二次元あるある『主人公たちメンタル強すぎ』
前回のあらすじ(簡略版)
交渉の末、黒幕の正体がレーネの姉と知り驚きを隠せないユット
レーネの予想に従いレーネの姉が来るであろう周辺を夜通し探すユットたち
結果として姉は現れなかったが、関係者だと思われる女性が
魔術術式を刻むところを目撃するも寸でのところで逃げられてしまう
仕方なく手掛かりなるであろう刻まれた術式を見てみるレーネだったが・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル22
チャームレベル20
ファレムレベル5
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
ステータス画面『エリー?』←パーティー仮加入
レベル???
「どう、レーネ?」
地面に刻まれた魔術術式を見下ろしながら何も言おうとしないレーネを促すように僕はそう聞いてみる。
「――そうですね、はっきりとしたことは言えませんが、どうやら十中八九、私の予想通りですね」
「予想通りって?」
「まだ言えません、確証もないのに推理を披露するとろくなことにならないことは学んでいますから、とりあえず、この魔術術式をコピーして一度町に戻りましょう」
「それはいいけど、町に戻ってどうするの?」
「魔術術式に詳しい人に解析してもらうのが手っ取り早くて確実だと思いますので、町に戻れば専門家もいるでしょうし、そういう人たちに見せた方がいいかと」
「……そうだね、僕は勿論だけど、レーネもこの系統は専門外だもんね、それなら――」
エリーさんが魔術の解析とか得意そうだから協力してもらうことになり(レーネは嫌そうだったけど背に腹は代えられないみたい)そうして僕たちはトダースの町へ戻ってすぐにギルバーへと向かい、待ち合わせてたエリーさんと合流して事情を説明して協力してもらう。
「――と言う訳なんだけど」
「なるほどね、つまりは黒幕の正体はわからないけど、この魔術を使ってろくでもないことをしようとしてるのは間違いないってわけか、っで、この魔術術式を解析すれば黒幕の手掛かりが見つかるかもしれないってことだね?」
エリーさんは余計なトラブルを防ぐために一応エルフの姿に変身してるけど、エルフを装っていた時の口調じゃなくエリーさんのままだ。
「そう言うわけだ。黒幕を探し出せればユットの気も晴れるし、クエストもクリアできる。そっちとしても黒幕が捕まれば『黒き翼』の連中を減刑できる。悪くない話だと思うが?」
エリーさんに協力を頼む代わりに『自分の姉が黒幕と言うことだけは言わないでほしい』とレーネに頼まれたのでエリーさんには悪いけどその辺の情報は言わずに協力を頼んだわけだけど、何と言うか、こっちから頼んでいるって言うのにレーネは相変わらず強気と言うかなんて言うか、身内の恥を言わないでほしいって言って来たとは思えないほど堂々と交渉してる。
「そうだね、最もこの情報がどこから出てきたのか、どうしてそこに行きついたのかは説明されないし、正直眉唾もんだが、今のあたしにとってはこんなもんでも希望になる訳だからね、あんたらがわざわざ嘘の情報をあたしのところに持ってくるとも思えないしね」
「それじゃあ、解析してくれるんですか?」
「ああ、勿論さ、ほれ、見せてみ」
交渉が成立し、エリーさんが魔術術式の解析を始めると、解析は急ぐようにってレーネは言い残し用事があると言って外へと出て行った。
それから2時間ぐらいたった頃、ようやく解析が終わったようで内容を聞こうとしたんだけど、エリーさんの眉毛が寄ったまま驚いている姿を見てある程度、察することが出来た。
「こりゃあ、またエグイもんを……」
「レーネも『ろくでもないもの』って言ってたんですけど、そんなに危険な物なんですか?」
「危険ってもんじゃないね、なにせこれ――この辺一帯を焼き尽くすための魔術術式だからね」
ギルバー内には僕ら以外にも何人か冒険者が居て、当然マスターもいたんだけど、全員聞き耳を立てていたのか、ざわつき始めて、マスターに至っては動揺しすぎて拭いてたコップを落としてた。
「……え、えっと、この辺一帯ってどれくらい?」
そう言う僕も一瞬声がでないほど、動揺してたけど、ちゃんと聞いておかないといけないと思って聞いてみる。
「そうさねぇ、あんたらが急かすから簡易的な解析しかしてないからね、正確にはわからないが、まぁ、この人間界の半分は燃えるわな」
「そ、それって、この町も含まれる?」
「そらガッツリ、なんせこの辺りが中心だからね、いやぁ、一目見てヤバイと思ったけどここまでとはね」
さっきまで深刻そうな顔してたのにそう言って笑えるなんて、さすが義賊のリーダーをやってただけのことはあって肝の座り方が違う。だって普通はここにいた冒険者たちのように黙ったまま荷物を纏めて立ち上がり逃げ出すのが普通だと思う。僕だってそうしたいし。
「っささ、ユットちゃん、一緒に逃げましょうね」
「ちょ、ま、マスター!?」
一瞬の内に荷物を纏め遠出する準備を終えたマスターに手を引かれ、無理やりギルバーの外へ連れ出されそうになったんだけど、ドアが開いたところでマスターの足が止まる。
「おい不審者、私の主をどこへ拉致するつもりだ? ショタ誘拐の疑いで憲兵に差し出されてもいいのか?」
ちょうどいいタイミングでレーネが戻って来たみたいで、僕を連れ出そうとしたマスターにアイアンクローを決めながらそう言っていた。
「ち、ちが、これは――」
「どこが違う? どこからどう見てもショタコンがショタを無理やり誘拐している図にしか見えないのだが?」
「ああ、レーネお帰り、実は――」
メリメリと聞こえるほどの力で締め上げているのを見て、早く誤解を解かないとマスターの顔が大変なことになると思った僕は魔術術式の解析結果をレーネに教える。
「――なるほど、かくかくしかじかと言う訳ですか」
「いや、かくかくしかじかとは言ってないけどね、って言うか、全然驚かないんだね」
「専門外とは言え、ある程度はわかっていましたから想定の範囲と言う奴です。それより、私はてっきりこの騒ぎに乗じてユットグッズを部屋に所持している変態ショタコンがユットを誘拐しようとしたのかと」
「いやだなレーネ、マスターが僕を誘拐何て……ん? 『ユットグッズ』ってなに?」
「そのままの意味ですよ、ユットが使った物とかですよ、1番わかりやすいのはタオルとかですかね」
「えっ、なんでそれをマスターが持ってるの?」
「私が公式グッズとして売ったからです」
「そんな公式グッズ存在しないよね!? って言うか本人に非公認の公式グッズがあってたまるか! そもそもマスターが僕のそんなもの買う訳――」
僕はマスターのほうに向けてそう聞いたけど、返事はなかった。勿論、屍になってるわけでもなければアイアンクローが強すぎて話せないわけでもない(すでに解放されてる)単純にこっちから顔を逸らし黙秘してる。その姿を見て察した僕は恐る恐るレーネに尋ねる。
「――ちなみに今までどんなものを売ったの?」
「タオルとかハンカチとか靴下とかですかね、ああ、ちゃんと使用済みの奴ですよ」
「それならいいか――ってならないよ!! むしろ使用済みのほうが嫌なんだけど! もう、どおりで私物がちょこちょこ無くなると思ったよ」
「解決してよかったですね」
「考えられる中で最悪の解決だよ!」
「そんな怒らないでくださいよ、ユットは自分が思っているよりも街の人たちに人気があるのですよ、お姉さま方を中心にユットの私物が欲しいと何度頼まれたことか、中には数万払うと言った人たちもいるぐらいですから、そんな誘惑の中、ちゃんと一線はわきまえて下着とか歯ブラシとかは売ってないのですからむしろ褒めてください」
「褒めないよ! むしろ当たり前だよ!」
聞きたくなかった事実を聞いてしまい動揺する僕だったけど、とりあえず、僕の私物を売ったお金は横領せず共有口座に入れてるって言ったので状況が状況だし、一旦この件は保留にして話を戻さないと。
「っで、レーネはこれからどうするつもりなの?」
「当然、この魔術を発動しようとしているアホを止めます」
「そりゃあ無茶だろ、解析した感じだと、この術式もうすぐ完成しちまうぞ? 黒幕の居場所に関しての手掛かり何て何もなかったし、今から見つけるなんて……」
肝が据わってるとは言っても現状活路を見出せない様子のエリーさんは呆れたようにレーネにそう言った。
「じゃあ、諦めて逃げ出しますか? 私たちは逃げきれても留置所のお仲間さんは鍵のかかった牢屋の中で燃え死にますよ?」
「……なにか、方法があるんだな?」
「ええ、単純かつ合理的な解決法があります、そのためには癪ですが、そっちにも協力してもらう必要がありますが、どうします?」
「今更確認する必要も無いだろうに、それで何をすればいいんだ?」
「私は魔術解析をしている間に色々と準備をしながらもこの町の各ギルドへ行き、この町を含め周辺を燃やす魔術術式が完成しようとしている可能性があると言って回り、確証がとれたら協力してほしいと言ってきました、ですのであなたが解析結果を各ギルドへ説明に回れば町を挙げた緊急クエストが発令されます」
「それだけか? それでどうなるって言うんだ?」
「あとは簡単ですよ、緊急クエストの報酬は桁が違いますからかなりの人数が参加します、その魔術術式は発動するための条件として術式の近くに使用者がいなければ発動できない魔術です、となれば、大人数でしらみつぶしにこの辺りを捜索すれば――」
「誰かは黒幕を見つけるってことか!」
「そう言うことです、当然私たちも参加します。協力してくれるのならあなたも私たちのパーティーの一員にしておきます、そうすれば、もし、私たちがたまたま黒幕を見つければあなたに連絡しますし、術式の発動を止められれば町の英雄となる訳ですから、お仲間の減刑もかなり考慮されると思いますよ」
「はっ、人海戦術か、品の無い作戦だが気に入った! あたしも一口乗ろうじゃないか! そうと決まればあたしは解析結果を説明しに行ってくるよ」
「ええ、お願いします、あとこれは私の予想なのですが、この街から北~西方面が怪しいと付け加えておいてください」
そう言って外へ出て行くエリーさんの後姿を見送ったレーネは上手くいったと言わんばかりに口角を上げる。
事情を知ってる僕からすれば上手く言ったものだと思う、さすがにここまでの付き合いや話の流れから察するにレーネの思惑としては緊急クエストを受注してお姉さんのところへ行き、エリーさんには内緒でクエストをクリアしてしまおうと思ってるんだと思う。
普通にお姉さんのところへ行こうとすればエリーさんに付いて来られるだろうし、この状況で町の外へ出てどこかへ向かおうとすれば怪しまれて付けられるかもしれない、だから多くの冒険者を巻き込みその中に紛れ込んで町の外へ出てお姉さんのところへ一直線に行こうとしてるんだろう。
恐らく、レーネにはお姉さんが居るところに心当たりがあるんだろう、じゃなきゃこんな作戦は考えない、なにせ自分が負けるかもしれないことをあのレーネがするわけがないからね。
これが成功すればエリーさんに身内の恥がバレることもないし、緊急クエストの報酬も手に入れられる。一石二鳥というわけ。
どこまで合ってるかわからないけど、大きくは外れてないと思う。現に僕に色々とバレたショックで落ち込んで座ってたマスターを叩き起こして一足早く緊急クエストの依頼を出させて、いち早く受注するや否や0がズラッと並ぶ報酬欄を見て嬉しそうにニヤけているからね。
本当は魔術術式を見つけた段階でお姉さんのところへ行けたはずなのに、こうして町へ寄って緊急クエストを発令させるあたり、抜け目がないって思うと同時にそれだけのことをする余裕があるってことなんだと思う。
なにはともあれ、長く続いたこの放火編も終盤って言ったところだろう、さて、それじゃあ黒幕(レーネのお姉さん)に会いに行きますか。
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