ゲームバランスって大事
前回のあらすじ(簡略版)
ダークエルフの少女はリーダーではなくただの奴隷で
元リーダーが元エフィだと本人の口から告げられる
推理が外れたので今度は『黒き翼』を一網打尽にして真相を聞き出すことになる
ここからは目的が完全に一致したので元エフィと共に行動することになる
少女の案内で『黒き翼』が寝床に使っている場所に向かうのだったが・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル22
チャームレベル20
ファレムレベル5
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
ステータス画面『エフィ?』←パーティー仮加入
レベル???
町の外へ出た僕らはダークエルフの少女の案内で『黒き翼』が使ってる第2のアジトが見えるところまでやって来た。暗がりに紛れてたのが良かったんだと思うけど、ここまで見つかった気配はないし、ここら辺はモンスターが少ない(南西方面の森林)のでエンカウントすることもなく順調すぎて逆に罠なんじゃないかって思う程だ。
「あの古小屋と簡易的なテントが第2のアジトってこと?」
少し離れたところ(50メートルぐらい)にいかにも廃墟って感じの小屋とキャンプとかで使う大きめのテントが見えたので少女に確認してみたら少し緊張気味に『うん、うん』と頷いてくれる。
「そうですか、では私が――」
「いやいや、悪いけどあんたの出る幕はないよ」
斬り込もうとしたレーネを制した元エフィさんは弓と矢を取り出して弦を引く。
「あいつらは私に恥をかかせた奴らなので私がやります。そもそもこんなところから弓を引いても当たらないどころか見えないでしょう。見張り以外は中に入っているでしょうし」
レーネの言う通り、明るくて開けた場所でさえ相当な射撃スキルレベルがないとこの距離は厳しいはずなのに、こんな夜間で木々も生い茂ってるこの場所じゃさすがに無謀だと思う。
「そう思うなら賭けないか? あたしが矢を外せばあとは好きにすればいい、その代わりあたしが撃つまであんたは動かない、どう?」
「1発も外さないと?」
「う~ん、まぁ、そうなるか」
どこかはっきりとしない返事にレーネは少し眉をひそめる。
「あたしはあいつらの元リーダーだからね、あたしの手でただの盗賊に成り下がった奴らを止めないといけないのさ」
元エフィさんのその言葉を聞いて少し面白くなさそうな顔をしたレーネは僕の判断を仰ごうとこっちを見てくる。
「いいんじゃない、お姉さんは僕たちよりも前から『黒き翼』を捜してたみたいだし、1発ぐらい譲ってあげれば?」
「……ユットがそう言うならお手並み拝見ということで」
上から目線の言葉の通り腕を組みながら元エフィさんを見てレーネはそう言った。
「ははっ、そうこなくっちゃ――ねっ!」
セリフを言い終わると同時に放たれた1本の矢は正直言って僕の目だと追えないレベルの速度で古小屋とテントのほうへ向かっていった……ことがわかった頃には古小屋とテントのほうから痛みによる悲鳴が聞こえてくる。
「すごいね、本当に当てるなんて(全然見えなかったけど)……って、あれ? 次は撃たないの?」
1発撃った後、普通なら次の矢を撃つために構えるはずなのに元エフィさんは矢を構えるどころか弓をしまってしまう。
「なに言ってんの? もう撃つ必要ないでしょうに」
元エフィさんの言葉に首を傾げていると、どうやら状況を把握できていない僕のためにレーネが説明してくれる。
「ターゲットを指定できたということは夜目と透視を持っていて、さらには拡散、ホーミング、貫通――だけじゃなく麻痺までですか、エグイですね」
「夜目? 透視? 拡散? ホーミング? 貫通? 麻痺? ……それってまさか」
つまりは夜目(暗い場所でも見えるようになるスキル)透視(遮っている物体を透過して対象物を見るスキル)によってターゲットを指定して、放たれた1本の矢がターゲットの数だけ拡散(射撃スキルの1つ、放たれた弾や矢が軌道上で分裂する)してホーミング(狙ったターゲットに放たれた矢が自動的に向かっていく)により10人ぐらいはいたと思う『黒き翼』の面々に飛んでいき、貫通(壁や鎧などを貫通する)によって壁や遮蔽物やテントを無視して命中、そしてもがき苦しむような声が聞こえてくる理由はただの痛みではなく麻痺スキルによって痺れさせてるからだろう。
「いやいや、待って、さすがに待って、それって1つでも相当強いスキルだよね、それを複数所持してるだけじゃなくてこの精度からいって相当のレベルってことになっちゃうよ」
「私は別に最近ちょっと盛り上がりに欠けるなぁと思っていたので物語を盛り上げるためにわざと大袈裟に言ったわけじゃありませんよ。つまりはこれが俗に言うチートキャラって奴ですよ、はぁ」
当たり前のようにメタな話をするのは置いておくとして、ため息が出るのはわかる。なにせこの遠距離からたった1発で10人ほどの敵を無力化するなんてインフレにもほどがあるレベルだよ、どれくらいかって言えば末期のカードゲームでもこうはならないよってレベル。
「やりぃ、これで賭けはあたしの勝ちだね、にしても、いやぁ、全弾命中は気持ちいいね~」
女神様からのチート武器を持ったレーネだけじゃなくて、強スキルだらけの元エフィさん、これじゃあ当分は僕が戦闘で活躍することはなさそうです。
チマチマと魔術を使ってようやく【ファレム】のレベルが5になったって言ってたのが馬鹿らしくなってくるよ。
せめて主人公として出番を確保するために痺れてのたうち回ってるであろう『黒き翼』の面々を捕まえるべく、少しだけ早歩きで第2のアジトへ歩き出す。
アジトの中に入ってみるとそこは軽い地獄になっていたわけ、例えるならGが密集してる部屋に殺虫剤(ゴキ〇ェット)を撒いたような感じ、阿鼻叫喚とはいかないまでも麻痺によって痺れてた盗賊団たちが呻き苦しんでたのを見て、僕はさすがに少し同情して立ち止まってるとレーネがやって来て手近な男を見つけると近寄っていき、そんな状態の相手にも関わらず胸倉を掴み本当のリーダーが誰なのか問いただすと怯えながらゆっくりと小太りの男を指差したのでレーネはその男に向かって行き、同じように胸倉を掴む。
「あなたがリーダーでしたか、モブ過ぎる顔つきなのでわかりませんでしたよ。普通は盗賊団のリーダーとなればイケメンか悪人面と決まっているのに何ですか、その学校のクラスの中で下から3番目ぐらいにモテない顔つきは、お陰でいらない恥をかいたじゃないですか。どう責任取ってくれるのですか?」
路地裏で披露したレーネの推理は実際のところほとんど外れていて、その責任を当然のように、このリーダーに押し付けてるんだけど、予想通りなんのことを言ってるのかわからないリーダーは困惑した表情になるだけだった。
「なんですか、その顔は、イラつく顔つきですね。まぁ、私の推理通り大まかに言えばあなたたちが諸悪の根源であることは間違ってないわけですから私に恥をかかせた罰として、ここで始末しますか」
「ちょっと、レーネ。この人たちは町に連れ帰って憲兵に渡すんじゃないの?」
「この数を連れて行くのは面倒ですし、ここで片付けちゃいましょう」
そう言って、拳銃を取り出し躊躇なく額に向けるレーネ、それよりさっきからリーダーの様子がおかしい、ここまでされて何も言わないなんて……って思ったけど、首を左右に振って抵抗する様子はあるところからおそらくだけど舌が痺れて上手く喋れないらしい。
「ここまでされて何も言わないのですか? 普通は命乞いとかするものですけど、まぁ、されても聞かないので一緒ですが」
拳銃を握る手に力を入れようとしたので、さすがに助けてあげようと思ってレーネを止めるために呼び掛けようとした僕の横を1本の矢が通りぬけレーネに向かって飛んでいく。
「――っち」
舌打ちをしながらレーネは向かってくる矢に銃口を向けて魔弾を放ち撃ち落とす。
その一連の流れを見て僕は思わず、『おお、なんかバトルファンタジーっぽい』なんて思ってしまった。勿論そんなことを言ってる状況じゃないのはわかってるけど、今の今までが酷かっただけにちゃんとバトルっぽいことをしてるのを目の前にしてちょっとだけ高揚してしまう。
ダメダメ、そんなことを思ってる場合じゃないシリアスな場面だった。
魔弾で撃ち落としたレーネは眉間にしわを寄せて静かな怒りを匂わす。
「……何のつもりですか?」
僅かに鋭くなった目線でレーネがそう問いかけた先には矢を放ち終え、ニヤリと笑う元エフィさんがいた。
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