エフィの証言と新たな容疑者
前回のあらすじ(簡略版)
無駄遣いがバレたレーネはしばらくの間食事を水にすると言われる
それが嫌なら交換条件として真犯人の手がかりを見つけるように言われる
本気になったレーネは探知魔術を使い怪しい人物を見つける
怪しい人物に向けて石を投げ命中、木の上から落ちて来たお姉さんを
犯人だと言い、推理を披露したのだったが・・・
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル15
チャームレベル20
ファレムレベル3
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
「違います! 私は犯人なんかじゃありません。むしろその逆です。私はこんなことをした犯人を捜しているんで――ッツ」
反論して立ち上がろうとしたお姉さんは小さな声で痛がると痛めた足を手で押えてうずくまってしまう。
見た感じ、命に関わるような怪我じゃないのは確かだけど、痛めた個所が赤紫に腫れて、立ち上がれないほどの激痛ということは折れてるかもしれない。
「とにかく、まずは怪我の治療をしてあげようよ。レーネ治癒のポーション持ってるでしょ、使ってあげて」
「何を言っているのですか? 治癒のポーションは万が一のために買った物ですよ、しかも3つセットで1万もするのですよ、それを怪しい人間に使えませんよ。それに好都合じゃないですか、足を怪我したのなら簡単には逃げられないでしょうし」
人を怪我させておいてこの態度ですよこのヒロインは。まぁ、レーネからすればこのお姉さんを犯人だと思ってるからこの態度で正しいのかもしれないけど。
「いいから使ってあげて。それに足が治ったってレーネが居ればお姉さんを逃がしたりしないでしょ」
渋々と言った様子でレーネは自分のステータス画面からアイテムを選択し治癒のポーションを選び取り出してお姉さんに使う。
「――ありがとう、痛みが引いたわ」
「よかった。さっきの話だけど、犯人を捜してるって言ってたけど、お姉さんもクエストを受けた冒険者なの?」
「冒険者ではあるけど、クエストは受けてないわ」
「だったら何故放火犯を捜しているのですか? 関係者とか?」
ゆっくりと立ち上がるお姉さんをレーネは警戒心むき出しで睨みながらそう聞いた。
「違うわ、私の目的はこの放火を行ったであろう『連中』を捜すことなの」
「『連中』ってことはお姉さんには犯人の心当たりがあるんですね!?」
「ええ、『黒き翼』って言う盗賊団です。間違いありません」
「どうしてそう言いきれるのですか? なにか決定的な証拠でもあるのですか?」
「最近不審火が各地で相次ぎ発生しているのをご存知ですか?」
僕とレーネは顔を見合わせ互いに心当たりがないことを確認し、首を横に振るとお姉さんが再び話し出す。
「不審火が確認された現場のほとんどで火事場泥棒が行われていました。それと同時期に『黒き翼』が復活したとの噂が流れてきました。私はもしやと思い関連性を調べた結果、火事場泥棒が行われた場所で使われた魔術の痕跡が全て一致していました。つまりは同一犯の仕業であるということです。私は以前『黒き翼』が魔術を使うところを見たことがありその際に使っていた火属性魔術と放火現場に残っていた魔術の痕跡が同じでしたので間違いありません。私は『黒き翼』を捕まえこんなことを止めさせたいんです。ここにいたのも放火を聞きつけ『黒き翼』の仕業だと思い、残された痕跡を解析するために解析魔術を展開していたからです」
なるほど、不審火があったそれぞれの現場に残っていた『火属性魔術の痕跡』=『黒き翼』の使ってた『火属性魔術』=この放火現場に残された『魔術痕跡』=今回の放火の犯人は『黒き翼』になるわけか。
「だとしても今の今まで掛かるわけないと思うのですが?」
「解析魔術は探知魔術と違い結果が出るまでに時間が掛かる魔術です。試行回数も多かったので今日まで掛かっていただけです。そんなことも知らないのに私を犯人扱いして石を投げてきてあげく怪我をさせているのに謝らないなんてどうかしてます」
「あなたの言っていることが正しいかどうかわからないこの状況で全てを鵜呑みには出来ませんから。それに私の読み通り犯人なら謝るどころか大手柄なわけですし」
お互いに睨み合う2人から一触即発の雰囲気を感じた僕はとりあえず、2人の間に入って諌めようとしてみる。
「とりあえず落ち着いて、まずはレーネ、お姉さんが犯人だって証拠もないのに怪我をさせたのは事実なんだからそんな攻撃的な態度取らないで」
そう言うとレーネは少し口を尖らせて面白くないような顔をする。
「ごめんなさいお姉さん、レーネも悪気があってやったわけじゃないので」
「少年君が謝ることじゃないですよ」
「そうですよ、ユットが謝ることなんてないですよ」
「レーネは黙ってて、えっとですね、僕たちはここを放火した犯人を捜してるんです。同じ目的みたいだし、もしよければ一緒に捜しませんか?」
「それは駄目ですよユット、そんな怪しい女と一緒に行動なんて出来ません」
「ちょ、レーネ――」
「随分と嫌われているようですね。しかし私も今は誰とも組むことは出来ません。ただ有益な情報を得たらお互いに交換し合うぐらいなら協力できます、これが私の泊っている宿の部屋番ですので何かあればどうぞ」
お姉さんは小さな紙を取り出して自分の宿泊先を走り書きしたものを僕に手渡そうとしたとき、僕はレーネに引っ張られ、お姉さんとの距離が開く。
「いきなり何するのレーネ!?」
「そんなもの必要ありません。真犯人探しは私たちで十分ですので」
いつものふざけた感じではなく警戒した様子でお姉さんから一瞬たりとも目を離さずにそう突き放した。
「……そうですか、それでは私はこれから解析魔術の続きを行いますので、ああ、名乗るのを忘れていましたね、私の名前は『エフィ』と言います。それではユット、また縁があれば会いましょう」
エフィさんが木に登ったのを見届けたレーネは僕の腕を掴み、急ぎ足でその場から離れ始める。
「ちょっとレーネさっきの態度はなんなの? さすがに酷すぎるんじゃない?」
「ユット、これは教訓として覚えておいてほしいのですがどんなに優しそうな外見でも柔らかな口調でも女と言う生き物は息を吐くように嘘をつく生き物なのです」
「えっ、それじゃあ、エフィさんの言ってたことはほとんど嘘ってこと?」
「逆ですほとんど真実を言っているのです。ああいう女が1番厄介なのですよ、9割の真実に1割の嘘を平然と混ぜることに慣れている女は。私の1番嫌いなタイプですし、魔術レベルも高くあの様子ならステータスも高いでしょう、警戒すべき相手です」
その言葉はいつになく真剣と言うか、誰か特定の人を思い浮かべながら話してるみたいで、少し苛つきと言うか『嫌い』って言う言葉に力がこもっていたように聞こえる。
「それじゃあ、一緒に行動しなかったのも僕を遠ざけたのも全部意味があるってこと?」
「あの手の女は目的を遂行するためなら手段を選ばないタイプですのでそんな女と行動してもこっちが利用されるだけでメリットがありません。ユットを遠ざけたのも触れることで使用できる魔術があるからですよ。例えば追跡魔術とか黒魔術で言えば呪い関係とかも対象に触れることが条件であることが多いのです。警戒しておくに越したことはありません」
てっきり犯人と決めつけてたからとか気に食わないとかそんな安直な理由であんな態度を取ってたと思ってたけど、そこまでちゃんと考えてたことに正直驚きながらもそう言われると納得する。
「レーネは僕を守るためにあんな態度を取ってたってこと?」
「――私がユットを守らなかったことがありますか?」
レーネは決め顔でそう言った。
「普通にあるけど」
僕も当然そう返す。
決め台詞を言ったみたいにドヤ顔のところ申し訳ないけど心当たりが多すぎて普通に突っ込んでしまった。でも、食事がかかってるせいか珍しく本気モードと言うかやればできる子のやってる状態と言えばいいかな? 何回か見たことあるけど、こういう時のレーネは頼もしい。ずっとこの状態なら助かるんだけど、……無理だろうなぁ。
長くは続かないであろう頼もしいレーネの背中を追いながら小さなため息が出てしまうのだった。
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