農家さんは裏表のない素敵な仕事です
前回のあらすじ(簡略版)
フンを顔に当てられブチ切れるレーネ
聖剣を使って無双するのかと思いきや
まさかの拳銃を使用しモンスターを撃破
使役者の2人も徹底的に追い込み憂さを晴らし
その姿を見ていたユットは引いていたのだった……
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル15
チャームレベル20
ファレムレベル3
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
ステータス画面『レーネ』
レベル???
聖剣でモンスターを豪快に解体し始め(返り血とか凄い浴びながら楽しそうに)その場で【ファレム】を利用した焚火で焼き、2人の前(わざわざ気絶していた男を叩き起こして)で肉を食べたレーネは少し機嫌を取り戻しつつあった。
解体して残った肉を持った僕たちはそのまま町に帰って来たのだがフンの匂いと返り血の臭いが混じり合った正しく異臭を放つレーネは門番たちからも煙たがられ、すれ違う人たちから避けられるたびにせっかく取り戻しつつあった機嫌が悪くなりながらもその肉を肉屋へ売り、すっかり忘れそうになっていた今回のクエストの捕獲対象だった悪戯猿をギルバーのマスターに渡してクエストクリア報告を済ませて宿屋に帰るとレーネが先にシャワーを浴びて出てきた。
「私、汚されちゃいました」
髪をタオルで覆いながら顔を伏せて、スンスンと肩を揺らしているその姿は如何にも可哀想な悲劇のヒロイン感を演出してる。
「このタイミングでその恰好で言うとすごく意味深に聞こえるけど、僕は普通に見てたからね、あとその嘘泣きを止めなさい」
「ヒロインが汚されるところを普通に見ていたのですか? 助けようともせずに? 最低ですね」
「誤解を生む言い方はやめて! レーネが『待っていてください』って言ったんでしょ、あと汚されたって言うけど、悪戯猿のフンが顔についただけでしょ」
「フンがついた『だけ』とは酷いですね。ヒロインの顔にフンがついたのですよ。普通はありえないですよ、考えてもみてくださいエ〇リアちゃんとかア〇ナちゃんとかが顔にフンをつけますか?」
「そりゃあつけないし、見たくないけど、そんな超が付くくらいの人気ヒロインと比べられても実感がないと言うか、もしかしてだけどレーネってそのヒロインたちと同格とでも思ってるの?」
「はい、同じ物語に出たらキャラ被るなぁと考えるぐらいには」
「どこから来るのその自信、全然被らないし、言っちゃなんだけど、レーネにフンがつくのはキャラ的にアリだと思うよ。むしろ滅茶苦茶面白かったからおいしいんじゃない」
「なんてことを言うのですか、それだとギャグ要員みたいじゃないですか」
「(いや、その認識で合ってますけど)それで結局のところ何が言いたいの?」
「今日の私は結構体を張りましたし、ご褒美とか――」
「それじゃあ、僕シャワー入るから」
「あっ、ちょっと逃げないでください。あと別に私はショタコンじゃないですからユットのシャワーシーンはご褒美になりませんよ」
当然だけど、僕のシャワーシーンがご褒美になるとは思ってないし、ご褒美だって思われてたらそれはそれで嫌なんだけど、まぁ、どうせそんなことだろうと思って同情はしなかったし、可哀想とも思わなかったわけだけど、少しぐらいはなにか考えてあげたほうが良いのかな。
シャワー室の扉の向こうからずっとなにか言ってきてるけど、水で汚れを洗い流すようにレーネの下らない要求を聞き流していると疲れたのか飽きたのかその内声がしなくなってシャワーを終えて部屋に戻ると寝息を立てて寝ていた。
言いたいこと言って疲れたから寝るとか、本当に自由と言うかなんと言うか、まぁ、あんな風に振る舞ってるレーネだけど一応女の子だし少しぐらいはなにか美味しい物でも食べに連れて行った方がいいのかなぁ。
そんなことを寝顔だけは人気ヒロインたちにも負けないぐらい可愛い(黙っていれば大抵可愛い)レーネの顔を見て考えながら就寝した。
翌日、僕は朝の陽ざしが出るか出ないかぐらいの薄暗い中で目を覚まし、レーネを起こす。
「レーネ、早く起きないと遅刻するよ」
「遅刻? 何を言っているのですか? 私はもう学校には行っていませんよ。せっかちですねお母さんは」
「いや、こんな子を持った覚えはないし、持ちたくないよ、そんなふざけたこと言ってないでクエスト行くよ」
「クエストですか? 行くのは良いですけど、もう少し遅くから行きましょうよ」
「何言ってるの、今日は朝から町の北部にある農家さんの手伝いをするクエストを受けてたでしょ」
少し前に農家の地主さんって言えばいいのかな? とにかく土地を持ってる偉い人がギルバーにやって来て『雇ってた労働者が体調を崩して使えなくなったから人手が欲しい』って直接依頼を持ってきたんだけど誰も手を挙げず、僕も受ける気はなかったんだけどマスターには色々とお世話になってたし(主にレーネの食費関係)ここは少しでも恩を返そうと思って引き受けたという訳。
本音を言えば昨日色々あって疲れてるレーネをこんな朝早くから起こすのは気が引けるけど、今更ドタキャンしてマスターの顔に泥を塗る訳にはいかないし、正直時間がない、本日の朝5時に現地集合で現在4時半、ここからどんなに頑張っても15分は掛かるから余裕がない。
「ああ、あの豪農ですか、すっぽかしてもいいのではないですか、ギルバーの様子からしてあのオーナーはかなり嫌われている様子でしたし、あの畑は評判悪いみたいでしたから」
「(それで誰も受けようとしなかったのか)それはそれで関係ないでしょ、受けたからにはちゃんと仕事しないと」
「さすがに気乗りしません、ユットがおはようのチューをしてくれたら起きます」
「しないよ! もう、からかうのは止めてよね(はぁ、でもちょうどいいか、裏技を使おう)わかったよ。仕事を手伝ってくれたら今日の夕食は居酒屋にしてあげる」
「!! 居酒屋ですか!? それってつまりお酒を呑んでもいいということですか?」
「いいよ、今日だけね」
「行きましょう! 今すぐ急いでいきましょう。そしてさっさと終わらせて呑みましょう!」
瞬く間と言うはこう言うことかって感じで支度を終えたレーネは玄関のドアを開けて僕に早く行きましょうと促して来る。
この変わり身の早さよ。
わかってはいたけど少し情けないと言うべきか、それともたかがお酒で釣れるのだからチョロイと見るべきか難しいところだけど、個人的にはお酒で釣られるヒロインは嫌だ。
そんなドタバタのまま、町の北部一帯に広がる畑地帯にたどり着いた。
ちょうどオーナーさんが点呼を取っているようだった。まるで軍隊みたいなピリついた空気を感じ少し驚きながらも、とりあえずはなんとか間に合った様子で一安心しているとそのまま作業の説明に入った。
まぁ、簡単に言うと収穫作業の手伝いと言うことで、主な仕事は収穫した野菜の運搬になりそうだった。
「そんなに複雑そうな仕事じゃなくてよかったね、レーネ」
「ええ、そうですね。それにしても聞いていた通りですね、あのオーナー」
「聞いてた通りって?」
「あのオーナーはとにかく人使いが荒く、雇った労働者を物のように扱うことで有名なのですよ。あの態度から察するに雇っていた労働者を使い潰したか、もしくは逃げられたのでしょう」
「まさかぁ」
そうは言ってはみたけど、そんな話をしてる間にも他の労働者の動きが遅いとかもっと働けとか罵声が飛んでいた。
「あれじゃあ、労働者って言うより奴隷みたいだね。これがこの世界の普通ってわけじゃないんだよね?」
「私もそこまで詳しくはないですけど、聞いた話によれば異常なようですね」
「まさか、これがこの世界の異変の一端ってことはないよね?」
「異変? ああ、そんな目的もありましたね、忘れていました」
「そんな目的って、これ以上の目的はないんだけど!」
「私にとっては今日の夕食を楽しむことが1番の目的ですので」
「(はぁ、駄目だ、このヒロイン)」
「まぁ、さすがにないと思いますよ、今まで全くと言っていいほど本筋の話が進んでなかったのにこんなことがこの世界の異変だとしたら急展開過ぎますからね。それでも気になるなら念のために『やって』おきますか?」
「やらなくていいから、拳銃を取り出しながら物騒なこと言わないでよ」
「そうですか、それによくよく考えてみれば別に異変と言うか、異常なわけでもないのかもしれませんし」
「ん? どういうこと?」
「だって、ユットが居た世界でも教育実習生と言う名の――」
「ダメェェェ!! それ以上は絶対ダメだから! 変なところに喧嘩売るのは止めよ、結構ナイーブな問題なんだから!」
そんな無駄口を叩きながら作業を手伝い(畑仕事はほぼ運搬だったので割愛、あっ、ちなみに労働時間は朝5時~夕方6時まで筋力レベルが5~6に上がるぐらいきつかったよ)なんとか終えてクタクタになりながらクエスト達成報告をして一旦宿に帰り、汗と土だらけの体を洗い流して居酒屋へ向かうのだった。
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