23 幸せになりました。
短いですが、クロエの話はここで終わりです。
1月の王宮舞踏会が終わった。
エリザベートが接近してくる可能性があるのは王宮舞踏会のみ。それ以外の舞踏会では、元々接点はない。もしエリザベートの取り巻きからの舞踏会や晩餐会の招待状なら『誰かが体調不良』で断ればいい。
だが、王宮舞踏会を断るのは難しい。
そして2月の王宮舞踏会。
しかし、期待と裏腹にエリザベートは近付いて来なかった。
何故か、夫であるベルトワーズ公爵令息にぴったりと寄り添っている。
隙あらば逃げ出す夫。
それを追いかけるエリザベート。
再び逃げ出す夫。
腕をつかんで離さないエリザベート。
何が起こったのか理解できないが、実害がないので気にしないことにした。
たまにエリザベートはクロエを遠くから睨む。
しかし、クロエは、遠くにいるエリザベートに睨まれても気にならない。
気付いたら王宮舞踏会は終わっていた。
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3月、4月、5月の王宮舞踏会も同じ様な状況が続く。
気付いたら社交シーズンも終わりに近付いた6月、クロエは再び体調を崩した。医者の見立ては三ヶ月。いま、馬車で領地まで移動したら、間違いなく流産する。
取り合えず、クロエのみ社交は終了。舞踏会等のお誘いは、父かアレクシスのどちらかが参加して乗り切ることにした。
1月の王宮舞踏会を最後にエリザベートはクロエに近付いて来ない。
怪しい招待状も届かなくなった。
想像した以上のことが全く起こらないので拍子抜けする。
領地に戻れないので、9月までタウンハウスにクロエとアレクシスは滞在することになった。そうして安定期に入ってから領地に戻った。
妊娠を理由に次の12月からの社交シーズンは不参加。父親が一人寂しく社交シーズン始まりに王都に向かう。
その後、安産にて女の子を出産。
アレクシスは嬉しさの余り飛び上がって喜んだ。
タウンハウスにいる父へ手紙を書いたら『早く帰りたい』と泣き言が返ってきた。
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フローラからワインをかけられそうになったり、エリザベートに嫌味を言われたり、色々あったが私は幸せだと思う。
優しい父の元に産まれて、素敵な旦那様と結婚でき、可愛い子供にも恵まれて。
出産したことはパメラとエヴァにも手紙で伝えた。
パメラも現在妊娠中。今期の社交シーズンは不参加。領地でゆっくり過ごしている。
エヴァは現在王都にいる。
手紙の返事が先程届いた。
❮❮我が心の友クロエへ
楽しい情報入手。社交シーズンに入ったのにエリザベート様を見かけないので、ちょっと探りを入れたら妊娠中とのことでした。
しかも旦那様の子供ではないそうです。多分取り巻きの一人だと思います。
・・・
また何か新しい情報を仕入れたら連絡します。 貴女の心の友エヴァより❯❯
今はアレクシスと二人だけのお茶会中。アレクシスを真っ直ぐ見る。
「アレクは幸せ?」
クロエが聞くと、リオネルをあやしていたアレクシスは、クロエの横に来て額にキスをする。
「幸せだよ。フローラもエリザベートも片付いた。もう、僕たちの邪魔をする者はいない。」
実はエヴァの手紙には続きがある。
❮❮ところで、この前のシーズンの終わり頃の6月にクロエが悪阻で参加しなかった舞踏会があったの覚えている?クロエの旦那様が一人で参加したブランシュ伯爵家の舞踏会。確かアナ側妃様と縁のある家なのよね。
その時偶然中庭で聞いてしまったの。アレクシス様が四、五人の男性と話しているのを。このまま妊娠しなかったら、エリザベート様が離縁されて修道院行きだって。良く観ると、全員がエリザベート様の取り巻きだったの。
つい、楽しくてそのままにしちゃった。
でも、アレクシス様って優しそうな顔をして裏では怖いことをするのね。間違いなく煽ったわよ。取り巻き達を。❯❯
うん。見なかったことにしよう。
真実は知らないほうがいい。
だって、私は幸せなんだもの。
あっさりですが山があっても高くない、谷があっても深くない、クロエの話はここまでです。
次から番外編の前編と後編です。
視点がかわります。
これで全てが完成します。




