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意思ある剣は何の為、その刃を振るうべきか



「……ふっはっは! 成功した、成功したぞ!」



 聞き覚えの無い、男の声。


 突然近くで発せられたその大きな声に、沈んでいた意識が覚醒させられる。

 うるさい。



「世界を支配する大きな一歩だ! これが、量産さえできれば……!」



 目を開けると目の前には、明らかに興奮した様子の見知らぬ男性。


 白衣と眼鏡、ボサボサの白髪、目の下のクマ……不摂生中の研究者のように見える。


 だが、弱々しい雰囲気は無く、目を血走らせ、嫌なことでも思い出すかのようにその表情を苦々しく歪ませている。

 正直キモい。


 しばらくして我に帰ったのか、彼は後ろを振り返り、遠くの誰かに話しかけるように声を張り上げる。



「素材はあと4本ある! さっさと全部作り変えるぞ!」



 そう言って、彼は歩いて行ってしまった。


 そちらを見ても、誰かいるようには見えない。

 独り言……?


 とりあえず、彼は言うことだけ言って、歩いて行ってしまった。

 どうしようか。


 突然のことで頭が働いてなかったけど、よく考えてみると、何も思い出せない。

 ここはどこだろう。

 私は誰……いや、私自身のことは思い出せる。


 私はティルケィ。

 私は……夢と眠りを司る魔剣(・・)……の、はず。

 なのに今の私の姿は、どう見ても人間のそれだ。

 服は何か、ゴワゴワした質素な服を着せられている。


 どう言うことか?

 わからない。


 なぜ、物に過ぎないはずの私が、物事を考えることができるのか?

 何も、わからない。



 ……もういいや、面倒だ。

 寝よう。

 寝てたところを起こされたんだ、二度寝くらい許されるだろう。


 と言うわけで。



「おやすみ……zzZ」




◇◆◇



「……ぃ。……て……さいっ」


「ん、んんぅ……」



 揺さぶられる感覚。

 甘い微睡みの中、その感覚と共に小さく声が聞こえてくる。


 女性の声。

 どこかのキモい男とは違う、耳に優しい柔らかな声。



「……ら、早く、起きてくださいっ!」



 ……んー、ちょっとうるさくなってきた。

 こう言う声聞いてると悪戯したくなるね。

 ねむねむ。



「ん……キスしてくれたら……起きる……zzZ」


「え……ぇえーっ!?」



 揺さぶる手の動きが止まった。

 よし、これで眠れる……。



「そ、そんなそんな、キスだなんてそんな……」


「もうこいつ置いてっていんじゃね?」


「ダメだよ可哀想だよー」


「……殴って起こす?」


「もっと可哀想だよー!」



 ……何か不穏な空気。

 流石に起きよう。

 起きた。



「んん〜っ……おはよう」


「は、はいぃ、お、おはようございます!」


「おせーよ、おそよう」


「おはよー!」


「……おはよう」



 見渡すと、さっき寝た時と同じ部屋。


 さっきと違う点は、周りに4人の女の子がいること。


 声をかけてくれた順に、恥ずかしそうな表情のふんわりした女の子、口と目付きの悪い褐色の子、元気いっぱいなロリっ子、半眼でぼーっとした雰囲気の子。


 うん、個性豊かだ。

 普通なのは私だけか。



「んー……えーっと、とりあえず自己紹介。私はティルケィ。ティルとでも呼んで。あなた達は?」


「私、プミラって言います、よろしくお願いします!」


「あたしはベムハース。ベムでいい」


「私はマールス! よろしくー」


「……クロロ、よろしく」



 ふんわりがプミラ。

 ツンツン褐色のがベム。

 元気ロリっ子がマールス。

 無口な子がクロロ。

 覚えた。



「まぁ自己紹介はこれで良いとして……えーっと、どうする? と言うより、状況が何もわかってないけど」


「奇遇だな、あたしらも何もわかってない」


「あ、あはは……」


「どうしよっかー」


「……」



 無計画か!

 私を置いてくみたいにさっき聞こえた気がしたけど、気のせいだったかな。



「……そう言えば、何か事情知ってそうなキモい男いたような。あれ探す?」


「それってアレのことか?」



 そうベムが指差した先には、切り刻まれた一人の男性の……死体?



「……生きてる?」


「死んでる。やったのはそいつ」



 今度指さされた先にいたのは、クロロ。

 失敗が見つかった子供のように、申し訳なさそうな顔で明後日の方向を向いている。



「えぇーっと、なぜに?」


「……邪悪な感じがした。私たちを悪用しようとしてた。……だから切った」



 うわぁ、証拠も無いのにあんなに無残に殺されるとは。

 ドン引き。



「……ちなみに、どうやって?」


「? こう」



 そう言って彼女は腕を一振りする。


 するとその腕はいつのまにか、肘から先が一振りの()のようになっていた。


 白と黒、二色で彩られた、神々しい長剣に。



「!?」


「……私は時間と空間を司る神の剣、クルル」


「あ、ちなみにあたしら全員魔剣だから」



 それを証明するように、全員が手、腕、肩を剣へと変化させる。


 プミラは白く神々しい、歪な形の短剣に。

 ベムは幾何学に溝の掘られた、毒々しい色の片刃の剣に。

 マールスは明らかに不釣り合いな大きさの大剣に。

 クロロはそのまま神々しい雰囲気の、白黒の両刃の長剣。


 なに、これ。



「……よくわかりませんが、私達はそこの男の実験によって、人型にされた魔剣のようです。貴女も呑気に寝ていたので関係者かと思って起こしたのですが、どうやら私達側のようです、よね?」



 そう言って、プミラは短剣を元の人の手に戻す。

 それを見て、ほかの3人も同様に腕を元に戻した。


 ……私にもできそうな感じがした。


 腕を剣に変えることを意識しながら、腕を大きく振るう。


 一閃。

 振り抜いた先を見ると、一本の剣へと変わっていた。


 黒い剣身。

 その全体が、白い文字のようなものが彫られ、埋め尽くされている。

 術式の役割を持つその文字は魔力を揺らめかせ、禍々しい光を放っている。


 間違いない。

 これは、私だ。

 これこそ、夢の悪魔の王剣『ティルケィ』だ。



「やはり……」


「ほぅ」


「おお〜」


「……」



 周りを見ると、全員が私を、私の剣を見ていた。

 ちょっと恥ずかしい。

 元に戻しておく。



「さて、真の自己紹介は歩きながらするとしまして、そろそろここから出てみませんか、みなさん?」



 プミラが手を叩いて注目を集め、そう話を切り替えた。


 私的には何をして良いかわからないし、何か知ってそうなのは死んでるから賛成。

 他のみんなも同じようで、話しながら外に出ることにした。



 なお、外への扉は鍵か何かで開かなかったので、マールスが馬鹿でかい大剣で切り開いてくれた。

 怖い。



───────────────────

夢魔の王剣ティルケィ

レベル:1

種族:リビングウェポン(?)

分類:魔剣 封剣 呪剣

性別:女(?)

年齢:0(857)

状態:記憶喪失 記憶混濁


スキル

・特殊スキル

【◼︎◼︎◼︎◼︎】Lv.-

【◼︎◼︎◼︎】Lv.-

【◼︎◼︎】Lv.-

【◼︎◼︎】Lv.-


称号

《夢魔の王剣》

《封剣》

《夢幻の鍵》

《魔王》

《7つの大罪》

《人化せし人外》

《リビングウェポン》

《アンリミテッドアームズ》


説明

夢魔の王の力が封じ込められた魔剣が人化した姿。

長い間封印されたことで夢魔王の記憶、意思はほぼ消滅し、魂と力のみが剣に宿っていた。

契約者に称号《夢魔の王》を与え、スキルの共有化、夢魔の王の力の供与を行うことができる。

契約者が死亡した際、この魔剣は供与した力を回収すると共に、能力の一部を奪い夢魔の王の力を増幅させる。

自然の摂理に従わない形で人化したことで、変種の魔人のような状態になっている。

それにより、自身の意思で夢魔の王の力を操ることができる。

───────────────────



───────────────────

豊穣の神器プミラ

レベル:1

種族:リビングウェポン(?)

分類:神器 祭具

性別:女(?)

年齢:0(◼︎◼︎◼︎◼︎)


スキル

不明


称号

不明

───────────────────


───────────────────

魔毒呪剣ベムハース

レベル:1

種族:リビングウェポン(?)

分類:魔剣 呪剣

性別:女(?)

年齢:0(338)


スキル

不明


称号

不明

───────────────────


───────────────────

英雄の大剣マールス

レベル:1

種族:リビングウェポン(?)

分類:聖剣 霊剣

性別:女(?)

年齢:0(217)


スキル

不明


称号

不明

───────────────────


───────────────────

時空剣クロロ・リネレア

レベル:2

種族:リビングウェポン(?)

空白:神器 神剣 魔剣

性別:女(?)

年齢:0(◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎)


スキル

不明


称号

不明

───────────────────

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