主人公たちだって失敗することもある
前回のあらすじ(簡略版)
ダークエルフの少女が傷だらけになった状況に
冷静さを失ったユットだったが
レーネの真意や考えを聞き冷静さを取り戻し納得
放火事件もこれで一件落着かと思った矢先
今までの雰囲気とは違うエフィが2人の前に現れるのだった・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル22
チャームレベル20
ファレムレベル5
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
暗い路地裏を薄っすらと照らす青白い街灯の下にいたエフィさんは少し口角を上げた顔つきでゆっくりと近づいてくる。
「ここで登場ですか、嫌な予感は当たったようですね」
エフィさんを見るや否や警戒するレーネの姿を見て戦力なるかどうかは別として僕もいざと言う時は戦えるように備える。
「レーネ、嫌な予感ってどういうこと?」
「私の対魔術スキルレベルだと本当の姿は見えませんでしたが、この者が変化の魔術を使っていたのはわかっていました。今の今まで正体がわからず、妨害もして来なかったのでとりあえず放置していましたが、このタイミングで出てくるということは――」
エフィさんは『黒き翼』に詳しく、変化の魔術を使い、そしてレーネの推理が間違っていることがわかってる人物、それって――。
「もしかして、『黒き翼』のリーダーのダークエルフって――」
「そういうことになるね、まっ、元だけど」
僕がエフィさんの正体に気づいたところでエフィさんは答え合わせのように変化の魔術を解いていく、色白の肌は健康的な褐色に変わり、目つきも若干鋭くなって元々そのなんて言うか、女性らしい豊満な体つきがより強調されて、エルフのような尖った耳と薄いピンクの長い髪が印象的なダークエルフの容姿になっていく。
「そんな、エフィさんが――それじゃあ、この子は?」
「それについてはあたしの予想だけど、その子が目撃された唯一の人なんだろ? だったら1番人目に付きやすい場所にいたってこと、それなら見張りをやらされてたんだろうね、見張りってのは下っ端がやることさ、なにせ1番見つかりやすくて1番捕まりやすいからね、いつでも見捨てることが出来るような扱いを受けてたってなればおそらくは奴隷ってとこじゃないか?」
エフィさんに質問されても傷が治り意識を取り戻した少女はどうしたらいいかわからず困惑してるみたいだった。
「そんなに怖がらなくても大丈夫さ、あたしはあんたと同じダークエルフだろ? 数少ない同族をあたしは守りたいと思ってる、心配しなくてもいい、悪いようにはしない、だから話してほしい」
エフィさんの優しい言葉が届いたのか、少女はまだ少し怯えながらも首を縦に振って口を開いた。
「わたし、そのヒトのイうトオり。ウられたドレイだった」
「売られたって、奴隷商人みたいな人がいるってこと?」
「あたしらダークエルフは嫌われ者でね、未だに差別してくる奴らもいるわけさ、だからあたしもあんな如何にも男受けしそうな色白で優しい清純そうな姿をしてたわけ、っで、その差別の1つに『ダークエルフは奴隷として扱っていい』みたいな馬鹿げた風潮があるのさ、見たことない? モンスターを使役してバトルをやってるアホ共を」
悪戯猿を使役してた人たちを思い出した僕はエフィさんに向かって頷く。
「ああいうのは基本、人間種(人の形をして言語を話せる種)は使役しちゃ駄目なんだが、ダークエルフはOKってこと、つまりダークエルフは人間じゃないってことさ」
「そんなこと!」
「そう言って怒ってくれるのは嬉しい限りだけど、事実さ。現に目の前のその子が証拠さ、大方奴隷商から見張り要員で買ったのか、それとも、もう少し大きく成長させて地位の高い糞野郎共にでも売り飛ばすつもりだったのかはわからないけど」
「それじゃあ、今回の件、この子は真犯人じゃないってこと?」
「真犯人を黒幕とするならそうなるね、少なくともこの子がリーダーじゃないことは保証するよ」
それを聞いてこの子はとんだ誤解をされてあんなにボコボコにされたと思った僕は直ぐにレーネに謝らせようとしたけど、僕が言う前にレーネは少女に頭を下げていた。
「申し訳ありません」
「ア、アヤマらないでください、ワタシもワルいから」
レーネに謝罪を要求するのが普通な場面にも関わらず(僕なら土下座されても許さないレベル)少女はレーネが頭を下げたことに驚いた様子でアタフタしながら腰の低い感じでそう言った。
「その子の言う通りさ、奴隷とは言え盗賊団の一員として窃盗、放火を手伝ったんだ。経緯はどうあれ捕まったら報いを受けるのは当然だろ?」
「私もその点に関しては同じように思っています。私が謝ったのはそこではありません。私はこの少女が真犯人だと思ったのです。だからこの程度の罰で済んでラッキーだと思ったのです。しかし奴隷として協力させられていたのであれば、罰は受けなくてはいけないとはいえ、あれほどまでにやられる必要はないはずです。つまりは私の思い違いで必要以上の罰を受けたことに関して謝罪したのです。何か償いをしたいのですが?」
「ヒツヨウナイです。もうツグナいモラいました。キズ、ナオしてくれました。ワタシ、ずっとドレイだったから、ハナすのヘタで、いつもキラわれてました。こんなによくしてモラったのはハジめてです。ウレしい」
傷をポーションで治してもらったのが本当に嬉しかったのか、その笑顔にはよどみや含みは感じられなかった。さっきからの態度や言動を見ても奴隷として相当酷い扱いを受け続けてたんだと思う。そんな少女の言葉にさすがのレーネも少し感じるところがあるみたいで、もどかしいような表情を浮かべていた。
基本的に自分に非があってもギリギリまで謝らないあのレーネがここまで素直に謝ったんだから相当心に来るものがあったんだと思うし反省してるんだと思う、なにせ、レーネから『償いがしたい』なんて言葉が出たことに僕が驚いたぐらいだし(僕に何をしたってあんなこと言わないどころか減刑を求めてくるからね)だからあえて僕がこれ以上追及するのも変だと思ってとりあえずは静観しておこう。
「さてと、間違いも正したところでこれからの話なんだが、あたしはこれから『黒き翼』をとっちめにいくつもりなんだが、あんたらも来るかい?」
「私はユットの従者なので、私はユットについていくだけです」
こう言う時だけ、変に真面目なレーネを見て(というか、従者設定忘れてる人も多いんじゃ?)僕は小さなため息を漏らす。
「勿論行くよ、僕とレーネはね。色々間違えちゃったり逃がしちゃったりした責任もあるし、何より真犯人を見つけて僕自身の汚名を雪ぐためにクエストをやってるわけだからね、今更引けないよ」
「……そうですか、それなら仕方ありません。私としては面倒なのですが仕方ありませんね」
自分のミスを挽回するために絶対行きたかった癖に、キャラに似合わないツンデレ風にそんなことを言うレーネを見て少しだけ可愛いと思ってしまう。
「OK、それじゃあ行こうか」
「エフィさんは『黒き翼』の居場所心当たりあるの?」
「さすがに元リーダーって言ってもわかんないさ、けど、あたしの教えを守ってるならアジトが見つかったとき用に逃げ込める第2のアジトを用意してるはずさ、その場所、知ってるだろ?」
エフィさんが少女にそう聞くと少女は小さく頷く。
「よしっ、それじゃ決まりってことで、早速――」
「えっ、もう行くの? 夜明けを待った方がいいんじゃ?」
夜になるとモンスターの動きも活発になるし、何より道に迷いやすくなってしまう。行き慣れた道ならともかく、おそらく行ったこともない場所に行くことになるので不安になった僕はそう聞いてみる。
「その子が捕まったんだからその子から第2のアジトの場所がバレるかもしれないって奴らは思ってるはずさ、だから今晩は急だったから第2のアジトで休んでるだろうが、明日も使う保証はないわけ、だったら今晩が最も『黒き翼』を捕まえる絶好の機会ってわけさ」
そう言われて納得した。たしかに囚われた少女からどんな情報が引き出されてるかわからない状況なわけで、最悪のことを想定すると少女が知ってる『黒き翼』の情報すべてが流失してる可能性を考えると予備のアジトも危ういと考えるのは普通のことだよね。
こういうことを瞬時に考えつくあたり、この元エフィさんが盗賊団の元リーダーって感じがする。なんて言うか、追っ手に追われるのに慣れてるって言うか、危機察知能力が高いって感じだよね。
そう言うわけで夜道を進む若干の不安はあるけど、少女の案内で元エフィさんと『黒き翼』をもう一度捕まえに行くことになった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
実は6~7月中は週1~2を目標にしていましたがここに来て挫折してしまいました。
気持ちを入れ替えて再度ペースを上げれるようにいたしますので、
これからも見て頂けると嬉しいです。
いつもの事ながら誤字脱字ありましたらご報告のほどよろしくお願いいたします。
ブクマ、高評価、感想いただければより嬉しいです。




