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第三話

ある朝。学校に登校した俺はいつものように何人かと駄弁っていた。その時、見たことがない人が教室に入ってきた。長い黒髪。鋭い顔立ちの少し怖そうな女の人だ。だが年は?俺たちと変わらないんじゃないのか?


「どなたでしょうか」聞いてみると、その女の人は俺を一瞬見てからB課の全員に向けこう言った。


「本日放課後、あなた方の能力診断を行います。授業が終わり次第、会議室に集合してください。」


…この人、何言ってんだ?


「あの、ここはB課なんですけど」別のやつが恐る恐る言う。

「わかっています。だから言っているのですが?では、よろしくお願いします。」そういうと、女の人は最後に俺のほうにちらりと顔を向け、去っていった。


「どういうことだと思う?」隣のアポロに聞いてみる。


「…黒髪ロングが似合ってたな」

「黙れチョコ野郎」

「何故だ!」


―駄目だなこいつは。

しかし何故だろう。ここには能力0と診断された連中しかいないはずだ。やっぱり何かの間違いなのか。考えていると、始業の報告が机に表示された。


「着席しましょう。」先生が入ってきた。



それから放課後まで、クラスの奴らが派手に暴れまった!授業中私語が絶えんわ、丸められたメモが飛び交うわ、しまいには「SEKAI NO OWARIだあああ!」とかいうやつまで出てきた。けど、最期のこれ言ってること違うよな?


やっと授業が完全に終了すると、俺たちは会議室へと向かった。

部屋に入るとそこには朝の人、森下先生、校長ともう一人、知らない男が立っていた。


「座ってくれ。」校長が言う。全員が座ると、唐突に男が口を開いた。


「私の名前は東野ひがしの 達也たつやだ。軍情報課の主任でね。まあこの地位にまで行くのには結構時間がかかったたんだよなあこれが。かれk―」

「その辺で本題をお願いしたいんだが。」ナイス校長!寝るところだった。

「すみません。では本題に移るが、君たちがアポカリプスB課の生徒で間違いないな?」

俺たちが頷く。

「突然で悪いんだが、君たちは人生で一度でも不思議なことにかかわったことがなかったかね?」

どういうことだ?不思議なこと?俺の脳裏を数日前の朝のことがよぎる。その時、


「どんな小さなことでも構わないか?」大雅が手を挙げていた。

「構わんよ」眉を動かす東野氏。

「何年か前、親と行っていた銀行に強盗が入って、人質として閉じ込められたんだ。犯人はとりおさえられたんだが、銀行のしまったドアが開かなくてな、キレた俺が本気で殴ったんだ。そうしたら穴が開いた。鉄の扉だったのにだ。あとからもう一度やってみたんだが、マジで痛かった。どうだ、こんな話でもいいのか?というか、あれは本当に鉄だったのか?」


「あり得ない。」

「嘘じゃないだろうな?」

「鉄に穴をあけるなんてことができるのかよ…」

「いや作り話か」

「面白かったぞ」

「…語り手の才能があったんだな、天手」 好き放題いうね!

「ほらあああああ!当然こうなるだろ?何でもいいっていうからあ!」頭を抱える大雅。可哀そうに。

しかし、この話はふつう信じられない。俺も驚いているくらいだ。

すると、今まで黙っていた東野氏がおもむろに口を開いた。


「いや、それで構わない。天手君、さっきの質問に答えよう。君が破ったのは確かに鉄だ。普通ではありえないことが起きているんだ。」

「なんで分かるんだ?自分でも信じられないくらいなんだぞ。」大雅は顔をしかめる。

「だからだよ。君があの壁を破った時、どうして誰も騒がなかったんだ?」

「信じられなかったからだろ。」

「ア…」拍子抜けしたようだ。首を振る東野氏。

「…とにかく、君のやったことはすべてリアルだ。他にもいるだろう?信じられないが故に忘れようとしていた出来事がある子。」

「実は私…」ゆっくりと手を挙げたのは火憐だった。

「私も」「俺も」「信じられないんだが」都合のいい波乗りしてきやがるなもう!

「そうだろう。ここにいる全員が奇妙な体験をしているんだよ。おかしいと思わないかい?そもそも、なぜ君らがスキル保持者の学校にいるのか、とか。」

腑に落ちないことが多いが、確かにこの人の言うとおりだ。いろんなことが重なりすぎて―

「わけがわからないよ」おいいいいい!

「ちょっ、誰だよ!今の俺のセリフだから!それに口に出すなよ!いろんな意味で危ないし!!!」

「落ち着かないかね?」にやりと笑う東野。

「落ち着けねえよ!」ああ疲れるな!

「おふざけはさておき、君らには話さねばならないことがたくさんある。しかし、そうすると時間がかかるんでな。まずは診断だ。すぐそこに実験室があるだろう。診断はそこで行う。一人ずつだ。じゃあよろしく。」というと、彼は部屋を出て行ってしまった。


「…何をするんだろうな」アポロが聞いてくる。冷静そうに見えて意外とうるさいな、こいつ。

「知るか」投げやりに答える。

「…なんか最近、俺に対する扱いが雑じゃないか?」

「そんなことないぞ」

「今のとか…」

「いつも通りだよ」その時、俺の名前が呼ばれた。

「行ってくる」

「おう、何だか知らんが頑張れよ」

実験室へ入ると、さっきと同じ顔触れがあった。


「では、私たちはその部屋で見ているから、待っていてくれ。」と言いながら歩いていく東野の野郎。

「ちょっと待ってください。何をするんですか?」

「君が体験したことをもう一度再現するんだ。では。」そう言うと、彼は何かのボタンを押した。すぐさま、かなりの速さで何台かのロボットが降ってきた。腕にはギア、あの時とおんなじだ。

「殺す気か!!」叫ぶが、何も変わらない。そして、カウントが始まった。






「1、スタート」同時に、ロボットが動き出す。

俺もあの時のように、拳を突き出した―





「気が付きましたか?」

目を開く。目の前が白い。

―見知らぬ、天j―

「大丈夫ですか?」


…いちいちタイミングよく遮ってくれるね!


横を見ると、あの朝の人がいた。

「俺、どうしたんですか?」まただ。全く思い出せない。

「戦闘を終えた後、意識を失いました。」

「戦闘?」そこで思い出した。俺はロボットと…

「―あの後、どうなったんですか、俺?」

「覚えていないですか?」

「何も思い出せなくて…」

「わかりました。結論から言うと、ロボットが完全に戦闘不能になりました。」

「またなんですね」

「詳細に説明すると…」


ここからは彼女の話だった。

俺の出した拳は一体目にクリーンヒットし、壁まで吹き飛ばした。次に、飛びかかってきたロボットの攻撃を肩でかわすと、一瞬で間合いに立ち入り、掌底をを打ち込んだ。これで2体まとめて撃沈。残り2体も、足をすくって肘を打ち込み動かなくなったという。


「―ここまでで約12秒だったんですよ。」

「俺が、そんなことを?」信じられない。俺はただの学生だ。増してやジーニアスをボコボコに…?って、

「なんか言葉遣い変わってませんか?」

「そんなことないわ。」

「いや、かなり変わってますよ…?」

「いいの。そんなことよりやっぱり強いのね、あなた。話は聞いていたけど、ここまでとは思わなかったわ。とても、その、かっこよかった。」

「!?」どうした??

「ねえ、あなたのこと、名前で呼んでもいい?」

「ちょっ、ちょっと待ってください。ええと―」

「葉月。川中かわなか 葉月はづきよ。あと、タメ口でいいわ。これでも同い年なのよ。」

「わかった。川中さん、いろいろ聞きたいことがあr―」

「葉月で良いわよ。それよりちょっとお願い。やらせて」

「やらせてって何をって、うわおああああ!!」いきなり葉月が抱き着いてきた!

「ちょっと葉月さん!?何やってるんだ?」

「いいの!少しだけだから!」

―3分後


「それじゃあ、またね。明日学校で。」去ろうとする葉月が、足を止めて振り返る。

「ああそうそう。これを渡すわ。これがあなたの。大事に使ってね。」というと俺の手に何かを握らせた。

「何だこれ」―コンタクトレンズ…?目は悪くないほうなんだがな。

「あなたのギアよ」そう言い残し、彼女は今度こそ去っていった。

ギア?また不可解なことが増えた。禿げるぞそろそろ!

「明日聞けるか…」そう思って、帰ることにした。

夕日がきれいな時間だった。俺の顔もオレンジだ。

のらりくらりと歩いて、自転車置き場へ到着。その時、人影に気づいた。


「誰だ?」


まいったな。さっきの診断(?)で、体力がほとんど尽きている。声をかけるのは間違ったか…

すると、人影が姿を現した。その人影は―


あの日助けた女の子だった。

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