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たまには真面目(シリアス)な話もいいじゃない

前回のあらすじ(簡略版)


『黒き翼』のアジトを襲撃することに成功し

リーダーと思われるダークエルフの少女を確保した

真犯人として連れ帰りこれで一件落着になるはずだったが

何故かダークエルフの少女はボロボロな姿で

ゴミ捨て場に転がっており、その近くにはレーネの姿があった・・・


ステータス画面『ユーネスト』

総合魔術レベル22

チャームレベル20

ファレムレベル5

筋力レベル5

俊敏性レベル5

その他1

ステータス画面『レーネ』

レベル???


「まさか、尾行されているとは思いませんでした。いくら酔っていたとは言え、ユットの隠密レベルは1なのに、気がつかないとは……少し反省しないといけませんね」

「そんなことはどうでもいいでしょ! なんでその子がこんな姿になってこんなところに」

「わかりませんか? 私たちがこの子を被害者たちに引き渡したからですよ?」

「ど、どういうこと? 被害者に引き渡したらどうしてこんなことに……被害者の人たちから憲兵に引き渡されるはずじゃ」

「憲兵に引き渡したところでこの子が今まで働いた悪事の被害額を払えるわけがないですからね。それにこの町や世界の鉄則として『自分の身は自分で守る』ですから法治国家みたいな感じじゃないのですよ。勿論最低限の法はありますけど、そんなものに委ねるのではなく、自らの手で裁きを与えようとするのがこの世界の住人のスタンダードなのですよ」

「それじゃあ、あの人たちがやったって言うの? そんなわけないでしょ、あの人たち、すごくいい人そうだったじゃない、こうして僕たちにご飯だってご馳走してくれてるんだし」

 被害者の人たちは僕たちにすごく感謝してたし、中には泣いてる人だっていた。そんな人たちが少女をこんな風にするなんて信じられない。

「被害者たちは程度の差こそあれ、『黒き翼』に金品を盗まれていました。中には盗まれた際抵抗し、傷を負った者もいれば、金品を盗まれ破産した人もいます。つまりはあの人たちは良い人そうに見えましたし、中には感謝のあまり涙を流す人もいましたが、それは憎き『黒き翼』から金品を取り返して来てくれた私たちに向けての顔、この子に向ける顔が私たちと同じはずがないのは当然です」

「それじゃあ、……レーネはわかってたの、こうなるってことを、この子を引き渡したらこうなるってことをわかったって言うの? 答えてよ」

 僕はそう言いながらも願った、否定してほしいって、レーネは酷い事をいっぱいしてきたけど、でも本当のところは優しくて気遣いも出来るんだって信じてたから、本当のクズじゃないって信じてたから。

「はい、知っていましたよ。まぁ、殺されずにいたのはラッキーでしたね、それにこれくらいの年齢の娘だと乱暴もされていな――」

 無意識だったと思う、今までこんなに頭に血が上ったことなんてないんじゃないかってくらい、それで考えもなしに感情に任せてレーネの腕を思いっきり握ってしまった。

「ふざけないでよ! いつもみたいに笑って済ませられることじゃないよ! こんな子供がボコボコにされて殺されるかもしれないってわかってたのに引き渡したなんて、それじゃあ加害者に協力したのと同じじゃない!」

「そうですよ。この状況になるのに協力したのも同じです。ですが、よく考えてみてください、私たちはクエストを受注したのです、であれば、その依頼に応える、その結果がこれです。これは仕事なのですから」

「これが仕事? こんな小さい子をボコボコにすることに協力することが? ふざけないでよ」

「ふざけていませんよ。……どうやらユットは少し冷静さを欠いているようなのでわかりやすく説明します。今回の諸悪の根源は誰ですか?」

「それは、『黒き翼』でしょ?」

「そうです『黒き翼』が放火を行わなければ今回のクエストは存在しません、ところでユット、放火や窃盗は悪ですか?」

「そりゃあ、勿論悪なんでしょ? この世界でも憲兵に連れて行かれるレベルの」

「ええ、そうです。普通に犯罪です。では、聞きます。その犯罪を行う『黒き翼』に居たこの子は無罪なのでしょうか?」

「それは……、たしかに無罪ってわけにはいかないかもしれないけど、きっとこの子だって、何か事情があったんでしょ、窃盗とか放火をしないと生きていけないとか」

「たしかにその可能性は高いと思います。この幼さで差別の対象であるダークエルフともなればまともに生きる方が難しいでしょう。しかし、だからと言ってそれが許されるとでも? 生きるためなら犯罪を行ってもいいと?」

「しょ、しょうがないでしょ、こんな幼い子が普通に働くのも難しそうだし」

「この地域、そしてこの町は比較的治安がいいとはいえ、言ったはずですこの世界は『自分のことは自分で守る』のが基本です。そんな世界でそんな理由は通じません、それにユットはそれを言ってはいけないと思います」

「そりゃあ、僕だって生活のためのお金を稼ぐために色々やったけど、でも……」

「それじゃないですよ。もう忘れたのですか? 『ユーネスト』のことを」

 その時、僕はハッとした。幼い体のまま暗い路地裏で餓死してしまったユーネストのことを思い出す。

「ユットは生きるためには犯罪を行っても仕方がないと言いましたが、ユットのその体の元の主、ユーネストは同じような環境の中、犯罪を行わずにその若さで餓死をしました。私はこれを気高いと思い素直に敬意を表します。ユットはどう思いますか? そしてユットが同じ立場ならどうしますか?」

「僕は……」

 たぶん、ユーネストと同じだろう、きっと僕だって同じことをする。人に恨まれるぐらいの犯罪を行ってまで生きる位なら死んだほうがマシだって、きっとその時が来たら思う、それでもその先の言葉が出なかった。

「つまりは何が言いたいかと言えば、たしかにこの娘はダークエルフとして可哀想な境遇にあったのかもしれません、それでもやってはいけないことをやった。やらないと言う選択肢があったにも関わらず、やってしまったのならその罪を償わなければならないと言う訳です。それにこの娘もわかっていたはずですよ。縄で縛っていた時も抵抗しなかったですし、この怪我の感じから見ても抵抗しなかったのでしょう。いずれズルをした自分に報いがくることを覚悟していたのでしょう」

「それじゃあ……、レーネはどうなの? 自分がこの子の立場だったらどうするの?」

「それは勿論、盗賊団にも入りますし窃盗でも何でもして生きようとするでしょうね」

「だったら!」

「ええ、だからさすがの私でも見捨てられなかったと言う訳です」

 その言葉の意味がわからず問い直そうとした時、女の子の体がキラキラと輝き始めた。

「ようやく、ポーションが効いて来ましたか」

「ポーション? もしかして、レーネがここに来たのって、この娘を治療するため?」

「パーティーの中に被害者たちもいましたでしょ? だから聞いたのです。『引き渡したあの娘どうしましたか』と、そうしたらここに捨てたと言うのでなけなしのジェニーを使って薬屋でポーションを買って、ユットに話しかけられる前に使用していたのです。思っていたより傷が深かったせいでポーションを3つも使ったのに効果が出るまでかなり遅かったですが、もうこれで死ぬことはないでしょうし、欠損個所もなければ後遺症もないはず」

「……ごめん」

 心から思った言葉が素直に口に出た。

 今回のことに関して言えば僕が間違ってた。幼い女の子という見た目、ダークエルフという境遇に騙されてた。

 だってそうでしょ、もしこの子が幼い女の子じゃなく普通のおっさんとかだったら? オークとかみたいなモンスターだったら? そう考えたらこの子のやってたことがこれだけの報いを受けるべきものだったって冷静に考えられる。むしろ被害を考えればレーネが言った通り殺されなくてラッキーだったって思える。

「良いのですよ、きっと私のほうが変わっているのですから、……なにせ私は絶滅危惧種がたくさんいるにも関わらず、その中で人間から見て益のあるものや可愛いもの知能が高いからなんて人間たちの主観で増やそうとしたり守ろうとしたりする差別的な人間を見て吐き気がする真の平等博愛主義者なのですからね」

「またそうやって――変な団体から抗議が来そうなこと言うのやめてよね」

 またそうやって、紛らわす。根は良いのにそれを見せようとせずに道化を演じる。格好つけてもいいのにふざけて見せる。レーネと過ごして数か月経つけどようやく容姿以外も褒めれるところが見えてきた。

「いやー、その、なんていうかなぁ。事件解決してめでたしめでたしみたいな、いい雰囲気を作ってるところ悪いんだけどさぁ、そのレーネって言う娘の推理結構外れてんだわ」

 微笑み合う僕らに対して、少し離れた暗がりからそんなことを言いながら現れたのは前までの口調とは全く違うエフィさんだった。



今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字等あればご報告いただけると助かります。

ブクマ、感想、高評価いただけると嬉しいです。

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