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受付嬢のテッソクっ! ~ポニテ真面目受付嬢の奮闘業務記録~  作者: 空戦型
十三章 受付業務休止中!?

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111.凶行

 アトス内部に先行していた遷音速流の部隊は最初こそステルス行動で邪魔されずに移動していたが、それも長くは続かなかった。侵入者が入ったことを前提とした見回りが激しくなり、やがてこれ以上戦闘を避けきれないと判断した遷音速流によって強行突破に方針が切り替えられた。


「唸れ正義の鉄槌ッ!! ジャスティスバインドォォーーーッ!!」


 聖騎士が壁を殴ると同時に壁に亀裂のような光が迸り、現れた敵兵の身体を隆起した床や壁が拘束する。その隙に敵の懐に入った聖騎士は更に拳を振り翳す。


「ジャスティス腹パンッ!!」

「ゴブェッ!?」


 正義を名乗る人間にあるまじき執拗な腹パンチ。

 一見していたぶっているように見えるが、実際には彼らが受けた祝福を解除しているのである。


「むっ、中々解除できんな!! 耐えろ戦士よ、正義の助けはすぐそこだ!!」

「ゴボッ、ゲフッ、オッゴァッ!?」


 十数発叩き込まれた辺りで男は気を失い、その体から目に見えない何かが霧散する。祝福の無力化だ。それを確認した聖騎士は相手の拘束を解除し、転送の神秘術を用いて白目を剥いて痙攣する彼を飛ばす。


 飛ばした先は、アトス内部の緊急脱出艇の一つだ。

 これも紫術士が予め座標を調べておいた所である。

 無事に無事じゃないダメージを受けた敵の転送を確認した聖騎士はふう、といい汗をかいたように額を拭う。


「うむ、人助けをした後は気分が良い!!」

「助けてるって言うの、あれ……?」


 兵士を『ポセイドルの渦鉾うずほこ』で発生させた水で拘束しつつ無力化する銛漁師が飽きれた顔で問うが、聖騎士は何もやましいことはないとばかりに胸を張る。


「無力化に少々時間がかかったが、コツは掴んだので無駄な痛みではない! 次回からはもっとコンパクトな攻撃で無力化出来るだろう!! そして無力化した人物が戦闘の巻き添えを受けないように安全な場所へ送る……これぞ正義の為せる業ッ!! 正義ぃぃぃぃーーーーーーーッ!!」

「サイコパスねあんた。知ってたけど」


 あの苦悶の表情を浮かべる兵士に対し、欠片も同情の念を抱かないこの男の思考回路が怖い。あらゆるサイコパス行動を正義の名の下に正当化しそうである。

 尤も、その向こうで向かってくる兵士や機械を片っ端から術で氷像に変えて「絶景かな! 持って帰って神殿に飾ってみようかのう?」などと権力者特有の悪趣味な事を言っている白狼女帝も大概だ。あんな状態でも一応解凍すれば大丈夫らしい。


 その一方で――。


不意打ち(ホップ)拘束ステップ、はい転送ジャンプっと」


 まるで散歩をするように敵を拘束し、転送し、次の瞬間にはその場から掻き消えてまた別の場所で同じことをする……『ルーメスの隠靴おんか』の超高速移動能力をフルに活用して敵を無駄なく効率よく片付けていく遷音速流の仕事ぶりに、やはりあの人は別格だな、と銛漁師は思う。


 退魔戦役時代からの現役で、銀刀の最高速度に唯一追い付けるとされる移動は、実際にはあの靴で周囲の時間を『踏んで』歩いているらしい。あの人には一秒を十秒以上の時間として過ごせるのだ。それでいて剣術、神秘術、体術のどれをとってもそつがなく、人間的にも頼れる。ステュアートの中には彼を父のように慕う人間も少なくない。


 銛漁師は、そうでもない。

 仕事の先輩として信用はしているが、それだけだ。

 そもそもこの場にいる全員と親しくないし、親しくあろうとも思っていない。女神の下にいたのは狭い故郷で引きこもるように生きるのが嫌だったから。そして、馴れ合いをしたくないならしなくていいと、環境を用意してくれたからだ。だから女神の為なら戦ってあげてもいい。感覚としてはそれくらいだ。


 ハイ・アイテールとやらが支配する未来がどうなるかは知らないが、レライムの民が大手を振って暮らせるならそこまで悪くないとさえ思っている。唯一不満があるとすれば、ハイ・アイテールの要求を全て呑まなければいけなくなること――支配される不快感だ。それだけは納得出来なかった。


 しかし、ふと思う。

 聖騎士にとって、正義の条件とは何なのか――と。

 ハイ・アイテールを倒すのは正義だという癖に、桜とハイ・アイテールの絆もまた正義だという。何が正義じゃないのか、銛漁師にはさっぱり判別できなかった。


(……気にしても意味のないことか)


 既に自分たちはアトスという巨大な怪物の腹の中にいる。

 これから相対するのは、怪物の言いなりになった免疫機能。

 遷音速流が次のエリアを封鎖する扉を背に警告する。


「この先は広い空間になっている。敵が待ち伏せするには絶好の場所だ」

「つまり、妾が仕掛けるにも絶好の場所じゃな」


 つい、と前に出た白狼女帝が嗤う。

 彼女はそっと扉に手を当て――震えるほど冷たい吐息をはぁ、と吐いた。


「清らかなるクィンクェの調べ、クァトルの奏で、セプテムの調律……森羅万象一切有情、勅にまつろひて散り給へ。オーバースノウ・アウト」


 瞬間。


 ぱりん、と音を立てて扉が砕け、その先に存在した数百メートルに及ぶ広大な空間が、そこで武器を構え待機していた兵士諸共銀世界と化していた。壁の全面が、動ける全ての存在が、情け容赦なく氷結していた。


 温度差ゆえか霧まで発生する中を、白狼女帝はまるでそれが当然のように空間に入り、一面に広がる霜の床をしゃくしゃくと音を立てて進む。残りの人間もそれに続いて部屋に入り、無力化された兵士たちを次々に転送で脱出艇に術で放り込んだ。意識がある者もいるようだが、喋ることさえままならない状態だ。


「氷の術の神髄は、生物を維持する根本的なエネルギーである熱の奪取じゃ。何も氷をぶつけるだけが能ではないさ」


 相手に攻撃が通用するのは紫術士の助力故。

 しかし、相手が生きているのは紫術士の尽力故。

 根本的な、攻撃の出力が違い過ぎる。

 少なくとも銛漁師が同じ規模の攻撃をすれば、涼しい顔ではいられないだろう。


(これが、歴王国に取って代わる存在――遺伝子強化人間の極致。癪だけど、味方になるとこれほど圧倒的とはね……)

「うむ! 白狼女帝は俺には真似できぬ独自の正義を持っているな!」

(正義と力を混同してないかしら、聖騎士こいつ


 そうして目に見える粗方の兵士を送り終えた頃――ふと、余りの低温故に発生した霧が少しずつ晴れ、視界に移らなかった奥からバリン、と氷の砕ける音がした。白狼女帝はその音のする場所に真正面から近づき、目を細めながら笑う。


「ほぉ……一撃で終わっては面白くないとは思っておったが……おるではないか、面白い者が?」


 それは、その巨体は、全身を覆い尽くす氷が剥がれ落ちる程の高温を発しながら巨大な足を前に進める。地面に設置した部分から部屋の氷が一気に融解し、蒸発した。


 赤熱する装甲から立ち昇る陽炎。

 見上げて尚足りぬ巨体は紅の瞳を怪しく光らせ、攻撃的に形作られた四肢とそれを支えるにはアンバランスな細い体を猫背に曲げてこちらを見下ろす。額に平手を翳して見上げる聖騎士が引き攣った笑みを浮かべた。


「こいつは……凄まじく正義じゃない気配がするぜッ!!」

「当たり前よ!! ブリーフィングで言ってたでしょ!!」

「隊長専用の人造巨人ティタノマキネ――アトス最強の尖兵の一!! 艦内に配備していたとはッ!! オペレーター、報告がある!!」

「面白いではないか。その力が嘗て屠りし炎の巨魔スルトルに匹敵するか、試してやろうではないか!! 『ヘイムダール』よッ!!」


 眼前の人造巨人――ヘイムダールが雄叫びにも似た駆動音を上げて鋭い爪のような指を構えた腕を振り下ろし。凄まじい衝撃波と爆風が一同を襲った。


 その性能、カタログスペックでガルディータスⅣの三倍。


 たった5機しか残っていない、地球文明最後にして最新の機兵。

 後にも先にもこれに対抗できる機体は存在しない。


 ――ただ一機、ゴールド駆る『アルキミア』を除いて。


 されど、戦いであれば未知という名の可能性は常に付き纏う。

 何故なら、ヘイムダールに生身で立ち向かった人間のデータは存在しないからだ。


 ヘイムダールの脚部装甲が展開し、内部からレンズのような形状のパーツが露出。レンズに強いエネルギーが収束し、一斉に赤黒い光が発射された。


「ぬ……!」


 先んじて動いたのは白狼女帝。氷の柱を次々に出現させるが、光は氷をまるで飴細工のように貫く。その場の五人は一斉に別方向へ回避した。


 すると、赤い光が虚空で停止して球体となり、その球体から逃げた五人めがけて細かく分割された光の筋が飛来した。遷音速流は難なく躱すが、躱した方向に二段、三段と軌道を変化させながらしつこく喰らい付く。


 銛漁師は濃密な神秘を内包した水の螺旋を纏って光を弾くが、危うくガードを貫通しかける威力に顔を顰める。更に水の出力を上げるべきか――そう考えた瞬間、聖騎士が飛び出して飛来する閃光を拳で弾く。


「ジャスティス・ディフェンス!! うりゃりゃりゃりゃあッ!!」


 激しい閃光と共に空気が弾け飛ぶような音が連続で木霊し、追跡する閃光は全て弾かれて消えた。紫術士も同様に、アロディータの宝帯で白狼女帝に迫る攻撃もろともはたき落とす。


「受けられない性質の攻撃ではないようですね」

「追跡機能があるようだが、ある程度減退したら機能不全に陥るらしいな!! 最後まで志を貫いてこその正義だぞッ!!」

「あれは正義ってツラじゃないでしょ……アンダーゲイザーッ!!」


 カン、と渦鉾で床を叩くと、霜を伝導してヘイムダールの下部に集結した水が超高水圧で噴き出す。巨大な敵の姿勢を崩すのに銛漁師がよく使う一手だ。小さい敵だと水の勢いに乗って逃げることもあるが、巨体であればあるほど水勢を受ける面積は大きくなり、体勢を崩しやすい。

 しかし、ヘイムダールの足裏から光が発され、水を被りながらもヘイムダールはびくともしない。重量は約二万ケイグ(※約四〇トン相当)とは聞いていたが、重量以上の絡繰りがあるらしい。差し当たって思いつくのは慣性制御装置だろうか。


 それでも、水を被ったのならば布石にはなる。

 白狼女帝が再び前に出た。


「どれ、もう一手。アイシクル・クレスト!」


 白狼女帝の睨んだ先のヘイムダールの身体が突然震え、全身を夥しい氷柱が覆う。表面に付着した水を利用しての一手だ。氷は次第に密度を増して内部を圧迫していくが、異変はすぐに起きた。氷柱の内部に橙色の光が瞬いたかと思うと、氷が一瞬で蒸発したのだ。


「全身に熱を纏わせる術か。ますますスルトルを思い出すのう」

「暢気に構えてないで対策考えてよね……!」


 水蒸気すら一瞬で消滅する程の熱を全身から放出し、陽炎の中でヘイムダールは再び立ち上がる。そして突如として身を捻り、巨体からは想像もつかない速度で虚空に回し蹴りを放つ。


「ぬおッ!?」


 そこにいたのは不意打ちの機会を狙って超高速移動中だった遷音速流がいた。遷音速流は『ルーメスの隠靴』に力を纏わせて迎撃し、ヘイムダールの足の先端からもキィィィ、と耳を劈く振動音を立てる刃が突き出ていた。


 足と足が衝突。

 周囲に暴風が吹き荒れ、遷音速流が押し出される。

 瞬間、巨大な斬撃が壁一面を切り裂いた。

 貫通には至っていないが、人間が直撃すれば切れるどころか粉微塵になる威力と深さだ。但し、遷音速流は靴に纏わせた力で斬撃を相殺したために傷自体は負っていない。


 白狼女帝はこれを機と見て、聖騎士も同時に反対方向から全力で接近。

 二人は拳を強烈な神秘のエネルギーで包み、同時に拳を振りかぶる。


「強度は如何ほどかな!?」

「正義の拳に貫けぬものなしッ!!」


 ドウッ、と、大気が震える。

 衝撃の余りに舞い上がる霜が止んだ先には――ヘイムダールの両手が白狼女帝と聖騎士の手を完全に受け止め、そのまま弾き返すという光景が広がっていた。更にヘイムダールの両腕から足のそれとは違う青白い閃光が発生し、手の平から発射される。


「ぬっ!?」

「これは!?」


 着弾と同時に、光の塊が二人を覆った。

 空間を覆う超高熱の光で、防御諸共閉じ込めて焼き殺そうとしているのだ。

 光の周囲には空間の歪みがあり、並大抵の攻撃では突破できない。

 紫術士が前に出て空間を引き裂こうとするが、ヘイムダールの肩部から夥しい弾頭が打ち出され、躱すことができず防御に回る。思うように進めない歯がゆさに紫術士は口を歪めた。


「ぐっ、何と言う連射性能……!」


 五対一、オリュペス十二神具まで所持しているにも関わらず、まるで遊ばれているかのようだ。と――ヘイムダールの首が微かに震えた。


『ふくっ、ぷふふっ……』 


 それは、少年と呼ぶには年を取り、さりとて年配と呼ぶには若すぎる男の声だった。一瞬通信放送かとも思った銛漁師だったが、発生源は明らかにヘイムダール。

 つまり、この声はヘイムダールの操縦者の声だ。


『最初はこんなワケわかんねぇ乗り物に乗せられてどうしよーかと思ってたけど、マジ楽勝じゃね? あーあ、こんな楽な仕事で女神に貢献できるとかマジ楽だわぁ。つーか結構楽しいじゃん』


 口調そのものは淡々としていて抑揚に欠ける、勝手に自分の言葉に興奮を覚えるように盛り上がる男の声に、遷音速流も足を止めて訝し気な顔をする。


「戦士……ではない?」

『ご名答だよおっさん。別に俺、冒険者とかいう貧乏人がするような野蛮な仕事とは疎遠だよ? おっさん、その戦いやってない俺に蹴られて吹っ飛んだんだよ。馬鹿じゃね? 異端宗派だか何だか知らんけど、さっきから別に戦士でもない奴の攻撃に逃げ回ってんの地味にウケるわぁ!』

「何だコイツ……」


 死闘に余りにも不釣り合いな緊張感に欠ける声に、銛漁師は困惑した。

 敵は歴王国と聞いて、ヘイムダールは最も警戒すべき人造巨人だと耳にしていたし、事実、ヘイムダールの戦闘能力は想像以上のものだった。にも関わらず、中で操縦している人間から感じられる心が、余りにも薄っぺらい。

 そんな銛漁師の声を律義に聞いていたらしい男は、ヘイムダールの首を傾けて彼女の方を見る。


『は? 何? 何だコイツはこっちの台詞っしょ。何なのお前ら? 異端宗派なんだろ? 社会の塵で犯罪者で女神にも見捨てられた惨めな負け犬じゃん。やけっぱちでアトスに侵入したのはよっぽど女神に振り向いて欲しかったのかなぁ?』

「……」

『あ、反論がないんでそういうことですねぇ~? はい俺の勝ちっと』

「――安い勝利もあったものだな?」


 凛とした声が響き、空間に固定されていた超高熱の光が氷に突き破られる。

 氷の先端に、傷一つない白狼女帝が佇んでいた。服には若干の焦げがあるが、玉の素肌には火傷の一つさえ存在しない。


「真の強者は勝ち方にも拘る。些末な勝負は買う側の格も落ちるものよ」

『は? 意味わかんね』

「解らぬうちはぬしは子供よのう。或いは……心が子供のまま成長してしまったか?」

『は? マジ意味わかんね。何このババア』

「ほうほう、歴王国は高度な教育プログラムで国民全員に学習の機会を与えると聞いていたが……言葉遣いと語彙まではカバーしておらぬのか」

『は? さっきから全部意味分かんね』


 からかうように笑う白狼女帝に、男は同じような答えを繰り返す。

 それ以外に返事をする気がなく、そうすることで相手の考えを受け付けない自分の立場を固持するかのようだ。それでいて、そうする割には声色に苛立ちが混ざっている。


(マジで何なの……考え方や言葉の一つ一つが稚拙っていうか、何ていうか……)


 地上の人間も歴王国の人間も嫌いな銛漁師だが、目の前のヘイムダールを操る男の言動に気味の悪さを覚える。稚拙とは表現したが、それ以上にこの男と自分とでは抱く価値観が違い過ぎる気がする。全く別種の生物とコミュニケーションを取っているようだ。


『あのさぁ。俺は女神に認められた存在なの。 求められた存在、お前らより上級なワケ。全能なる女神はわざわざ俺の部屋に来て、俺の正当性を理解してくれてたんだよ。分かる? 世界の常識より俺の常識が正しいってことを証明してんの。だから祝福を受けた俺と比べておまらの思想は完全に劣等なものなんだよ』

「――ほう! 白い女神にスカウトされたと!!」


 空間が弾け、超高熱に閉じ込められていた聖騎士が姿を現す。

 彼もあの程度の攻撃では危機と呼べなかったのか相変わらず元気そうだが、尻尾の毛が少しチリチリしていた。 


猫族ナネムのクソが話しかけんな!! 歴王国の残飯漁りしてる犯罪者集団がッ!!』


 それまでの自尊心をひけらかす態度から一転、男は聖騎士に突如として激高して聖騎士に拳を振り翳した。聖騎士はそれに正面から抵抗し、力及ばず吹き飛ばされる。

 聖騎士以外の三人は豹変の理由が分からないが、聖騎士は別に気にする様子もなく走って元の場所に戻ってきた。


「それは誤解だ!! ナネムは民族柄少し自由人過ぎるだけだ!! 悲しいことに犯罪に手を染める者もいるが、それを防ぐことこそ我が正義!!」

『うっせぇ、犯罪者の種族が!! お前らがいるから歴王国の犯罪は減らねぇし病気が拡散すんだよ!! 昔凶悪事件起こした奴の子孫なんだから存在自体が屑だろ、てめえらは!!』

(……? ナネムの凶悪事件って、何だそれ)


 銛漁師はそれなりに歴史についての知識があるが、彼が言う事件が何なのか記憶に該当するものが思いつかない。ちらりと遷音速流を見やるが、心当たりが思い浮かばないという顔だった。

 ただ、通信機の先からオペレーターのギャルがあちゃあ、と漏らす。


『コイツ、あれだ。主義者って呼ばれてるめんどくせータイプだ』

遷音速流の考察:なぜヘイムダールにあんな男が?

これはワガハイの勝手な推察でしかないのだが……人造巨人に乗せるための一種の適性の中に、精神的な攻撃性があったのではないかと睨んでいる。幾ら操縦訓練を受けられるとはいえ、人造巨人は人間の脳と駆動系をリンクさせるインターフェイスを使っている。より他者に対して攻撃的な人間ほど、人造巨人に適合させやすかったのかもしれない。

雪兎は人類すべてを家族にしたいと思っているくらいだから、闘争心や攻撃性を植え付けるのは恐らく本意ではない。故に元々そうした性質を持つ者を選んで巨人に乗せているのだとしたら……他のヘイムダールパイロットがどんな連中か想像したくないな。

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