとしてることを知り激怒する

姉妹喧嘩のような言い合いが繰り広げられる中、何故か最後の布石が打たれてしまい

大規模魔術術式の準備が整ったのを見てリザは勝利宣言をするのだった・・・



ステータス画面『ユーネスト』

総合魔術レベル22

チャームレベル20

ファレムレベル5

筋力レベル5

俊敏性レベル5

その他1


ステータス画面『レーネ』

レベル???


ステータス画面『エリー?』←パーティー仮加入

レベル???


「よくやったわスウィ」

「は、はいぃ、なんとか気づかれずに出来ました」

 火柱のほうからひょっこりと現れたスウィさんは緊張感から解放されたような声を出しながらリザさんに近寄っていく。

「あんたにしては上出来よ。ふふっ、レーネ、ウチが何の策も無くただあんたと話してたとでも思った? ウチは囮、ウチが時間を稼いでる間にスウィを霊化させて密かに魔術術式を完成させたってわけ、そしてウチの【エルダート】によって聖なる炎が灯された。この炎が六芒星を描いた時、ウチの作り出した大規模魔術術式【スコルチュード】が発動してこの辺り一帯は焦土と化すわ。そうね、時間にして1時間ほどかしら? あんたも知ってると思うけど、この【エルダート】の炎は消せないんだから馬鹿なことは考えずにさっさと範囲外に逃げなさいよね」 

「逃がすと――」

 距離を取り逃げ出そうとするリザさんを取り押さえようとレーネが駆け出した瞬間、リザさんがスウィさんの腕を掴むと一瞬にして消えてしまう。

「ふふっ、見えない相手をどうやって捕まえるつもりかしら?」

 勝利を確信してるせいか、煽って来るような口調のリザさんの声だけ洞窟内に響く。

「それで勝った気ですか、ユット、お願いします2人の場所を」

「うん、えっと――いた! 今、祭壇の裏に隠れたよ!」

 祭壇の裏へと逃げる2人の姿が辛うじて見えた。

 レーネは僕の声にすぐさま反応して祭壇裏へと駆けて回り込み、見えないはずの2人相手に魔弾を撃ちまくる。

「どうですか? 私としては手応えが無いのですが」

 遅れてやってきた僕は魔弾が当たっているのか確認するために祭壇の上から覗くとそこにはレーネ以外、誰もいなかった。

「いない……、たしかにここへ逃げ込んだのに」

「いくら霊化と言っても本当に幽霊になるわけじゃないですから壁を通り抜けることは不可能なはず、となると全くもって活躍してないユットが目立ちたいがために見えていない物を見えていると言ったということですね」

「違うよ! いや実際目立ってなかったけど、そうじゃなくて! そんなことで嘘つかないよ」

 僕の目には確かに見えていたんだけど、見えていないレーネは『ふ~ん、そうですか』って感じで決してヒロインが主人公を見るような目じゃない疑いの目でこっちを見てくる。このままだとあの隙あらば嘘をついてくるレーネにオオカミ少年扱いされる、それだけは僕の小さなプライドが許さない。

 2メートル無いぐらいの祭壇から恐る恐る飛び降りて何か僕の無実を証明するものがないか探そうと地面に目を落とすと直径1メートルぐらいの消えかけの魔術陣を見つける。

「あっ、レーネ、これ見てよ! 地面に何か魔術陣みたいなものがあるよ」

「どれですか、ああ、これは転移魔術の魔術陣のようですね」

「それじゃあ、これを使ってどこかへ転移したってこと?」

「ええ、おそらくですが今頃は事前に設置してあった【スコルチャード】の範囲外の場所に転移してしまっているでしょうね」

 よしっ、これで僕の無実が証明された……わけだけど。

「それって、逃げられたってことだよね? どうするの? この魔術陣使って追いかけるとか?」

「いえ、この魔術陣は使い切りですし、復元して使ったところで行き先となっているついの魔術陣はすでに消されているでしょうし、追跡は不可能かと」

「ど、どうするのさ! 【エルダート】は発動しちゃったし、リザさんたちを捕えられないってなるといよいよヤバイいんじゃ」

「そうですね、まさか、転移魔術を使うとは思いませんでした。愚姉は魔術全般才覚があったのですが、あの性格上、攻撃魔術を優先的に会得していましたので転移魔術が使えると思わず、もしかすると愚姉ではなく相方のスウィと呼ばれたゴーストの術かもしれませんね」

「冷静に分析してる場合じゃないよ、何とかしないと!」

「そうですね、こんなところにいる場合じゃありませんね、――1時間でしたね。全力で走れば範囲外に逃げられそうですね」

「いやいや、僕らだけ逃げてどうするのさ! この辺の町とか人とか燃えちゃうんでしょ!」

「冗談ですよ、冗談。ははっ、相変わらずいいリアクションしますね。何かいい事でもあったのですか?」

「何にもないよ! なんなら死んでから今日まで何一ついいことなんてないよ」

「それでは今の気持ちを一言でどうぞ」

「えっ――――不幸だぁぁぁ! ――じゃないよ! 何言わせるのさ!」

「やれやれ、『レーネのような美少女と異世界転生してドタバタと日常を過ごすこと自体がすでに幸せだということをこの時のユットはまだ気づいていなかった……』」

「変なナレーションつけないでよ、あとその上手いこと言ってやったみたいなドヤ顔止めてよね、全然上手くないからそんなオチ10年前に使い潰されてるから、だいたい――」

「ユット、全然出番がなかったから張り切るのはわかりますけど、ツッコミが長いですよ」

「ツッコミすら最後まで言わせてくれないの! 僕一応主人公だよね、主人公に対する扱いじゃないよね、これ!」

「ユット、大勢の人の命がかかっているのですよ、あまりふざけるのは良くないかと、それこそ『炎上』しますよって、レーネはレーネはドヤ顔でそう言ってみる」

 ああ、もし僕にちょっとした力と世間の『女子は殴っていいけど、女子を殴ってはいけない風潮』に屈しない勇気があればこのイラつくドヤ顔の頬を殴れるだろうに、今ほどチート能力が欲しいと思ったことはない。

 女神様、もう『またチート系主人公かよ』と思われてもいいので僕にチート能力をください、お願いします、なんでもしますからぁ。

「ん? 今『なんでもする』って言いましたか?」

「言ってないよ、少なくともレーネにはね! 当たり前のように思考を聞き取らないで!」

 そんな願いが叶えられここで眠られし力が覚醒する――なんてイベントが起こるはずもない。はぁ、チート主人公が羨ましい。

「それよりもどうするのさ! 本当にこのまま【エルダート】の炎を止められないと大規模魔術術式が完成しちゃうんでしょ!?」

「ああ、それについては大丈夫です。【エルダート】の炎は止められますので」

「えっ? えぇぇぇ!? 止められるの!? それじゃあいったい何を考えてたのさ」

「なんとかあの愚姉を捕まえられないかと考えていたのですが、やはり無理そうですね。今回はムカつきますが諦めるとしましょう」

「それはもうしょうがないけど、炎の進行を止める方法があるなら早くやろうよ!」

「焦らないでください、心配しないでも止めるのはそれほど難しいものではないので――そろそろいい頃合いですかね」

「なんの話?」

「ここで私たちが難なく【エルダート】の炎を止めるのは簡単ですけど、あまりに簡単に止めてしまっては私たちがここら一帯を救った英雄として評価されません。ちゃんとトダースの町周辺まで炎が回るのを待つことにより、町の危機を救った英雄として評価されるわけです」

「つまり、すぐにこの炎を止めることは出来たけど自分らの功績を吊り上げるためにわざと時間を掛けて危機感を煽ったってこと?」

「わざわざ言わないでくださいよ、恥ずかしいじゃないですか」

「恥ずかしいのはこっちだよ!」

 こんな時まで自分の利益優先のクズヒロインキャラを発揮してくるレーネ、本当にその部分だけはブレない、ブレてほしいところだけブレない、それがレーネである。

 慣れてきてしまった自分が怖い。

「それではおふざけはこの辺にしておいて、【エルダート】の炎の止め方ですけど、『1杯の泥水に1滴のワインを垂らしても泥水のままだが、1杯のワインに泥水を1滴垂らせばそれは泥水になる』という言葉を知っていますか?」

「いや、知らないけど?」

「原文はもう少し大袈裟なのですが、今回は割愛しまして、要約すると不完全なものを完全にするのは難しいが完全な物を不完全にするのは簡単と言う意味です。もっとわかりやすく言えば清純派アイドルがちょっとしたスキャンダルによってファンが離れるのは当然だが、スキャンダルで失墜したアイドルがちょっとした善行でファンを獲得するのは難しいと言う意味ですね」

「いや、わかりやすいけど、わざわざアイドルで例えなくていいでしょ」

 明らかに悪意のある例えにそう言わざるを得ない。

「私もアイドルデビューする時はスキャンダルに気をつけないといけませんね、いつでも女性マネジャーと一緒に行動していますアピール頑張ります、ああ、その時はユットが私のファン1号ですね」

「そんな時は一生来ないよ」

「ええ、そんなぁ、私……ユットのためだけに歌ってもよかったんだよ」

 レーネの思い描くアイドルのモノマネなんだろうけど、可愛いと言うかあざとく全力でそう言われても、本来のロイン姿を見てるからなぁ、本当のアイドルみたくそう言うところを隠してくれてれば嬉しかったんだろうけど、「全然嬉しくないんだけど」そんな本音しか出て来なかった。

「それで、結局僕は何をすればいいの? そろそろ教えてよ」

「ああ、そうですね、このままだとまた中身のない話数になってしまいますね」

「(自覚あったんだ)それで?」

「やることは単純ですよ。ワインに泥水を1滴垂らすだけ、つまり【エルダート】の炎は完全な聖なる炎です、そこにユットの【ファレム】を撃てば【エルダート】は完全な聖なる炎ではなくなるので魔術の効力が無力化され【スコルチャード】は失敗に終わります」

 なるほど、わかりやすくて簡単だね。聖なる炎に僕の泥水を……。

「って今、僕、遠回しに馬鹿にされてるのでは?」

「何を言っているのですか、完璧な最強王者に対して落ちこぼれの最弱が一矢報いる。これこそ王道展開という奴です。これ以上に最弱主人公冥利に尽きる展開はないと思いますよ」

 いやだから、『落ちこぼれ』とか『最弱』とか、さり気なく当たり前のように馬鹿にしてるんだよなぁ、まぁ、強く否定できないけど。

 なにはともあれ、正直言って安心してるところもあるんだよね。このまま主人公として何も目立たないままになるんじゃないかってヒヤヒヤしてたけど、どんなしょうもない役回りだろうが見せ場があるようなので、ありがたくその立場を全うしようと思う。

「それじゃあ、やるよ?」

「――いいですよ、優しく……してくださいね」

「意味深に聞こえるようなこと言うの止めてくれるかな」

 イチイチ話の腰を折ってくるのでこれ以上レーネに確認を取るのを止めることにしよう。

「それじゃあ、コホン、【ファレム!】」

 気持ちを切り替える意味も込めて咳払いをして、久しぶりに(縞猪チョリムー初戦以来かな)キメ台詞らしく堂々と力を込めて【ファレム】を唱える。

 放たれた拳程度の大きさの【ファレム】は聖なる炎と混じり合った。これでレーネの狙い通りになったんだけど、僕から見て聖なる炎に変化はない。

「変化はないみたいだけど、これで【エルダート】は無力化されたんだよね?」

 また話の腰を折るボケを言ってくるんだろうと覚悟しながらも確認のためにレーネの方を向いて聞いてみたんだけど、レーネはジッと聖なる炎を見たまま反応を示さない。

「レーネ? 聞いてる?」

 全然反応がない代わりにレーネの額から汗が滲み始め、ダラダラと冷や汗のような雫が頬を伝って流れ始める。

「……レーネ、まさかとは思うけど」

「ユット、――ダメみたいですね」

「ダメなのはお前!!」

 この状況をアイドル顔負けの営業スマイルで誤魔化そうとするレーネに思わずそう言ってしまうのだった。



今回も読んで頂きありがとうございます。

ブクマ、感想、高評価、頂けると嬉しいです。

誤字脱字ありましたらご報告お願いいたします。

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