終盤パーティーメンバーが離脱する展開は色々ズルい
前回のあらすじ(簡略版)
地面に刻まれた魔術術式に心当たりのありそうなレーネだったが
確信を得るため一度町に戻りエリーと合流し解析を依頼
結果はレーネの予想してた通りでこの辺り一帯を焼き尽くす大規模魔術だった
それを止めるための人海戦術として緊急クエストが発令する
北~西の方角が怪しいと言うレーネだったのだが……
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル22
チャームレベル20
ファレムレベル5
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
ステータス画面『エリー?』←パーティー仮加入
レベル???
緊急クエスト発令によってトダースの町は混乱しつつも腕に自信のある冒険者たちはクエストを受注して町の外へ、冒険者以外の人は万が一に備え身支度をして町の外へと逃げ出していた。
慌ただしい雰囲気の中、僕たちは町の外へと逃げる人たちに紛れるように町の外へ出るとそのまま南東方面へと進み、森林の中(縞猪と出会った小山の少し南)を歩いていた。
「……一応聞いておくけどさ、なんでこっちなの? レーネ『私の予想だと北~西』って言ってなかった?」
「ああ、それですか、一応と言うからにはわかっていると思いますが、あれはフェイクです。他の冒険者を使って北西方面に敵の目を向けさせ油断させるためです。あとはこっちに来られると万が一私たちより早く愚姉を見つけられるかもしれないのでそれを防ぐためです。一石二鳥の素晴らしいアイディアですよね」
「うん、好感度を気にしないゲスイ(良い)作戦だね。レーネらしい作戦だと思うよ」
ここまでゲスイと逆に清々しく感じてしまうよね、あれ? 僕の感覚が麻痺してるのかな?
まぁ、どうせそんなことだろうと思ってた僕からすれば、今更落胆もないし、むしろこの答えを待ってたぐらいだから別にいいんだけど。
「つまり、こっちにお姉さんがいるってことなんだよね?」
「ええ、あの放火は大規模魔術を使うための言わば布石――いえ、違いますね、言わば前戯」
「いや、布石で合ってると思うよ。隙あらばボケようとしなくていいから」
とにかく普通に話を進めてくださいお願いします。
「少しぐらいつき合ってくれてもいいじゃないですか、冷たいですねユットは。まぁ、いいでしょう、とにかく、愚姉たちが行った放火は大規模魔術を行うために必要なことだった訳です。そしてその術式はまだ完成していません。私は愚姉が使う魔術の事を知っていますので当然この大規模魔術についての知識もあります。必要な布石は6つ、それを直線で繋ぎ六芒星を作った時その辺り周辺を焼き尽くす魔術術式が完成すると言う訳です。逆に言えば残り1つの布石を打っていないのでそれを打つために現れるということ、そして最後の布石を打つ場所と言うのがこの辺りと言う訳です」
「この辺りって、具体的にはどこなの?」
「さすがにピンポイントではわからないですね。規模が規模なだけに数十メートル程度のズレなら許容範囲ですから」
たしかに地図を見た感じだと数100キロ単位の大規模魔術術式だから数十メートルぐらい誤差なのか。
「まさかとは思うけど、この小山をしらみつぶしに調べるなんてレーネらしくない非効率的なこと言わないよね?」
「……も、勿論ですよ。この効率厨キャラと呼ばれるこの私がそんな非効率的なことするわけないじゃないですか」
「(割とそのキャラ設定も最初期で死んでた気もするけど)それじゃあどうするの?」
レーネの様子と声色から無策なのはなんとなく感じ取れてはいたけど一応聞いてみると、冷や汗を少し流しながら目を逸らし数十秒考え込む、その姿を見てやっぱり何も考えてなかったんだって思うと同時にこう言うのは早く言わないとハードルが上がるだけなのに、なんて思ってると真剣な顔つきになったレーネがこちらを向く。
「……仕方ありません。あまり使いたくはないのですが状況が状況ですからね。ユット、私の魔力を全て使いこの小山を更地にします、この魔術を使えば私は再起不能になってしまいますが仕方ありません」
いや、そんなラスボス間近によくある仲間の1人が犠牲になる展開をこのタイミングで急に言われてもリアクションに困るんだけど、しかも無駄にシリアスな感じで言ってるからボケなのかわかりづらいし、……とりあえず、止めておきますか。
「レ――」
「止めないでください!」
いや、まだ何も言ってないけど!
「ユットの優しさはありがたいですが、私の姉が引き起こしたことですし、一応身内である私がこの命と引き換えに愚姉の悪行を止めて見せます。心配しないでください、この魔術は生物の命は奪いませんので、人間ではない私と愚姉を消滅させるだけですので」
「レ――」
「止めないでください!」
いや、だから何も言ってないって! 言ってないって言うか言わせてもらえないんだけど、こんなシリアス感出しておいて主人公を喋らせないってどういうつもり!?
「……ユット、短い間でしたけどありがとうございました。思い出もたくさん貰いました。すぐに何かあれば私のご飯を抜こうとするし、稼ぎは少ないし、成長系主人公の癖に全然レベル上がらないし――」
ここって愚痴を言う場面!? 普通は楽しかった思い出とか言う場面じゃないの!? 愚痴と言うより最後のほうは単純に悪口だよね!?
「ユット……楽しかったですよ」
さっきの台詞の中のどこが楽しかったのか全くわからないけど、崩れかけていたシリアスな空気を立て直すほどの死を覚悟したヒロイン感で儚げな笑顔を向けてくれたレーネは僕に背を向け、聖剣を取り出し地面に突き刺すと地上に魔術術式が展開される。
空気が震え、風が吹き荒れる。
それはまるでこれから発動される魔術の規模の大きさを物語るかのような…………、何故だかわからないけど、覚悟を決めたはずのヒロインさんがさっきからこっちをチラチラ見てくるんだけど、ここは普通格好いい背中を見せる場面では?
「ユット! 絶対に止めないでくださいね! 絶対ですから! 今なら間に合いますけど絶対に止めないでくださいね!!」
軽い台風の中のような風が吹き荒れる中でレーネはそんな伝統芸と言っても過言ではないフリのような事を叫んでいる。
まぁ、そんなことだろうとは思ってたから真剣には止めなかったわけだけど、これ以上長引いて本当に消えられると困るので……ん? 困るよね? あれ? これってもしかしてヒロイン交代のチャンスなんでは?
「ちょ! えっ!! ユット!? 早くしないと本当に消えちゃいますよ!? ヤバイですよ!!」
うわぁ、表情と声からめっちゃ焦ってる感が凄い伝わってくるんだけど、レーネが消えるのはとりあえず保留としてもこの小山が更地になるのは止めるべきだよね。
「わかった、わかったからしらみつぶしに捜すからその魔術は使わないで」
「ユット! そこまで私のことを想って――」
いつでも魔術を止められるようにしてたんだろう、一瞬で空気の震えは止まり、風も止んでしまう。さっきまでのとてもじゃないけど見せられないヒロイン感ゼロの表情は何処へやらレーネは嬉しそうに振り返ってそう言うとさりげなく僕に小さな紙を渡してくる。
「でも、いいのですか? 私が魔術を使わなければ手遅れになる可能性も……」
そこには『レーネの命を犠牲にしたら意味が無い、だって僕はレーネとずっと一緒に居るためにあいつを止めるんだから』とセリフが書いてあり流れ的にこれを読めって言うことだと思う、紙に書いてあるセリフを見終えてレーネの顔を見ると『待っていますよ』と言わんばかりの表情をしてるからね。
まぁ、当然セリフは読み上げずにクシャクシャにして捨てたけど。
「あっ、ユット、ちゃんとセリフを読んでくださいよ。私の完璧な演出が台無しじゃないですか、せっかく感動的なシーンになる予定でしたのに」
「ならないよ! まったく、もぉ、しらみつぶしに捜させることに納得させるためだけに、なんでこんな茶番に付き合わないといけないのさ、全然話が進まないんだけど!」
「大丈夫です、それはいつもの事なので」
「威張ることじゃないんだよなぁ」
そう言う訳でようやくレーネのお姉さん捜し始めたわけだけど、もうかれこれ3時間ぐらい歩き回ってるんだよね。
昨日からちゃんと寝てないせいか、さすがに疲れてきたのでたまたま見つけた洞穴で休憩しようとレーネに言ってみた。
「えっ、洞穴ですか? 男女2人が誰もいない山の洞穴で休憩ですか? あ~、なるほど、そっちの意味の休憩ですか?」
「違うよ! どうしていつもそっち方面に話を持って行くのさ」
「えっ、違うのですか? 割と王道展開だと思いますけど、少なくともラッキースケベ的な展開はあると思うのですけど」
「そんなのあるわけないでしょ」
「またまた、そう言ってトラブルを装って転んだ拍子にスカートの中に顔を入れてくるつもりなのでは?」
「ないって、大体レーネのスカート、膝下まであるロングスカートでしょ、どうやっても顔は入らないでしょ」
「リ〇さんならどんなスカートだろうが状況だろうが、『そうはならんやろ』と言う感じでやってのけますけど? それどころか、あの方ならパンツまで到達すると思いますよ」
「あれは職人芸だから僕には真似できないから」
そんないつも通りの下らないやり取りを終えて僕たちは休憩するつもりで洞穴に入ったんだけど、入ってすぐ奥のほうから声が聞こえてくる。
「ねぇ、レーネ、何か声みたいなのが奥から聞こえてこない?」
「洞穴ですからね、奥でカップルが発情しているのではないですか?」
「そんなわけないでしょ、もう、ふざけないでって」
「冗談ですよ……そうですね、いやぁ、それにしても相変わらず耳障りな音ですね」
「レーネ?」
「いえ、私の勘違いでなければ、どうやら奥に愚姉がいるようですね」
「えっ、ホント!?」
「恐らくですが、あちらはまだこちらに気づいてないようですし、このまま気づかれないように接近しましょう」
まさか、休憩しようと思って入った洞穴の中にお姉さんがいるなんて、あれだけ探し回って見つからなかったのに。
落胆しながらもようやくレーネのお姉さんに会える期待感が上回る。
薄暗い洞穴の中を気づかれないように一歩ずつ慎重に歩く僕たちだったけど、一歩踏み出すたびに緊張からか、少しずつ心臓の音が大きくなっていくのがわかる。
洞穴の奥にいくにつれて当然暗くなっていったので僕はランプ替わりに【ファレム】を使い手のひらに灯すようにして進んで行くと、奥のほうが明るくなっているのが見える。
「レーネ、もしかして」
「ええ、どうやらあの辺りにいるようですね」
気づかれないように【ファレム】を消してゆっくりと近づくと徐々に音としてしか聞こえなかったモノがだんだんと声として聞き取れるようになってくる。
更に近づくと少し開けた場所に出て、そこには魔術によって灯されている灯りが複数あって、何かの儀式に使うような小さな祭壇のようなものがある。
更に近づこうとする僕をレーネは止めて『気づかれていないようですのでもう少し様子をみましょう』って耳打ちしてきたので僕はそれに頷いてレーネのお姉さんがどこかにいないか辺りを見渡してみる。
「――全く、どうしてあんたはそうドジなのよ!!」
それまでなんとなく聞き取れていた声が流石にここまで近づけばはっきりと聞き取れる。
僕は声が聞き取れた方を見てみると、祭壇の奥のほうに2人の姿があった。
1人は数時間前に会って逃げられた茶髪の女の人で、もう1人は銀髪ツインテールで灰色の瞳と色白の肌に赤色のドレスが特徴的な美少女で、体格はレーネより全体的に少し小さいと言った感じ、この特徴的な風貌から見ても、どうやらあの人がレーネのお姉さんのようだった。
「一応聞くけど、あの銀髪の人――」
「ええ、実に残念ながら私の愚姉です」
残念な人を見るような目で自分の姉を見つめるレーネの視線をそのまま追うと、レーネのお姉さんが再び話し始める。
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