他人に説教できるのも一種の才能
前回のあらすじ(簡略版)
ダークエルフの少女の案内で第2のアジトに到着したユットたち
元エフィが放った、たった1発の矢で『黒き翼」の面々は全員戦闘不能となる
突然のチート級強キャラ出現に焦るユットは見せ場を作ろうと中へ踏み込む
レーネが『黒き翼』の現リーダーを脅していると1本の矢が飛んでくる
それを撃ち落としその先に視線を向けると矢を放った元エフィの姿があった・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル22
チャームレベル20
ファレムレベル5
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
ステータス画面『エフィ?』←パーティー仮加入
レベル???
「そう怒らなくてもいいでしょ、こっちは敵対する気なんてないんだからさ、あたしはこいつらに聞きたいことがある訳、そのためにここへ来たんだから喋れなくされるのは困る訳よ、ってなわけでどいた、どいた」
元エフィさんはそう言いながらリーダーの胸倉を掴んでるレーネに近づき手を離させると後は任せなさいと言わんばかりにレーネを追いやった。
「レーネにしては珍しく素直だね」
喧嘩になるかと思ったけど、すんなりリーダーを任せたレーネが僕の近くにやって来たのでそう話しかける。
「さっきの矢で私より弱いユットを狙わなかったこと、矢の速度が先ほどより格段に落ちていたことから見ても敵意が無いのはわかっていますからとりあえずは任せても良いかと、何かかしら因縁もあるでしょうし、始末するのはいつでもできますから」
笑顔で『始末するのはいつでもできますから』なんて言ってるけど、全然冗談じゃないからね、このヒロインは普通にやっちゃうからね。多分だけど、さっきのだって誰かが止めてないと普通に撃ってたから。
レーネがそう言うならととりあえず僕たちは元エフィさんに任せてみることにした。
「にしてもブッチョがリーダーやってたなんてな、よく今まで捕まんなかったね」
元エフィさんは世間話のようなテンションで話しかけながら解痺ポーションを使ってリーダーの麻痺を治す。
「エリーさん! さっきの攻撃、もしかしてと思いましたがどうしてエリーさんがここに?」
「解散したはずの『黒き翼』が復活したなんて噂があたしの耳に届いたわけ、最初はどこぞのならず者が勝手に名前を使ってるだけだと思って無視してたけどさ、どうもやり口とかに覚えがあってね、まさかと思って調べてみたらあんたの痕跡がばっちり出たわけ、だからこうして探し出して問い詰めてやろうと思ってね、っで、これはどういうことなんだいブッチョ」
どうやら二人の会話を聞く限り元エフィさんは『黒き翼』の中ではエリーさんと呼ばれていてこの小太りのリーダーはブッチョと呼ばれているらしい。色々の混乱しそうだからこれからは元エフィさんのことを『エリー』さん、リーダーのことを『ブッチョ』さんと言うことにするね。
「いやぁ、それは、そのぉ――」
悪いことをしたときに問い詰められてるレーネのような歯切れの悪さで言いづらそうにしてるブッチョさんにしびれを切らしてエリーさんが話し始める。
「ったく、あたしがここを抜けるときに全員足を洗って真っ当に生きるって言ってただろ、なのになんでこんなことをしてるかねぇ、しかも義賊ならまだしもただの盗賊に成り下がりながら『黒き翼』の名前を使うなんて、なんとか言ってみ」
「お、俺らだって最初はそう思ってましたよ、義賊の誇りはあっても盗みは盗み、もう盗みは辞めて真っ当に生きるって、でも、駄目なんすよ。色々働いてみましたけど、何をやっても頭によぎるんすよ。『あぁ、こんなに辛くて苦しい思いして働いてもこれだけにしかならないのか、盗みならもっと楽に稼げるのに』って」
「はっ、とんだ屑野郎ですね」
情けなさそうに少し落ち込みながら話し始めたブッチョさんに対して黙って聞いていたレーネはそんな風に吐き捨てる。
「なんだと、このアマ! どこの誰か知らねぇが俺らの事も知らねぇ癖に――」
ブッチョさんが怒ってレーネを睨みながらそう言った訳だけど、まぁ、どうなったか言わなくてもわかると思う、レーネは躊躇なく拳銃を取り出しブッチョさんに発砲した(さすがに威嚇射撃だったけど)顔色ひとつ変えないレーネの姿を見てブッチョさんは怯えて震えてしまっているのを見て僕は少しだけ同情する。
「あなたたちがどういう存在なのかは知りませんし、別に興味もありませんよ。ただひとつ言うのなら、たしかに人からなにかを盗めば努力するより効率的だと思います、けど、それはあなたたち盗賊以外の人がその非効率な『努力をしてくれているから』盗むことも出来るし楽に稼げるわけです。『辛くて苦しい思いをして働いてもこれだけ』って言いましたね? そんなことあなたたちじゃなくても思っていますよ、みんな思っているのですよ。それでもみんなその非効率な努力をしてお金を貯めているのです。それを盗む人間がどんな人間であろうがどんな理由があろうが許されるはずもないのですから」
「お、俺らはただの盗賊じゃねえ、義賊だ。汚いやり方で稼いでいる連中から金を巻き上げてひどい扱いをされてる連中に渡してたんだ、それのどこが悪い!」
「普通に悪いですよ、盗みなのですから。まぁ、ただ個人的な話をすれば悪事を働いて金を稼いでいる連中は嫌いなので義賊は嫌いではないですよ、例えいくらか自分たちの懐に入れていてもね。もし、私が義賊を捕まえるチャンスがあっても普通に見逃すと思いますよ。勿論有料ですけど」
「はっ、なんだ、お前さんも同じ穴の狢じゃねぇか、金で見逃してくれるなら――」
「ちゃんと聞いていましたか? 私は『義賊は見逃す』と言ったのですよ? 今の『黒き翼』は義賊ではないのでしょ? 調べによれば黒い噂もないお店や小規模のお店なども狙っていますね? 今回の農場もたしかに労働環境などに問題はありましたが、黒と言いきれないところでしたし、ただの盗賊に成り下がった屑野郎どもは逃がしませんよ」
すごい、レーネがまるで常識人のような正論をここまで言うなんて、少し驚きながら感心したけど、どうしても引っ掛かると言うか言わないといけないことがあるよね? みんなもわかってると思うので代表して言わせてもらうね。
「(いや、レーネには言われたくないよ!)」
たしかにレーネは盗みに関してはしてない(僕らのお金を無断で使うのはギリギリセーフということで)けど、ここまで他人を説教できるようなことをして来たかというと微妙なところだろうし、僕がレーネの立場ならあんな風に堂々とマンガやアニメの主人公みたいに悪人に対して説教タイムなんて出来ないよ。ある意味凄いと言うかあれだけ自分のことを棚上げできるのは一種の才能なんだと思う。
僕が呆れながら心の中でツッコミをいれてる間にもレーネは銃口をブッチョさんに向ける。
「さて、私の気も済んだのでそろそろ片づけますね、ああ、心配しないでもちゃんと埋めてあげますので」
ブッチョさん含め『黒き翼』の面々はレーネの言葉と行動に怯えているとエリーさんがブッチョさんを庇う様に前に立つ。
「まだ、あたしの話が終わってないんだからちょいと待ってな。ブッチョ、お前らの考えはわかった。だが、あたしはお前らのことを知ってる。お前らがそういう奴だってことも知ってる、だがね、それでもお前らは『黒き翼』を再結成させるなんて大それたこと思いついても行動できねえ奴らだってことも知ってんだよ。――『バック』は誰だ?」
エリーさんの問いかけにその場の空気が張り詰める。
この空気感だけでわかる。今回の放火事件を起こしたのは『黒き翼』だけど、それは実行犯ということ、黒幕とも言える真犯人。解散した『黒き翼』を再結成させ仕事を依頼してた人物がいる。
「い、言えねぇですよ。癪だが、そこの女が言ったように俺らはクズかもしれねぇ、そんなクズでも最低限の仁義はありますよ」
「お前らを使ってこんなことをさせてる奴に仁義なんて通す必要――」
「違いますよ、俺らが通したい仁義はエリーさん、あなたですよ」
「は? あたし? それって――」
「『あいつら』のことを言えばエリーさんを巻き込むことになりますから、俺らだって後悔してるぐらい『あいつら』は普通じゃねぇんです! エリーさん! 悪いことは言いません『あいつら』に関わっちゃいけねぇ」
この状況下でレーネに銃口を向けられた以上に恐怖してるようなブッチョさんたちの様子を見て、相当な恐怖を植え付けられてるんだとわかり、僕は『黒き翼』の背後にいる真犯人により興味が沸くと同時に恐怖感も出てきた。
「っで、その『あいつら』ってのはどこの誰なんだい?」
「エリーさん! だから――」
「あたしの心配をお前らがするなんて100年早いってんだよ。あたしの元部下たちを誑らかしてくれたんだ。きっちりお礼しないといけないからねぇ。そう心配すんなって、あたしに任せときな、元とは言えあんたらのリーダーを信じなって」
そのエリーさんの笑顔と言葉が胸に響いたみたいでブッチョさんたちは泣きながらこの事件の黒幕について語り始める。
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