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受付嬢のテッソクっ! ~ポニテ真面目受付嬢の奮闘業務記録~  作者: 空戦型
六章 受付してる場合じゃないっ!

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39.討伐戦:万魔屠るは万の弾!

 嘗て、ガゾムはずっと地底に存在したという。


 地上と繋がりを持たず、地上がなくても困らず、世界が丸いことも空が青いことも知らなかった彼らの文化には「戦い」や「争い」が存在しなかった。


 しかしある日、下を掘ることに飽きた変わり者が上を掘ることを思い付き、ガゾムは正しくお天道の下に姿を現した。これが鉄鉱国の興りと伝えられている。それはもはやおとぎ話以上に昔の事らしいが、実際に鉄鉱国の地下には地上以上の広さの坑道や地下都市が存在する。


 世の中には地面を掘り進む魔物も存在するが、そういった魔物は鉄鉱国周辺の異常に頑丈な岩盤を突破できない。世界のどこが滅びようともガゾムの故郷だけは難を逃れることが出来る、ということらしい。尤もガゾム自身はそこを体のいい作業場としか考えていないのだが。


 争いをしてこなかったガゾム一族は、地上に出てからも戦いよりモノづくりに夢中になった。大砲王のようにモノづくりと戦いを直結させたのは、彼らにとっては先進的過ぎる発想だった。それでもガゾムの英傑の出現によって、戦うガゾムという概念は少しずつ、少しずつ浸透してきている。


 従って――小麦だけガゾムの中でその浸透率がおかしかったことは、疑うべくもないだろう。


「あっはっはっはっはっは!! すっごーい!! 撃っても撃ってもなくならない的だなんてサイコーじゃないですかーーーー!!」


 ズバンッ!! ドガンッ!! ガウンッ!! ズバオッ!! と普段の日常生活でも非日常的な戦闘でもまるで聞いたことのない破裂音が嵐のように連続する。音が響き大気が揺れるたびに眼前の敵が襤褸屑のように消し飛び宙を舞う。


 小麦には悩みがあった。数砲開発の趣味が高じて出来上がった新兵器たちの試射がなかなかできないというものだ。


 魔物の討伐任務があるたびに試射用の数列弾頭や新術式、アタッチメントを持っていくのだが、大抵の相手が一撃で粉々になってしまうので撃ち甲斐がな――もとい、きちんとしたデータが取れないのである。

 ところがこれはどうだ。『万魔侵攻』はとにかく数が多いので、撃ち放題ではないだろうか。相手を殲滅する必要があるこの戦いは、小麦にとってだけは世界と自分の利害が完全に一致する素晴らしい状況だった。


 最初の群れは超長距離砲撃アタッチメント『パーグラー』とアイデアで作った燃料気化弾頭『スウォーノポップ』を組み合わせて二発発射し、敵を殲滅。その後別の群れをクァトル属性を応用した神秘術散弾『ファリナ』、対物貫通術式『スピエド』、更にはクリスタル・コンデンサに貯めたエネルギーを連射で使う『デコラート』、連射ではなく常に放出を続けることで高熱の刃と化す『セーナプ』を使用して殲滅。


 つまり、現在小麦が的にし――もとい、戦っているのは三つ目の魔物の群れである。


 現在彼女が持っているのは、世界初の神秘術を使用しないゲテモノ携行砲『マーチェ&ドニア』。形状は普段彼女が両手に持つ『パンナ&コッタ』と違ってバレルは一つずつなのでまともかと思いきや、特筆すべきはその給弾機構。銃の横に直径1マトレ、重量500ケイグに及ぶ車輪のような超大円形マガジンが装着されており、しかもよく見ると銃の外のマガジンの更に外にグレネードの自動装填、発射機能がついているというゲテモノを超えた何かである。


 つまり弾薬を含む銃全体の重量は1000ケイグ――桜術士曰く、携行武器の重量が二つで2トン超えとか頭おかしい――であり、冷静に考えれば固定砲台でギリギリ使いようがあるという正気を疑う兵器で、更に言うと発射時の反動が銃身とグレネードで別々に来る上に巨大すぎるマガジンが地面を擦るので機動力皆無なのに腕力で取り回さなければいけないという産業廃棄物級の取り回しづらさ――いや、取り回させる気が全くない使い勝手になっている。


 でも残念なことにガゾムは力持ちなので小麦にとっては些細な問題だったようだ。戦闘開始から現在までマガジンを一切地面につけず敵を殲滅している。


「うーん、爽快っ!! でも流石にリコイルがキツ過ぎて照準が難しいですね……格闘戦も出来ないし、マーチェ&ドニアちゃんはこの戦いが終わったら作品倉庫行きですね。実弾の用意も大変ですし」


 ちなみにマーチェ&ドニアは二丁で秒間20発の大口径弾丸を発射し続けているが、熱でヘタれる傾向は一切見られない。銃とは別に小麦が冷却の神秘術を使用して銃身を冷やしているのだ。そして嵐のように飛来する弾丸に藁をなぎ倒すように殲滅されていく魔物たちはもはや涙目だった。


 十数秒後、一匹残らず殲滅を終えた小麦は、まだ弾数が3割ほど残っているマーチェ&ドニアを後方で死んだ目をしながら待機していた数名の物資輸係に放り投げた。マガジンの残量が減って重量は半分以下になっているが、それでも馬鹿みたいに重く巨大な銃を冒険者たちは必死の形相で馬車に詰めていく。


 彼らは小麦に運搬係や偵察、伝達などの役割で雇われた冒険者たちである。荷物を運ぶだけで結構な額を指定されたので腕に自信のない者や楽したい者が大半だが、一様に小麦の一方的な虐殺に実力の差を思い知らされアイデンティティが揺らいでいる。


「では、次行ってみよー!」

「「「はぁい」」」


 なお、馬車を引いているのは馬ではなく馬の特徴を持つ人間種のアギャムという種族の冒険者である飛脚と車力だ。武器を使わず伝統的に素手で戦うこの種族は二足歩行の癖に馬よりスタミナがあって足が速く、陸でモノを運ばせたらハルピムより速いと言われている。


「お二人とも、次までお願いねー!」

「あいよ姉貴ッ!! おい車力、まだ根ぇ上げてねえだろうな!」

「なーに、弾薬が減って軽くなってるんだ! 今なら走りながらソロヴァンだって打てらぁ!!」


 アギャムは『アギャム気質』と俗称される独特の勢いがあるノリをしているため、他のテンションが低い冒険者ズと違って活き活きしている。一番働いている三人が上機嫌な分、荷物運び組は余計にげんなりするのであった。

飛脚の豆知識:アギャム気質

アギャム気質ってのは、一言で言やぁ『粋』ってことだな!!

宵越の金は持たねぇ! 義理と人情に厚くあれ!

荒事に臆せず突っ込む! ソバは噛まずに丸呑み!

まぁ、そんな感じだ!


え、最後のは粋なのかって……?

バーローテヤンデェ! 粋ってことが分かってねえな!

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