お化物語
前回のあらすじ(簡略版)
ブッチョから黒幕の話を聞いたのだが居場所などの有益な情報はなく
エリー含め空気が暗くなる中、頭を抱えるレーネの姿をユットは見逃さない
すぐにレーネは何か心当たりがあると気づいたユットはエリーと離れた後
交渉(ツンデレ台詞)によってレーネの知る心当たりを聞くことになったのだが
レーネの口から告げられた衝撃の事実にユットは驚きを隠せないのであった・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル22
チャームレベル20
ファレムレベル5
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
ステータス画面『エリー?』←パーティー仮加入
レベル???
呆気にとられると言うのはこう言うことなんだと思う、思わず『は?』と言った口が塞がらずマヌケに首を傾げてるのが自分でもわかる。
「言葉の通りですよ、あの外見的特徴+性格+戦闘力=私の姉。愚姉ですよ。間違いありません」
「えっ、いやいや、待って待って、そもそもレーネって姉妹いたの?」
「言いませんでしたっけ? 私は四姉妹の末っ子ですよ。そしてその愚姉は三女です」
頭がこんがらがっているのをなんとか整理して冷静にひとつずつ解決していこう。
「仮に黒幕がレーネのお姉さんだとして、なんで女神の一族がこんなことをする必要があるの? そもそもここは女神様、レーネ達からすれば母親が管理してる世界でしょ?」
「色々と複雑と言うか、説明するのが面倒なのですが、簡略的に言うと反抗期です」
わ~、なんともありがちでしょうもない理由。
「それじゃあレーネのお姉さんは反抗期だから母親が管理してる世界に侵入して悪さをしてるってこと?」
「可愛く言えばそんなところですね」
「(可愛く言えば?)まぁ、いいや、でも、そんなことしてどうするの? なんか意味あるの?」
「目的まではわかりませんがやろうとしていることはわかります」
「何をしようとしてるの?」
「さっき聞いた話によれば『黒き翼』が放火した数は7件、しかし、マスターに聞いた未解決の放火の数は11件ありました。数が合わないのです。つまり、残りの放火は愚姉がやったとみて間違いないでしょう」
「どうしてそう言い切れるの?」
「そもそも『黒き翼』を再結成させたのはネームバリューがあるので、黒幕である自分まで捜査の手が届きにくいと言うのが理由でしょう。放火を依頼したのも自分たちが行う放火のカモフラージュが目的だとすれば辻褄が合います」
レーネのお姉さんには何か目的があってそのためには各地で放火を行わないといけなくて、その目くらましのために『黒き翼』を使ったってことか、たしかにその可能性はありそう。
「それじゃあ、レーネのお姉さんがやろうとしてることって?」
「私の予想が正しければろくでもないことですよ。まぁ、それについてはまた後で言うとしましょう、とりあえず、会って捕まえてみませんか?」
「えっ!? 会えるの? どこにいるのかわかるの?」
「おおよそですが、今まで愚姉が放火してきたところと順番から推察するに――」
レーネの推測を元に僕らは夜通し目的地まで歩き、朝日が昇り始めようとする時間になっていた。
「――この辺ですね」
「ここって、僕たちが初めて町の外でモンスター相手のクエストをした雑木林だよね」
「ええ、そうですね。おそらくここ『始まりの林』にいると思います」
「えっ、ここって『始まりの林』って名前だったの?」
「さぁ? 今つけたので」
テキトーだなぁって思いながらも僕らがたどり着いたのは一角兎を捕縛したあの雑木林だった。
「あっそ、でも、こんなところにいるの?」
「おそらくは、タイミング的にも地図的に見れば逆サイドにいる『黒き翼』に我々の目が向いているところですから、仕掛けるならこのタイミングかと、とりあえず、怪しい人物を捜してください」
「捜すって言っても、僕はレーネのお姉さんの顔とか知らないから無理じゃない?」
「ああ、その辺は大丈夫です。あの愚姉は内面ともに優れている私とは違って、容姿だけは辛うじて優れていますので目立つ顔立ちで150センチぐらいの低身長の女を見つければ、間違いなくそいつが愚姉です」
口調からも仲が悪いんだろうなぁって簡単に察せるほどにお姉さんのことを話すレーネはどこか不機嫌そうで、意外と喜怒哀楽がはっきり出るタイプじゃないレーネにしては珍しいので、ますますレーネのお姉さんに興味が出てきたけど、さすがに深堀するのも気が引けてとりあえずはレーネの言う通り、この辺りを2人で捜し始めた。
薄暗い景色に慣れてきたのかそれとも日が差してきたのかわからないけど、徐々に辺りがよく見えるようになってきた。
体感的に1時間ぐらい捜したけど、今のところ見つけるどころか、僕たち以外に人の姿すら見えない。こんな状況いつもなら『もう諦めましょう』とか『休憩しましょう』とか言ってくるレーネなのに今回はそんなことを言わず、無駄口も叩かず、ふざけることもせず、黙々と捜してる様子を見て、今回のこの事件と言うかクエストは結構本格的にヤバイんじゃないかと思い始めた矢先、ここに来て初めて人を見つけた。
少し離れてるせいか、はっきりとは見えないけど茶色い長い髪をした女性が屈んで何かしてるようだった。
遠目から見てもレーネのお姉さんの容姿とは違うけど、こんなところでこんな時間に女性が1人何かしてるのが気になって、一応レーネを呼んでみた。
「あれあれ、あの人」
「ん? どれですか?」
「いや、あそこにいる女の人だって、距離的に50メートル無いぐらいのところに茶髪で髪の長い女の人が屈んで何かしてるでしょ?」
「えっ? ――誰もいないですよ?」
またレーネがふざけてるのかと一瞬思ったけど何と言うか、素のリアクションだったので、僕が見間違えたのかと思って凝視してみるけど、やっぱりそこには長い茶髪の女の人がいる。
「いやいやいや、いるってば」
「いやいやいや、見えませんって」
当然僕は嘘をついてない、レーネも嘘をついてるような様子がない、そう思ったのはどうやら僕だけじゃなくレーネも感じたようで、2人の間に変な空気が流れる。
「……つまりユットには見えて、私には見えないってことですか? それって……」
レーネも察したのか僕ときっと同じことを思っているのか、冷や汗が流れるのが見えた。
「いやいや、やめてくださいよ。お化けとかいませんって、私を驚かせようとかそんなのいいですって、時期的にちょうどそう言う季節だからってそう言うのいいですから」
「『レーネにお化けが見えるって言って驚かすドッキリ仕掛けてみた』じゃないから、ドッキリネタとかじゃなくて僕には本当に見えるんだって」
そう言った僕の言葉を聞いたレーネは何も言わず、一瞬、沈黙の時間が流れたかと思ったら真剣な顔つきになって口を開く。
「茶髪で髪の長い女の人、よね?」
「……レ、レーネ?」
「つまりね、ユット。かなりの距離を夜通し歩いて眠くて帰りたいユット。その人――茶髪で髪の長い女の人のことなのだけれど」
レーネは茶髪で髪の長い女の人を指した。
つもりなんだろうけど、それは全然違うあさっての方向だった。
「私には見えないのよ」
ぎょっとして――僕は――じゃなくて!
「いや、別に僕がカタツムリの迷子に出会った訳じゃないから、そんないつかは言ってやろうと思ってたセリフを言えたみたいなドヤ顔されても普通に反応に困るんだけど、と言うかそれって、帰りたくない人が会う怪異だからね、帰りたい人を迷わせて帰らせないようにするって結構鬼畜な行為だからね」
「つまり、仕事終わりに後輩や部下を呑みに連れて行く奴は鬼畜な怪異だったと言う訳ですね」
「それは怪異じゃなくて、単純に家に帰りたくないから後輩とかを巻き込んでる迷惑な人なだけでしょ」
「なるほど、家に帰ると鬼や暗闇と言う名の怪異がいるから帰りたくないと」
「誰もそこまでは言ってない」
少しでも身構えた僕が馬鹿だったみたい、でも、そんなおふざけをするぐらいには少しレーネにも余裕が出来たようで、いつものレーネに戻ってきて少し安心する。
どうやらレーネには本当に見えていないようなので僕がレーネの手を引き、茶髪の女の人のほうへ気づかれないようにこっそりと歩く。
「ユット、私を人気のない暗がりに連れて行ってどうする気ですか? なにする気なのですか? ナニをどうする気なのですか? 私の口にナニを――自主規制――」
「もう、ふざけてないで静かにしてよ、と言うかふざけてもいいけど、規制に引っかからないように話してよ」
コソコソと小声でそんな下らないやり取りをしながらも気づかれないまま、10メートルぐらいまで近づくとレーネの足が止まる。
「レーネ?」
「う~ん、……ああ、ぼんやりと見えてきましたね。もう少し近づいて見ましょう」
そう言って僕の前を歩き、5メートルのところで足を再び止める。
「見えました。たしかに茶髪の女の人ですね」
「よかった、僕だけに見えてるのかと思ってたから、でも、ここまで来ないとレーネには見えないなんてなんでだろうね、見た目的にお姉さんとは違うとは思ったんだけどこんなところでこんな時間に女の人が1人で何かしてるのは変だなって思ったんだけど、関係ないよね?」
「……たしかにあれは愚姉ではないですけど、あの女は恐らく迷彩スキル持ちか、もしくはステルス系の魔術を使っていますね。ユットが言ったようにこんなところで人目を忍んで何かしているとなれば――」
そう言ってレーネは拳銃を取り出し魔力を込め始める。
「ちょ、ちょっと待って、無関係の人かもしてないんだからさすがに撃つのは駄目だって」
「しかし、事が事ですから。大丈夫です殺しはしませんよ、それにもし、無関係だったなら口を封じればいいのです」
永遠に、って付け足すレーネを何とか説得して、とりあえず、茶髪の女の人に話を聞いてみることになる。
「よっし、これで終わり」
そんな茶髪の女の人の独り言を聞いて何か作業でもしてたのかな? って思いながら後ろから話しかけてみる。
「あ、あのぉ?」
「ひゃっ!? えっ、ええ!? わたくし? えっ、なんで? 見えてるんですか?」
予想以上に驚いてる茶髪の女の人のリアクションを見て僕も若干驚きつつも『はい』って返す。
「あれぇ、おかしいな、そう簡単に見えるはずないのに……」
そんなことを独り言でブツブツ言ってる可愛い声と特徴的な赤色のイヤリングを見て、どこかで会ったような気が――。
「ここで何をしていたのですか?」
「えっ!? い、いいえ、何もしてませんよ。 わたくしは、な、何もしてませんよ、放火をしようなんて思ってませんよ」
僕が思い出せずにいる内に、レーネが質問したことに対して明らかに動揺して勝手にボロを出す姿を見て、僕らはより一層怪しいと思いもっと質問しようとすると、茶髪の女の人が何かしてた場所から火柱が勢いよく上がる。
「うわっ!」
「ユット下がってください」
火柱から火の粉が飛び、辺りに飛び火する。あまりのことに驚いてた僕を守るためにレーネは僕の手を取り火柱から距離を取ってくれる。
火の粉が届かないところまで離れると、火柱の勢いがなくなり、まるで既定の時間しか噴き出さない噴水が仕事を終えたかのように収まっていった。
周りの木々が火の粉によって燃えてるけど、すぐに山火事になるようなレベルじゃなく、一応安全と判断できる状況になり、さっきの茶髪の女が黒幕の関係者だと確信して問い詰めようとしたんだけど、この機に乗じて逃げてたみたいで茶髪の女の人は僕らから少しずつ距離を取っていく。
「逃がしません」
背中を向けて走ってる茶髪の女の人を捕まえようとレーネは駆け出して、逃げる手を掴もうとする。
「えっ」
一瞬手を掴んだように見えたけど、するりとレーネの手が空振った。僕も追いかけたけど、すぐに見えなくなってしまって2人で辺りを捜したけど見つからず、見失った場所に戻って来た。
「見つからなかったね、って言うか、レーネあの時一瞬、掴んでなかった?」
「私も掴んだような気がしたのですが、何と言うか空気を掴んだようにスルリと抜けてしまって」
「まぁ、とりあえず、あの人の反応と放火の現行犯として見ても黒幕の関係者で間違いなさそうだし、何をやってたのかは痕跡を見ればわかるかもしれないし調べてみようよ」
「そうですね、たしかこの辺でしたね」
僕らは茶髪の女の人が屈んでいた場所を少し探すと火柱が上がった辺りに何か土を被せて隠したような跡があったので掘り起こすと土の中には何かの魔術術式のようなものを見つけレーネに見てもらう。
「……やはり、そうですか」
土に隠されてた魔術術式を見てレーネは嫌な予感が当たったと言わんばかりの顔で少し茫然と魔術術式を見下ろすのだった。
今回もここまで読んで頂きありがとうございます。
いつもは3000字前後を目安にしてますが今回は少し多くなってしまいました
読みにくくなっていたらすみません。
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