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真実はいつもひとつ

前回のあらすじ(簡略版)


レーネを気遣ってたまには好きに呑んで食べてもらおうと思い

居酒屋へと連れて行き、酔っぱらった可愛いレーネにウザ絡みをされつつも

トイレに逃げ込んだユットは優しそうなお姉さんと思わぬ遭遇をしてしまう

事なきを終え、酔っぱらったレーネを宿までなんとか連れて帰り

その後もからかわれつつもようやく一日を終えた・・・



ステータス画面『ユーネスト』

総合魔術レベル15

チャームレベル20

ファレムレベル3

筋力レベル5

俊敏性レベル5

その他1

ステータス画面『レーネ』

レベル???


 色々とあって久しぶりに内容の濃い1日を送った翌日の朝、僕とレーネはいつものようにクエストを受注するためにギルバーに向かっていると街の至る所がザワついていると言うか、物々しい雰囲気なっていて、気になりながらもギルバーに着くと、マスターが掲示板の前でため息を吐いていた。

「マスター? どうかしたの?」

「あっ、ユットちゃん!? あー、その、ワタシは信じてるわっ」

 僕の顔を見るや否やそう言われ、サッとバーカウンターの奥に引っ込んで行ってしまった。僕の頭の上には恐らく???が浮かんでいるだろう。

 レーネと顔を見合わせ互いに思い当たる節が無く首を捻る。

 とにかく、マスターが立っていたところには依頼書が張ってあるようだったのでとりあえず読んでみることにする。

「なになに、『昨日の夜中郊外にあるトダース・ファームが荒らされた。育てていた作物が盗まれたのは勿論のこと、畑を燃やし、その炎が住み込みで働いていた宿舎に引火、幸い死者は出なかったが、今年の作物は絶望的で住む場所さえも奪われた農家の方々が可哀想でならない。これは町からの依頼となる。何としても作物を奪い畑や宿舎を焼き払った極悪人を捕まえてほしい。報酬は10万ジェニー、期限は無期限』って、10万は凄いね! 農家の人たちも可哀想だし、僕たちもこのクエストに参加しようよ……ん? どうしたのレーネ? 固まってるけど」

 10万ジェニーと言う報酬を見て大喜びしてるんじゃないかって思って横を見たけど、何故か脂汗をたらしながらワナワナと震えている。

「えっ、まさかとは思うけど――」

「ユット、私犯人に心当たりがあるのですけど」

「ねぇ、まさかとは思うけど、違うよね、いくらレーネがトラブルメーカーだからってさすがにこれは違うよね?」

「さすがにこれは違いますよ、と言うよりそろそろその芝居は止めませんか、ユット」

「えっ? 芝居? なんのこと?」

「とぼけないで下さい、この畑荒らしの犯人はユットなのでしょう?」

「ち、違うよ、僕がそんなことするわけないでしょ、それに昨日はレーネと一緒に居たでしょ」

「部屋についたところまでは私も記憶はありますが、実は酔っていたせいか、その後の記憶がほとんどないのです。つまりその後ユットにはアリバイがないという訳です」

「いやいや、普通に宿の部屋に居たよ。レーネと居たって」

「その証拠はないはずです。おかしいとは思っていたのです。普段からケチなユットがあんなにお酒を呑ませてくれるだなんて、このためだったのですね。私を酔わせ眠らせ、その間に畑に向かったと」

「それはないって、大体僕にはそんなことをする動機が――」

「たしか、ステータスレベルの欄に『採取』という項目があったはずです、採取レベルを上げるためにこのようなことを」

「そんなことのためにこんな大袈裟なことしないって、それに僕のステータス画面を見てよ、『採取』の欄はレベル1のままだよ」

「それはそうですよ、採取レベルを上げるには町の外の物を手に入れなければ上がりませんから、ユットはそのことを知らないはず、だからやってしまったのですよね?」

「違うってばっ、百歩譲って仮にそれが動機だとしたら僕以外にも容疑者がいるでしょ? なんで真っ先に僕なのさ」

「犯人は放火をしています」

「だから?」

「ユットは火属性魔術の【ファレム】を使えますよね?」

「……いや、使えるけど、別にあんな低級魔術誰でも使えるんでしょ?」

「いえ、意外とそうでもないのですよ、ちなみに私は使えません」

「えっ、そうなの?」

「そうですよ、普通に魔術を使える人間がそもそもレアですからその中で火属性の魔術を使えるとなればそう多くはない、つまり、ユットは手っ取り早く採取レベルを上げようと今回の犯行を行ったが、レベルが上がらず焦り証拠隠滅のため【ファレム】を使い何食わぬ顔で宿へと帰り就寝、そして現在コ〇ン君に追い詰められている犯人のようにキョドっているのです」

「キョドってなんかないって、そんなわけないでしょ、みんなからもレーネに言ってあげてよ」

 名探偵きどりのレーネに呆れながらギルバーに居た他の冒険者たちにそう言ったんだけど、一斉に目を逸らされて冷や汗が流れる。

「えっ、なにこの雰囲気、嫌だなぁ、そんな無理にシリアスな空気出さなくたっていいのに、誰もそんなの望んでないでしょ、ねっ、レーネいつもみたいにふざけたこと言ってもいいんだよ? そんな似合わない真剣で深刻そうな顔しなくても――」

「あくまでもとぼけると言うのですね、自首はしてくれないと、辛いですが仕方ありません、私の口から例の言葉(お約束)を言わなくてはいけないようですね」

 レーネが覚悟を決めたように、息を吸うと同時にギルバーに憲兵が2人入ってくる。

「ユット、犯人は――あなたです!」

 何故か木の扉が閉まる音を口でマネしているレーネ(まぁ、あのCMに入る前の奴をマネてるんだろうけど)を見て変なところで器用だなぁと感心している内に僕は反論の余地を与えてもらえず憲兵に連れていかれてしまう。


 恐らく木の扉がそろそろ開いた頃だろう、僕は現在憲兵たちが駐在している駐屯所(警察署みたいなものと思ってくれればいい)で取り調べを受けている。

 勿論、あの名探偵気取りの馬鹿レーネあっ、ルビが逆だったけど、まぁ、同義語みたいなものだからいいか、レーネの推理によって連行されたわけではなく、ギルバーの様子からしてもどうやら僕を疑う声が多かったようで事情聴取として連行されたようだ。

 物乞いをしていたほどお金がなく、食費を切り詰め、火属性魔術が使え、アリバイがない、こうしてみるとたしかに疑われても仕方ないのかもしれないとは思うけど、思ったより自己評価と周りからの評価に差があるようことが今回わかり、普通にショックなんだけど。

 現にギルバーでは誰も庇ってくれなかったし、唯一マスターが『信じてるからぁ』と連行されていく息子を見送る母親みたいな感じを出してたけど、それ以外は完全に見ない振りをしてた、勿論レーネもね、それどころか共犯かどうか疑われそうになったらむしろ無関係を強調してたぐらいだし。

 まぁ、レーネらしいと言えばらしいけど、少しぐらいは庇ってくれてもいいと思うのは僕だけなのかな。

 捕まってから2日過ぎた頃ようやくレーネが面会に来たらしく、憲兵に連れられて面会室にやって来ると憲兵が扉の前に立ち僕はガラス越しのレーネの前に座ったはいいけど、何故か若干興奮してる様子のレーネの姿に疑問符が頭の上につく。

「ユット、見て来ましたよ放火現場を、いやぁ、派手にやりましたね。あの規模を焼き払うなんてやる時はやるのですね、もうあそこまでくると壮観と言うべきですね。それにしてもあのオーナーの泣きっ面は、最――じゃなくて可哀想でしたよ。いくら気に食わなかったとは言えやり過ぎは良くないですよ」

 明らかに『最高でした』って言いたかったんだろうけど、チラッと憲兵が目に入ったのか冷静になって言い直したのがわかる。レーネの性格上多分だけど、人の不幸は蜜の味って感じだから気に入らなかったオーナーさんの不幸をその眼で見てきて興奮してるんだろうね。

「(ホント、どうしようもないヒロインだよね)だから僕じゃないって、レーネからも憲兵さんたちに釈明して、僕をここから出してよ」

「私もユットがやってないと信じたいですよ。ですけど、状況的に見て厳しいですよ。町の人たちにも事情聴取がされているみたいですけど、ユットより有力な容疑者は出てないみたいですし、何より証言の中には『子供の姿』を見たって人が出て来ています。しかも、その人はユットが捕まっていることを知らない人のようでしたから、状況的にユットが黒ってことで決まりそうですね」

「そんな諦めたみたいなこと言わないでよ、もっと頑張って疑いを晴らしてくれないの?」

「現場を見て来た感じですが、とてもじゃないですけど、魔術も使えない1人が油を撒いて火を点けたとは考えにくい規模ですからね、それに正直メンド――じゃなくて、私は弁護士的なスキルを持っているわけではないですし、当然資格も持っていないですから素人の私が下手に介入しないほうがいいと思っています」

 このヒロイン、僕が疑われてこんなところに入れられているのに助けようとしないばかりか、『面倒くさい』って言いかけたよ。

 こうなったら自分で疑いを晴らすしかないけど、ん? 今のレーネの話が本当ならこれって疑いが晴れるんじゃ。

「……レーネ、そんなに現場の被害は大きかったの?」

「ええ、全焼と言っていいのかわかりませんが、あのオーナーが持っていた畑は全滅でしたよ、少なくとも東〇ドーム3~4個分ぐらいの規模で……」

 どうやらそこでレーネも気づいたらしい、この放火事件で僕が容疑者から外れる理由に。

 皆さんは気づきましたか? 気づいたと思いますけど、一応念のためにヒントを出します。

『ネクストショタズヒント』【ファレム】のレベル。



今回もここまで読んで頂きありがとうございます。

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