ショタの短所
前回のあらすじ(簡略版)
『あの娘』である銀髪灰眼の美少女「レーネ」から情報を貰い、これからの方針を決める
この異世界でマナと呼ばれる物質の量が最近は不安定になりつつあるのが異変に繋がっている
その原因を排除することでこの異世界は安定するのだがそのためには各地を調べ回る必要があり
モンスター対策として身を守るためにユット自身のレベルを上げることになったのだが……
「えっと、その、ですね。恥ずかしいんですけど、僕、お金が無くて、ちょっとでいいんです、ちょっとだけ、お恵みをお願いします、お姉さん」
なんで僕がこんな恥ずかしいセリフを、町を歩いていた知らないお姉さんに目を潤ませながら言っているのかと言うと、人気のない街はずれで魔術特訓を始めた3時間前まで遡る。
「ユットが使える魔術は【チャーム】魅了魔術ですね。それじゃあ、お金を持っていそうなお姉さん相手に使って来てください、勿論、最優先はお金ですけど、低レベルの内は食べ物でいきましょう、要求する物の価値が高いと成功率が下がりますから、ちなみに会話の入りは――」
「いや、当たり前みたいに話してるけど、ちょっと待ってくれない。まず、初期魔術が【チャーム】っておかしいでしょ? 普通こういうのは火属性の低級魔術とかじゃないの?」
「○ァイアとかメ○とかですか?」
「あえて触れないように言ってる僕の身にもなれ」
「いいじゃないですか、その容姿にピッタリですよ、魅了魔術なんて」
「全然嬉しくないんだけど」
「むしろ攻撃魔術のほうが厄介ですよ、町の中だと憲兵が来るので攻撃魔術は使えないですからね。固有魔術〈この場合チャーム〉レベルを上げるにはその魔術を使わないといけないわけです、逆に言えば使えば使うだけ固有魔術のレベルが上がるのですから【チャーム】が初期魔術なのはラッキーですよ、あの母にしてはナイスなチョイスです」
「(いや、絶対に違う理由だと思うんだけど)」
「それじゃあ、続きをやりますね。まずは出会いのきっかけ作りですが、無難なのはターゲット〈お金を持っていそうなお姉さん〉を見つけたら目の前で転んでください、そうしたら必ず声を掛けてくると思いますので、すかさず上目遣いで食べ物もしくはお金をせびってください。コツは不幸そうな幸薄目の子犬感を出す感じで――」
「ちょっと待って、当たり前のように続けてるけど、【チャーム】を使うのは、まぁ、良いとしてお金とかを要求するってのは駄目でしょ」
「何故ですか?」
「いや、普通に考えて魅了魔術を使って何かを要求するなんて窃盗と変わらないよね?」
「何を言っているのですか、考えても見てください、ユットがいた世界でも同じようなことがあると思いますよ、例えば握手するだけなのに1回数万掛かるとか、SSRが出るまで数万掛かるとか、イケメンや美女と一緒にお酒を呑んだだけで数万掛かるとか、傍から見れば頭おかしいだろって思うことでも楽しそうにお金払う人たちいるじゃないですか、それも言ってしまえば【チャーム】に掛かっているのと同じなのですよ。それらの行為が合法な以上これもオッケーです」
「えー、そうなるのかな?」
「そうですよ、それにこの世界は基本的には自分の身は自分で守るのが鉄則ですし、職業がシーフ、つまりは盗賊なんてことを堂々と言う世界なのですからこれぐらいは子供の悪戯みたいなものですよ、現にユットは見た目子供ですし」
僕の良心的に結構悩みはしたけど、『この特訓は魔術レベルも上げられますし、ついでに食べ物やお金も手に入る画期的な特訓なのです、お金がないとまた餓死しますよ』と言われ、渋々レーネ相手に自己鍛錬を重ねてチャームレベルが3になったところで町のお金を持っていそうなお姉さんに声をかけまくっていると言う現状なんだけど……。
「これ、上手くいき過ぎだろ」
8戦8勝、戦利品、トマトのような果物、パンやシュークリームのようなお菓子、マッチのような消耗品などなど、お金に関しては1万ジェニー(こっちの世界の通貨で1ジェニー=1円)を獲得した。
最初は絶対に相手にされないだろうとか思ってたけど、凄くみんな優しくしてくれるし、罪悪感がわかないほど、嬉しそうに物をくれるのは助かるんだけど……。
「……複雑だよね」
「何がですか?」
「いや、これ、【チャーム】の魔術の効果も勿論あるんだろうけど、絶対にこの容姿も関係あると思うんだよ、つまりは僕の元の体と言うか顔だと、こうは上手くいかなかっただろうなって思うと複雑な気持ちになる」
美少年万歳、イケメン万歳となれない所が僕の嫌なところなんだろう。
「あー、たしかにそうですね」
「いや、そこは少しぐらいフォローしようよ」
「フォローできる程度の差ならフォローしますけど、サッカーに例えるならプロ同士の試合なのに13対1で負けた選手に対して『惜しかったよ』ってフォローになります?」
「そんな大差なの!? ワンサイドゲームってもんじゃないよ!」
「えっ、自覚ないのですか?」
「止めて! そこで真顔にならないで!」
「もし、元の顔で初期魔術が【チャーム】だったら……地獄ですね」
「14点目を取りに来ないで! もう十分だから、十分にオーバキルされてるから」
レーネは美人でスタイルも良くて、従者的な立ち位置だからって黒の上下のスーツ姿に赤のネクタイ(着崩しているから中のYシャツ丸見えだけど)で言葉遣いも丁寧だし、これから一緒に行動をすること自体は大歓迎なんだけど、ちょいちょいこういう辛辣なところがあるのがなぁ、まぁ、変に気を遣うこともないし、これはこれでいいのかな。
「さて、無駄話もこれくらいにしましょう。十分資金も集まりましたし、そろそろ陽が落ちますから今夜の宿でもとりましょう」
「あー、そうか、寝るところもないんだったね、ん? レーネもないの?」
「ええ、さっきも言いましたが私は現在お金を持っていませんから」
「それじゃあ、今までどこで寝てたの?」
「お金があるときは勿論宿に泊まっていましたけど、追い出されてからは――」
「(追い出されたんだ)」
「――あそこです」
レーネが指差した先を見ると、段ボールのようなものが犬小屋のように形成されている。
「あれ、何?」
「何って、見ればわかるじゃないですか、マイスウィートハウスですよ」
「いや、どこからどう見ても小学生が作った夏休みの自由研究程度にしか見えないんだけど、よくあれで今まで無事だったね、防犯的な意味で」
「ああ、それに関してはそれなりに危険でしたよ、何回かヤバそうな男たちが現れて私に乱暴しようとしましたけど、『まぁ、してあげてもいいですけど、私、今、本気でお腹空いているので食い千切るかもしれないですけど、良いですか?』って聞いたら逃げて行きました」
「1番ヤバイのお前ぇ!」
「でも、オットセイの奴とか珍味として食べられるみたいですし、チンだけに」
「上手くないよ!」
「食べたことあるんですか?」
「そっちの意味じゃないよ、もう、(顔とか綺麗だし言葉遣いも丁寧な癖に恥じらうこともなく下ネタ言うんだもんな)とにかく、宿に泊まるんだから、これは片づけて捨てないと」
「人の家をゴミみたいに扱わないでください、と言うかその心配はありません、あの一角は私の土地なので放置しておいてください」
「あそこ私有地なの!?」
「ええ、なのでご心配なく、それより早く宿にいきましょう。この時期は夜冷えますから、何度死にかけたことか」
何を思い出したのかはわからないけど(まぁ、予想は付くけど)震えながらレーネがそう言うので、とりあえず、安い宿屋へ行き部屋を取ったのだが……。
「なんで、2人で1部屋なの?」
「1部屋の方が安いので、何か問題でも?」
「大ありだよ!? 僕は男でレーネは女の子でしょ、一緒はマズイって」
「大丈夫だと思ったのですけど、まぁ、たしかに成長は個人によって差はありますから、一応確認の必要はありますか」
「えっと、レーネ? ちょ! なんで急に服脱いでるの!?」
躊躇なく上下の服を脱いで自分のベッドに投げ捨てたレーネは黒のストッキングと薄いピンク色の下着姿になってしまって目のやり場に困る。
「まぁ、私は自分のボディラインにそれなりの自信がありますから」
いや、たしかにそうだけど、まるで小柄なモデルさんのような体系で銀髪も相まって神々しいほど綺麗だけど、だからって急に脱ぎだすのは可笑しいでしょ。
「ドキドキしていますか?」
「僕だって男だから、するに決まってるだろ」
もう、心臓が耳元にあるんじゃないかってくらい、ドキドキしてるよ!
「なるほど、それなら確認できますね、それでは失礼して――」
下着姿で迫ってきたレーネにこのままキスされて押し倒されるのかと、これがおねショタなのかと覚悟して初めてなので優しくしてくださいって思いながら目を閉じた瞬間、急に下がスースーしたのがわかった。
「……はい? って、ぎゃあああ! 何するんだよ!?」
一瞬何が起きたかわからなかったけど、すぐにズボンごとパンツを下ろされて目の前のレーネが僕の股間を凝視しているのがわかり、めちゃくちゃ驚きながらすぐにズボンごと上げる。
「予想通り親指程度の子供だったので大丈夫です」
「は? 何言って……いやいや、そんなわけ――」
そんなわけない、だってこんな美少女の下着姿を見たら普通男の子の男が反応しないわけがない。
「――マジか」
パンツの中を確認した僕は肩を落とすようにそう呟いた。
虚しくも残念なことに僕の中の男は無反応だった。
「よかったですね、それなら女湯にも入れますよ」
「全然嬉しくないよ」
どうやら、ぼくのあたらしい、からだは、おもっていたより、こどもみたいです。
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