真犯人確保?
前回のあらすじ(簡略版)
ギルバーで『黒き翼』の情報を手に入れたユットたち
レーネはその情報からアジトの場所を推理する
その場所にたどり着くとアジトらしい建物があった
『黒き翼』を捕まえるために踏み込もうとした
レーネだったが対襲撃者用トラップが発動して・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル22
チャームレベル20
ファレムレベル5
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
突然だけど、異世界転生したらチート能力を貰って無双する奴って正直どうなのって思ってたけど、実際見てみると何と言うか、爽快と言うか、一言で言えば楽だね。
目を細めて見ている先には盗賊団10人をたった1人で相手してるレーネの姿がある。
端的に説明するとここはレーネの読み通り盗賊団のアジトであの爆発もどうやら盗賊団が仕掛けた襲撃者用のトラップだったみたいなんだけど、聖剣を手に入れた今のレーネにはあの程度の爆発は無意味なようで、無傷のまま巻き上がる煙幕を払い、聖剣も使わず魔弾を込めた拳銃を使ってあれよあれよの内に戦闘不能に追い込んでいく(込める魔力量を対人間用に調整してるから死ぬことはないらしい)ホント、僕の出番何て全くなく暇すぎてこの間に魔術の練習をするぐらい圧倒してるんだよね。
レーネが戦闘に参加できるようになったお陰で僕も魔術の練習に集中できるようになってこうして町の外に出るたびに密かに練習を重ねて魔術レベルが22、ファレムがレベル5にまで成長することが出来てようやく両手くらいの大きさの火の玉を作って敵の飛ばせるようにはなった(まぁ、これでようやく他作品の低級魔術に追いついたレベルだけど)ああ、そんなこんなしてる内に盗賊団は全滅したようで、クエストの内容は放火犯を捕まえることだったけど、僕らの読みだとこの盗賊団が『黒き翼』で農場を放火した犯人なんじゃないかってことなんだけど……レーネは躊躇することなく盗賊団の身ぐるみを剥がして金目の物がないか物色し始めたのでとりあえず止めてみる。
「ちょっとレーネ、なにも身ぐるみまで剥がさなくてもいいでしょ」
「何を言っているのですか、これはRPGの基本ですよ。それよりその恰好似合っていますね」
その恰好と言うのはレーネに手渡された小箱に入っていた黒ぶち眼鏡と赤い蝶ネクタイをつけた僕の姿のことを言っているんだろうけど。
「いや、なんでこのタイミングでこんなのを渡すの(一応つけてみたけど)」
「この放火魔推理シリーズも佳境になっていますし、そろそろ名探偵的な役割として必要になるかと思いまして用意していました」
「だからってなんで眼鏡と蝶ネクタイ?」
「同じショタだからちょうど良くパクろうと思いまして、凄く似合っていますし本物と瓜二つですよ、言ってみてくださいよ、あのセリフ、『見た目は――』の奴ですよ」
「『見た目は子供、頭脳は――』ってやらないよ! と言うかやれないよ! 色んな意味で」
まぁ、本当に見た目は子供で頭脳は大人なんだけど。
「ああ、たしかにユットは頭脳も子供だから――」
「うるさいよ!」
たしかにあんなに頭は良くないし、薬物の味もわからないけどね。
「それより、いつまで剥いだ物を物色してるの? そろそろ本題のほうにいってよね」
眼鏡と蝶ネクタイを外しながらいつまでも金品を漁っているレーネに釘を刺す。
「身ぐるみを剥いではみましたけど、たいしたものがなくて、――と言うか、あんまり見ないでください。見ても良いですけど映さないでくださいね。私の好感度が下がるといけないので」
「大丈夫だよ、この程度で落ちることはない(悪い意味で)」
「そうですか? 下がらないくらいカンストしているってことですよね(良い意味で)」
あの笑顔を見る限りなんか話が噛み合ってないような気もするけど、訂正するのも面倒になってきたから『そうそう、そんな感じ』ってテキトーに返していると、レーネはノビてしまっている盗賊団を起こすとそのまま1人だけ捕まえて後を逃がしてしまう。
「いいの? 逃げちゃうよ? 全員捕まえた方が報酬上がるんじゃないの?」
「いいのですよ、たしかに追加報酬をみすみす逃すのは勿体ないですけど、欲しいですけど、後先のことを考えておくと、これがベストかと」
「ん? どういうこと?」
「例えば海の中に魚が10匹います。お腹が空いたからと言って10匹釣って食べちゃうともうそれで終わりです。しかし、数匹生き残らせればまだ『使える』じゃないですか」
本当にごめんなさい、こんなヒロインで本当にごめんなさい、本当に最低でどうしようもなくてクズと言われても大声で反論できないヒロインですけど、外見だけはいいんで、それと多分、根はいい奴なんです。だからあんなことを平然と真顔で言ってしまうヒロインですけどどうか見捨てないで上げてくださいよろしくお願いします。
盗賊団を一網打尽にすれば今後新しい盗賊団が生まれない限りは、同じようなクエストが掲示されることはない、だけど、ここで盗賊団を逃がせば近いうちにまた盗みを働き同じようなクエストが掲示され受注することが出来て報酬を手に入れることが出来る、つまり、盗賊団を逃がし悪事を働いてもらうためにあえて逃がしたと言う訳だ。それを理解した僕に出来ることはレーネの代わりに謝るしかない。
「(盗賊団から装飾品などを略奪するだけじゃなく、自分の利益のため平気で盗賊団を逃がす、……このままだと史上最低のヒロインが生まれるんじゃないかって不安になってきた)そろそろリストラも検討しないと」
「ん? 今、聞き捨てならないことを言いませんでしたか?」
「大丈夫、気にしないで、それでなんでその女子だけ捕まえたの? 誰でもよかったの」
「違いますよ、忘れたのですかユットが放火犯だと疑われた理由を」
「ん? 火属性の魔術を使えるからでしょ?」
「それだけじゃないですよ、目撃証言の中に『子供の姿を犯行現場で見た』って証言があったからです。そしてこの少女、ボロ布を纏ってこんな如何にもモブそうな普通の町娘みたいな姿をしていますけど、――解きなさい」
好感度とか気にしてる割にはこんな小学生ぐらいの女の子のこめかみに躊躇なく拳銃を押し付けると、少女の容姿が変わっていき、髪の色が黒から紫へ、肌の色も色白から褐色に変わり耳もエルフのように変化した。
「これって、もしかして」
「ええ、ダークエルフですよ。ダークエルフはこの世界では昔から差別の対象なんですよ、最近はその差別も減ってきたとはいえ、自己防衛のためにダークエルフのほとんどは変化の魔術を使って容姿を変えていると聞いています。そして、『黒き翼』のリーダーは――」
「ダークエルフ!!」
「そういうことです。こんな服装をしているのも姿を変えていたのも自分がリーダーと気づかれないようにするためでしょう、大方どこかのお偉いさんに恨みでも買って自分が死んで『黒き翼』は解散したように見せかけたのでしょう」
「それじゃあ、この子が『黒き翼』のリーダーで今回の放火の主犯ってこと?」
「そう思ったので『この子を大人しく引き渡せば他は見逃す』と言ったわけです」
僕の知らないところでそんなやり取りがあったんだ。
「でも、よくその子がダークエルフだってわかったね」
「対魔術スキルレベルが高ければ、自分のレベルより低い変化や偽装ぐらいは見抜けますよ。この子の変化のレベルは結構低いですから。あとはこの子が自供してくれればいいのですが、さっきから一言も喋らない様子からして話す気はないのでしょうし、ここからは私たちの仕事ではないですからさっさと引き渡しちゃいましょう」
いくら相手が『黒き翼』のリーダーとは言え、ボロ布に身を包む10歳くらいの見た目の女の子を捕縛用に持ってきた縄で縛りながら言うんだもんなぁ、あの子の顔はすでに絶望感に満ちた表情をしてて、それも目に入ってるはずなのにお構いなしだもん。
絵面がただの奴隷商にしか見えない。
ともあれ、町に帰り放火犯の正体を掴んだってレーネは得意げに語りダークエルフの少女を被害者たちに差し出すとすごく感謝された。『黒き翼』は街の人たちにも人気があったから一部では残念そうな顔をしてる人もいたけど、それ以上に過去に『黒き翼』の被害にあった人たちも駆けつけてきて『是非ともお礼がしたい』って言われてその日の夜にお金持ちの人たちが会食してそうな場所に連れて来られ『好きに飲み食いしてもいい』って言われ、大勢のお金持ちそうな人(農場のオーナーとかもいた)たちに混じり『黒き翼』のリーダー逮捕と放火犯逮捕を祝してパーティーが始まった。
タダで美味しいご飯が食べれて幸せなんだけど、少し前からレーネの姿が見えない、いつもならタダ酒、タダ飯を誰よりも多く食べて誰よりも長く楽しんでいるはずなのにおかしい。
レーネに限って食べ過ぎ、飲み過ぎで吐いたりはしてないと思うけど、一応周辺でも探してみた方がいいか、なんかよくないことをしようとしてたら阻止しないといけないし。
そう思って会場から外へ出て周辺を探してると、薬屋から出てくるレーネを見つけた。
なんで薬屋から出てきたんだろ? クエスト中は怪我とかしてないはずだけど、やっぱり飲み過ぎとかで胃薬かな? まぁ、そんなことだろうと思ったけど……、でも、なんというかその割には真剣な顔つきと言うか、シリアス感のある表情に僕は少し興味を惹かれ少しだけ尾行することにした。
街灯もあまりない、町の中でも外れと言うか、治安のよくないエリアと言えばわかるかな、こんなところに一体何の用があるんだろうって思いながらこっそり後をつけてると、ゴミ捨て場の前で立ち止まる。そこでようやく察した。ああ、なるほど、たしかに聞いたことがある、酔っぱらうとゴミ捨て場で寝る人がいるってことを、レーネも結構飲んでたからなぁ、なんというか、ベタと言うか、ここまで引っ張ってそれかぁ。
そんな風に思って馬鹿らしくなり、尾行を止めて戻ろうとしたとき、ゴミ捨て場に向かってレーネはしゃがみこみ何かをしているのが見え、なんだろうと思い、少し近づいてゴミ捨て場の中を見てみるとそこには被害者たちに引き渡したダークエルフの少女が傷だらけの状態で倒れていた。
「レーネ!? それ、その子……」
尾行していたのを忘れるほど驚いて思わずそう声を掛けると、レーネはため息を1つ吐いた・・・。
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