世界一可愛いヒロイン(酔ってはいますが別キャラではありません)
前回のあらすじ(簡略版)
フンを投げつけられたショックも癒えぬまま
受けていたクエスト(街中の農家さんの手伝い)を
達成するため朝早くから夕方遅くまで汗と土にまみれながらも
ようやく終わらせレーネが楽しみにしていた
お酒を呑みにお店へと向かったのだった……。
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル15
チャームレベル20
ファレムレベル3
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
さてさて居酒屋のようなお店にようやくたどり着いて今から夕食にするところ。
本来は節約しないといけない所だけど、さすがに昨日は酷かったし、臨時収入もあったからね(昨日の肉がここら辺では手に入りにくい肉と言うことで24万3000ジェニーと言う高額で売れた)、ちなみに今日の畑仕事を手伝うのは3000ジェニーだった。改めて思うけど、これは誰もやりたがらないわけだよ、絶対労働と報酬が釣り合ってないからね。
昨日のこともあるから、今日ぐらいはたくさん食べて呑んで色々忘れた方がレーネのためになるだろうし、機嫌も良くなるだろうから朝ゴネなくても連れてくるつもりではあったんだけど。
「いいのですね!? 本当にお酒頼んじゃいますよ!? ビール大ジョッキいっちゃいますよ!?」
今日の労働の疲れ、昨日のストレスはどこへ行ったのやら、御覧の通りこっちが引くぐらいテンション爆上げである。まるで普段焼肉店などに連れて行ってもらえない子供が1時間2000円の食べ放題のお肉に興奮しているのと同じように純粋に目を輝かせてる。
「今日は特別だからね」
「あ、ありがとうございますぅ、ユット! 愛していますぅぅ!」
「(ホント現金な奴だよなぁ)ははっ、ありがとう」
乾いた笑いと棒読みの言葉を誤魔化すように僕は目の前に置かれた水を口に含み流し込むと、レーネの注文したビール大ジョッキも到着し、間髪入れずにレーネはそれを一気に飲み干す。
「ぷふぁぁぁ、最高に罪な味ですねぇ!」
嬉しそうな笑顔を浮かべる姿は普通の美少女となんら変わらない『アルコール最高』と言いながらおかわりを注文さえしてなければの話だけど。
イカの炙り焼きにタコのから揚げ、揚げ豆腐にそら豆のニンニク炒め、僕はお酒飲めないし、飲んだこともないけど、このチョイスがおっさんっぽいのだけはわかる。
そんなおつまみと共にお酒を流し込むことすでに1時間、ビール大ジョッキを少なくとも5杯、日本酒をコップに3杯ぐらい飲んだところでようやくほろ酔いといった様子だった。
「ちょ、さすがに飲み過ぎじゃない? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ、大丈夫です。レーネは平気です。酔っていましぇん」
「いや、酔ってるよ! ワザとらしいぐらいベタベタに酔ってるよ、もう呂律が回らなくなってきてるよ、そろそろ帰ろうか?」
そう言って僕が立ち上がろうとすると隣に座ってたレーネは弱々しく僕の袖を引いてくる。
「まだ帰りたくない、もうちょっとだけ、いいですか?」
酔ってるせいか、少し頬を赤らめながら上目づかいでそんなことを言ってくる。
普通に可愛い、何この生き物、普段とのギャップのせいだろうけど、普通のヒロインがやりそうなベタなことをするだけですごい可愛いんですけど、久しぶりレーネの株価が上昇してるんだけど。
「(落ち着け、相手はレーネ、あのレーネだよ、顔面にフンを付けられながら飼い主の目の前でペットを解体して食べるヒロインだよ、気をしっかり持とう)でも、あんまり飲み過ぎると――」
「もっと、ユットと居たいのですぅ、帰りたくないぃ」
可愛く駄々をこねるようにそう言われたので仕方なく『もう少しだけだからね』そう言って折れた僕が席に座ると『しっしし』と嬉しそうに笑う。
ホント、レーネはズルイよ、普段の姿を知らなかったら完全に堕ちてるよ。今だけはどこに出しても恥ずかしくないヒロインだよって思うと同時にこれだけのポテンシャルを持ってるのにどうして普段はアレなんだろうって思いながらジュースでも頼もうかとメニューを広げる。
「それにこんな機会じゃないと、話せないこ事とか、ありますし」
少し真面目なトーンでそう言ったレーネの声に少しおどろいた僕はレーネの方を見ると、そこには悪戯っぽく笑うレーネの顔があり『なんっちゃって』小さく舌を出してそう言っておどけてくる。
ああホント、どうしてこんなにも可愛いのに普段はアレなのかと悔やまれる。
いっそのこと、常に酔わせた状態の方がヒロインとして人気が出るのではと思わなくもない。
「そういえば、昨日の戦いで使ってたのって拳銃だよね?」
レーネの可愛さに一瞬クラっとしてしまいそうになったのでなんとか空気を変えるべく、気になってたけど、あの時は機嫌が良くなかったので聞けなかったことを聞いてみる。
「ええ、そうですよ」
「この世界に拳銃とかあるの? 雰囲気的には剣と魔法の世界って感じだけど?」
「ありませんよぉ、これは母から貰った7つ道具の1つですから、あっ、すいませ~ん、ハイボール濃い目で」
「(まだ呑むんだ)それがあったならなんで今まで使わなかったの?」
「そりゃあ、そうですよぉ。あれは私の魔力で弾を作って撃ち出す奴ですからね、魔力を使えば私の場合お腹が減るので使いたくないわけです。貧困生活でしたから魔力何てぇ、使っていたらぁ、道路で干からびたミミズみたいになっていますよ」
「でも、さっき躊躇なく使ってたけど?」
「だってぇ、もぉ聖剣がありますから、この聖剣は魔力を生み出す剣なのれすよ。その魔力を使って銃弾を作ればお腹は減らないと言うわけなのです(ドヤ顔)」
「(なんでドヤ顔、っく、悔しいけど可愛い、いやいやそれより大分酔いが回ってきたせいで所々口が回ってないよね)なるほど、そう言うこと、じゃあ言い方が間違ってるかもしれないけど、その聖剣って武器として使うわけじゃなくて魔力タンクとして使うってこと?」
「ん~、そう言うわけでもないですね。普通に斬れるし、解体した時も使っていたのを見ていたでしょうからわかると思いますけど、結構切れ味いいのです。だから戦闘にも使えますよ」
そう聖剣を戦闘で使わず、肉の解体に使ってたのを見て、聖剣をそんな使いかたしてるのはレーネだけだよって冷めた目で見てたっけ。
「じゃあ、なんで使わなかったの?」
「重いからです」
「はい?」
「だって、重いじゃないですかぁ、これぇ、普通に5キロはありますよ。こんなの振って戦うより拳銃で撃ったほうが楽ですから、あっ、すみませぇん! 芋焼酎ロックで」
さりげなくまたお酒の注文をするレーネを見て、いつの間にか空になったハイボールのグラスを見ながらまだ呑むのかと呆れる。
聖剣を使わない理由が『重いから』って、思ってたよりしょうもなかったけど、まぁ、レーネらしいと言えばらしいかな。
「もぉ、ユットォ愛していますよぉ」
「レーネが愛してるのはお酒でしょ?」
「そんなことないですよぉ、あっ、そうだユットも呑みましょうよぉ」
「(うわぁ、急にウザイ絡みしてきたよ)ダメに決まってるでしょ、この世界基準でも普通に未成年なんだから」
「いいじゃないですかぁ、ちょっとだけですから、最初は怖いかもしれないですけどぉ、最初だけですからぁ、すぐによくなりますからぁ」
そんな感じでかなり酔っぱらって来たようだったのでとりあえずトイレに逃げる(決して距離感が近くなりすぎて胸とかが当たって恥ずかしくなって逃げ出したわけじゃない)
「全くレーネには困ったもんだよ」
独り言を言いながらトイレのドアを開いて中に入ると美人なお姉さんが使用してた。
色白で明るい茶色の長い髪、穏やかそうな大きな瞳でスラッっとしていながらもレーネよりも大きかった(なにがとは言わないけど)普通に見て個人的な意見だけど、この世界に来てレーネに匹敵(外見だけ)する人に初めて会った。
そんな美人のお姉さんがトイレをしてるところを見られるなんて……ん? いやいや、そうじゃなくて――そうじゃなくて!? えっ!? ドアに鍵掛かってなかったよ!? いやそれよりもなによりも――。
「ご、ごめんなさい!」
とにかく謝ってトイレの外に出た。
こう言う場合って逃げたほうが良いの? もし、痴漢として捕まったら……ヤバイ、人生終了したかも。いや、もしかするとそういう趣味の方で見せたかったってパターンも……ないなぁ、だってお姉さん鳩が豆鉄砲を食ったような顔してたもんなぁ。
逃げた方がいいとわかってもなんと言うか罪悪感から逃げだせず、頭を抱えてドアの近くでうずくまっていたら肩をチョンチョンと突かれる。
ああ、終わったって思いながら顔を上げるとそこにはさっきの美人なお姉さんが居て微笑んでくれていた。
「大丈夫ですよ、そんなに落ち込まないでください。あの鍵、今確認したら壊れてたみたいですから。あなたが悪いわけじゃないですよ」
「そ、そうだったんですか、よかったぁ、でもその、ごめんなさい」
「いえいえ大丈夫ですよ。少しだけ恥ずかしかったですけど」
照れたようにそう言ってくれる姿に申し訳ないと思いペコペコ頭を下げていると『それじゃあねっ』と言われお姉さんは行ってしまう。
僕は用を済まそうとトイレに入りながら大事にならなくてよかったって心底思いつつも逆に大事にならなかった理由を考えると自分がショタだったことを思い出して(ナニで思い出したかは想像にお任せします)これまでショタでよかったことの方がはるかに少なくて嫌だったけど、今回ばかりは助かったよ。
用を済ましトイレから出て席に戻りながら、あんな優しくてスタイル抜群なお姉さんがヒロインだったらなぁとあのお姉さんを思い出して周りの席をチラチラと見て探したけど見つからず、名残惜しみながら席に戻れば『遅いですよぉ、なにしていたのですかぁ、寂しかったですよぉ……あれぇ? 何やら他の女のニオイがしますよぉ、浮気ですかぁ、浮気ですねぇ』ってな感じの面倒な絡みを受けながらもその後なんやかんや言いつつ1時間粘られ、なんとかグテングテンに酔っているレーネに肩を貸しながら宿へ向かっている最中だ。
ちなみに料金は6万3000ジェニー(ほぼレーネ)。
「もう、飲み過ぎだよ、大丈夫?」
「大丈夫ですって、まだまだ呑めましゅからぁ」
まともに真っ直ぐ歩けないどころか喋るのでさえ怪しくなってるのに、なに言ってるんだかって思いながらため息を吐く。
「あっ、この、しちゅえーしょんはぁ、送り狼ですねぇ、もしかして期待していますぅ?」
「僕が期待するのはこのまま吐かずに宿まで歩いてくれることだよ」
「そっけないですねぇ、素直に胸とか揉みたいって言えばいいじゃないですかぁ、考えないこともないですよ?」
「言わないよ、したくもないからね」
「またまたぁ、意地張ってますねぇ、もしよければ、今日私のことを気遣ってくれたお礼に、私が先に寝ちゃったら好きにしていいですよ?」
「は、はぁ? 別に気遣ってないし、す、好きにするって、そんなことしないって」
「そうですか? 勘違いでしたか、でも、嬉しかったですよ。だからユットになら……いいですよ?」
「ば、馬鹿なこと言ってないで、ほらっ、部屋に着いたよ」
動揺を必死で隠しながら僕はレーネがいつも使っているベッドにレーネを寝かせて、僕はレーネをここまで連れくるのに汗をかいてしまったのでシャワーを浴びる。
シャワーをあがるとレーネはすぅすぅと寝息を立てていた。
「またこんなお腹出して寝てたら風邪ひくよ」
そう言いながら僕はレーネのお腹を隠そうと服を引っ張ると『うぅん』と色っぽい声がレーネの口から洩れる。
もうレーネを女の子として意識することはないと思ってたけど、さすがに無防備で、すごく艶っぽく見える今日のレーネの魅力に僕は冷静な判断が出来なくなってきて、『好きにしていい』と言っていたレーネの声を思い出し、駄目だと脳が拒絶しながらも僕の右手がレーネの胸に伸び始める。
いやいや、思い止まるんだ僕。あのレーネだよ。いくら今日のレーネは今までで1番可愛いとは言ってもあのレーネだよ。ちょっとぐらい可愛いフリをしたぐらいで今までことがチャラになる訳ないし、客観的に見て大分マイナスなのは確実だよ。そんなレーネに手を出すとかないわ、男としてナイナイ、だって僕が知る中で史上最悪のヒロインだもん。
そんなこんな自分を律しながらも寝返りをうつレーネの姿をチラチラと見てしまい少しはだけたパジャマから見える胸に吸い寄せられるようについ手が伸びてしまうと『クスクス』と小さな笑い声が聞こえ、慌てて手を引っ込める。
「どうしました? 触らないのですか? 私は別にいいですよ? あっ、でも、触りたくないとか言っていたような気が、あれ? おかしいですね? 言っていた事としようとした事が違いますねぇ? もしかしてあれは私を油断させるためでしたか?」
目の開いてるレーネを見て狸寝入りだったとすぐにわかり、やられたと思いながら誤魔化すこともすでに出来なかったのでとにかく恥ずかしさと悔しさを込めてこう言った。
「レーネの馬鹿、レーネなんて大っ嫌いだから!」
それをクスクス笑いながら『すみません』と謝るレーネ、ホント色んな意味でレーネには敵わないと思い知らされたし、絶対にレーネのことを女の子として意識するのは止めようと誓いました。
今回もここまで読んで頂きありがとうございます。
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