10 結婚しました。
今回も短いです。ごめんなさい。
結婚式当日。
式で着る白いドレスはクロエの母の形見のドレス。元々は母方の曾祖母のドレス。少しだけ手を加えているが、見る人が見れば一級品だと分かる。このドレスを着るのが子供の頃からの夢だった。
バージンロードを父に手を引かれながら歩く。一回ドレスを踏んでしまったが、スカート部分は広がっているので、うまく誤魔化せた。
歩きながら回りを見る。
新郎側の席にはアナ側妃とその弟のフランクール伯爵、フランクール伯爵夫人、王の名代としてアナトール王子。
新婦側の席には叔父、叔父の妻、パメラ、エヴァ。
従兄のウィリアムは王立騎士団に所属しており、訓練のため4ヶ月ほど辺境に行くことになり、来年の1月か2月ぐらいまで戻って来ないので不参加。
正面に立っているアレクシスを見る。
王族特有のナチュラルブロンド、空色の瞳、何度見ても美形。
もう一度瞬きをして見直して見る。やはり美形。
これは夢ではないらしい。
父から離れ、アレクシスの横に。
アレクシスと視線が合う。砂糖菓子のような甘い視線。
クロエの心臓は鼓動が速くなり、息が苦しくなる。
そのまま誓いの言葉、指輪の結婚、そして・・・・・。
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式が終わり、カントリーハウスで披露宴。館の中庭を開放し、領民達も招いての大宴会が始まる。周辺の貴族達も披露宴に参加する。
アレクシスとクロエは挨拶回り。
挨拶回りが済むとクロエは直ぐに自室に戻った。
ドレスを脱ぎ、風呂に入る。入念にマッサージ。薄い寝間着に着替え寝室にて待つ。
「今日は本当に来るのかしら。」
寝台の上でアレクシスを待つのも恥ずかしいので、ソファーで待つ。
開放している中庭からの騒ぎ声が窓から聞こえる。多分朝まで宴会は続くだろう。
「出来れば初夜は明日以降にならないかなぁ。今日は疲れた~。」
部屋で一人でいるとついつい独り言を言っていまう。
「出来れば初夜は今日お願いしたいのですが。」
後ろから声がする。驚いて後ろを振り向くとアレクシスが立っている。
どうしてこの兄弟は黙って後ろから声をかけるのだろう。
「お疲れ様です。少し酔っていますか?」
アレクシスは顔をほんのり赤くしていた。
「少しだけ。」
よく見るとアレクシスも寝間着に着替えていた。どうしよう。
「クロエ、出来れば初夜は今日お願いしたいのですが・・・・無理強いはしたくないのです。・・・・・・無理・・・でしょうか?」
微かなお酒の臭い。声は弱々しい。
「無理・・・・ではないのですが、まだ実感がなかったもので・・・。」
「でも、兄には子作りのため、次の社交シーズンは王都に行かないと言ったのでしょう?」
「ええ、面倒臭いことに巻き込まれたくないもので・・・・。」
アレクシスは小さく吹き出す。
「面倒臭いかぁ。クロエらしい。
エリザベートの件は申し訳ないです。一番上の兄であるアルフレッド兄様もアナトール兄様も心配してくれています。
今となっては、何故エリザベートに恋をしていたのかわからないのです。
確かにエリザベートは美しいです。
でも、それだけでした。
領地のことも、植物の話しも、なに一つ、話がかみ合ったことがなかった。
彼女が話すのは流行のドレス、流行の宝石、そして、美しい自分にどれだけ賛辞をくれるか、贈り物をくれるか、それだけです。
当時の僕は、嫌われないよう必死でした。」
クロエはアレクシスに近付き、その両の手を握り締める。そして、アレクシスにの目をしっかり見ながら言う。
「美しくもないですし、流行を追いかける能力もありません。ふつつか者ですが、これからよろしくお願いいたします。」
そして、にっこり微笑む。
アレクシスは、その笑顔を見て、耳まで真っ赤になった。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
神々しい笑顔で答える。
アレクシスはクロエを抱き上げ、仲良く一緒に寝台へ。
二人の初夜はつつがなく無事に終了いたしました。




