銀髪灰眼(残念系)美少女との出会い
前回のあらすじ(簡略版)
女神代行の秩序守護者として異世界転生することになった
与えられた新しい体はショタで『ユーネスト』と言う名前でこれから生きていくことになる
異世界の情報を集めるため女神が言っていた『あの娘』と言われる人物を探し出したけど
『あの娘』は美少女にもかかわらず、口の回りをトマトソースまみれにしている残念系だったとさ。
「なんだチミは、ってか? そうです、私が例の『あの娘』です」
「いや、急に変なおじさん的な口調で言われても」
顔は良いのになぁと目の前の小柄(僕より少し大きいぐらい)な美少女を見ながら僕は落胆する。
大食い会場をあとにした僕たちはあれから町の大通りまで移動し、お互いの状況を確認し合っていた。
「それでレーネはなんで大食い大会になんて出てたの?」
この銀髪灰眼の美少女は、『レーネ・ノムス』と言って、信じられないかもしれないけど、この端麗な容姿にもかかわらずあの女神様の娘だそうだ、少し前にこの異世界の異変に気づいた女神様が様子見として、この『トダース』の町に派遣したのがこのレーネらしい。
「勿論、お腹が空いていたからですよ。3日間何も食べていませんでしたから」
「お金、持ってないの?」
「ああ、母からいくらか貰いましたが、基本的には現地調達するように言われていまして観光のほうを」
「ああ、観光案内的な仕事をしてたってこと? (女神様の娘なのに世知辛いな)」
「いえ、普通に観光していました」
「……それって、ただ遊んでいただけでは?」
「……例えそうだとしても過ぎたことを言っても仕方がないではありませんか? 私たちに必要なのはこれからどうするか、ということです」
いいこと言った風にドヤ顔を向けてくる。まぁ、わかってはいたけど、こいつは駄目な奴なのだろう、そんな予感はしてた。
「それで、僕はこの異世界で一体なにをすればいいんだ? 秩序守護なんて、漠然とし過ぎてよくわからないんだけど」
「そこからですか? まぁ、話してもいいですが、色々説明チックになってしまいますし、そもそもそんなに求められてないように感じますから簡単に説明しますと、この世界にはマナと言う不思議な物質が存在し、それが一定数あれば世界は安定します。それが何らかのせいでバランスが崩れ始めています。なので、私たちはその原因を特定し駆除するのが役目です。以上」
「随分とフワフワした説明だけど、つまるところ僕はそのバランスを崩している原因を見つけないといけないってわけだね」
「ええ、そのために必要なのは戦闘能力の向上ですね。察していると思いますが魔術結界で守られている町の外はモンスターもいますので能力が低いと色々見て回れませんから」
「それじゃあ、武器や防具を買って装備して、それを使えるように訓練するって感じ?」
「それは無理ですね、私はお金を持っていませんし、ユーネスト……長いですね、あだ名でもつけましょう」
「あー、それはいいね、僕もユーネストは確かに長いと思っていたんだ」
「それじゃあ、『ユ』で」
「略しすぎだろ! ユってなんだよ! むしろ呼びにくいだろ」
「なるべく短いほうが良いと思ったのですが、それじゃあ、『ネス』とかはどうです?」
「え、『ネス』かぁ、(その名前を聞くと某有名キャラクターを連想してしまうんだけど、まぁ、僕が気にし過ぎてるだけだよな、『ネス』なんて結構いそうだし)」
「気にいりませんか? 今なら特別に赤い野球帽とバットがセットで――」
「はい、アウトォ! (と言うかそれどこから出した!?)」
「ん? どこが駄目なのですか?」
「全部だよ! ショタの見た目の僕がその恰好をして『ネス』って呼ばれるのはマズイに決まってるだろ!」
「文句ばっかり言って、もう勝手にしなさい」
「なんで急にお母さん口調なんだよ、普通に『ユーネ』とかじゃ、駄目なの?」
「駄目に決まっています、『ユーネ』だと私と被りますから、たった二人のパーティーでキャラ被りとか、周りからせせら笑われますよ――今気づいたんですけど、『せせら笑われる』って言いづらいですよね?」
「いや、それこそどうでもいいよ! と言うか、言う程でもないよ」
「全く、困りましたね、それじゃあ『ネス』が嫌いなら――」
「その言い方は語弊を招くからやめて」
「『ユート』とか――いえ、それだと普通過ぎますね」
なんで、ユートなんだろうと一瞬考えた結果、多分だけど、ネスが嫌いだからユーネストからネスを引いてユートってことだと思う、って別にネスが嫌いなわけじゃないんだけど、まぁ、ここでツッコんでもしょうがないか。
「決めました『ユット』っで、どうですか?」
「なんか、ヨットっぽくない?」
「いいじゃないですか、これから異世界ファンタジーと言う名の大海原を航海していくということで、それに正直これ以上考えるのは面倒になってきたので」
「うん、それは薄々感じてはいたけど、そう言うのは括弧内で言うべきだと思うよ」
「それでは、話を戻しましてユットは見た感じお金を持っていませんよね?」
「ん? ああ、そうみたいだ。なんでもこの体は餓死した体らしいし、お金なんて持ってるわけないよ」
「なるほど、そうなると初動としては金銭の確保と魔術のレベル上げを中心にやっていくのが良いですね」
「魔術? この体、魔術使えるの?」
「元々は使えなかったはずですけど、転生した際に母からギフトとして魔術などの才能を与えられたはずですので」
「ああ、つまりはチート的な力って奴だな、それってどうやって見れるんだ?」
「このように指を鳴らせば、MMORPGでよく見るような近未来感あふれる画面が目の前に現れます」
「ああ、なるほど、ん? あれ? んっと、……音鳴らないんだけど」
レーネの真似をして指を鳴らそうとしたけど、音が鳴らずレーネの顔を見上げると、レーネは両手で自分の顔を覆い隠している。
「一応立場上とはいえ、私はユットを手助けする身、上下があるなら私が下ですが、あえて言わせてもらいますと、――可愛い! 指を必死で鳴らそうとして音が出ない美少年はあざと可愛いですね、狙ってます?」
「狙ってないよ! もう、こっちは真剣なんだよ」
「(拗ねながら怒るのも可愛い)コホン、まぁ、指が鳴らないなら普通に両手を合わせるようにして音を出せばいいんですよ、それでも出ますから、あっ、心配知りませんよ、等価交換は必要ありませんので」
「もう、そう言うのは良いから! なんかネタを挟まないと死ぬ病気かなんかなの!?」
とりあえず、レーネの言う通りにしてみると、ちゃんとステータス画面のようなものが出てきたんだけど、魔術の項目がレベル1で1つの魔術しか修得していないようで思っていたのと違う。
「これ、どう見てもチート的な力があるとは思えないんだけど」
「どれどれ、あーなるほど、これは、十分チート的な力ですよ。これですよ、これ、スキルのところ、スキル名【努力は裏切らない】ですね、簡単に言えば上限突破と言えばわかりますか?」
「いや、わからないけど」
「この世界には魔術を使える人種はそれなりにいますが、誰しも才能と言う名の上限が存在します。ユットにわかりやすく説明するならテストの点数でしょうか、普通テストは100点満点ですが、生まれた時から最大点数が人によって違うんです、90点の人もいれば30点の人もいる、それまでは努力でどうにでもなりますが、それ以上は『どうにもならないんです』」
「つまり30点の人は90点の人に勝てないってこと?」
「90点の人が31点分以上の努力をすれば理屈の上では勝てませんね、ユットの場合は【努力は裏切らない】のお陰で上限が存在しないので、努力すればするだけレベルが上がりますから誰にでも勝てるようになります、逆に努力しなければ誰にも勝てないということですね」
「なるほど、(まぁ、こういう努力と言うかコツコツレベル上げみたいなのも別に嫌なわけじゃないけど)何と言うか今時じゃないよね」
「ええ、まぁ、母は先輩からのパワハラを『可愛がり』と言う世代なので、今の時世と言うものを理解していないようです」
「『何が』とは言わないけど、付いて来てくれるか心配になってきたね」
「『何が』とは言いませんけど、ここで切られないか心配ですね」
色んな意味で心配になって目を細め遠くを見る僕らだったが、このまま呆けていても仕方ないのでとりあえず、レーネの当初の方針通り唯一覚えている魔術を鍛えることにした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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これからもよろしくお願いします。