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第一話

―マズいな


率直な感想だ。

相手は六人。体つきとギアから見てスキルはパワー系か。チンピラって本当にいるんだな。そう感じられる見た目だ。

...追い詰められている。

暗い路地裏。誰も気づきはしないだろう。


―非常にマズい


かといって、俺に何ができる?普通の人間がジーニアスの連中とやりあっても、結果は見えている。明日のニュースで、「入学式直前の災難」として小さく取り上げられるだろう。全く悲しい。

...。

.....!?

ニューガクシキィィィィ!!

そういえば、俺は入学式へと向かっている途中だったのだ。


「初日から遅刻かよ‥」


溜息。そしてまた気づいた。

俺の隣にいる女の子。俺の隣で震えている女の子。

この子も俺と同じ制服を着ている。つまり、彼女も特殊高校”アポカリプス”の生徒なのだ。


「どしてこんなことに‥」


「なんか言ったか!?」 チンピラその1が威嚇してくる。 いやそんなサルみたいな顔で言われても…


「ワイ達はな、その女に用があるんや」そういうのは違うチンピラ。「ワイ」ってなんだ?


けれど、それなら俺に関係はない。学校に行かねばならないわけだし、すぐにここをオサラバすればいい。

けれど...

俺の隣にいる女の子はどうなる?俺が去った後、こいつらはなにをするつもりだ?

考えたくもない。関わりたくない。逃げようか。そう思った時、女の子と目が合った。

怯えに満ちた目。泣きそうに潤む目。


「…畜生」


俺は腰を落とし、拳を握り、その手をチンピラ1の顔へと突き出した―




―――――――20分前


「運命の出会い」なんて、そんなもん無いに決まっている。

唐突に、そんなことが頭に浮かんできた。

俺は15年生きていまだに食パン咥えながら走って登校する女子高生とぶつかるどころか見たこともないし、道角で激突なんて、オバハンの乗ったチャリンコとしかしたことがない。よくもまあ、この世界の人間はありもしない妄想や作り話に胸をときめかせられるもんだ。などと考えながら、自転車で走る。

学校近くの交差点。信号は青。そのまま進む。

大体、ぶつかってきたのが同性の奴だったらどうするんだ?そんなもの愛さえあれば関係ないのか?嗚呼、なんか気持ちw―


「きゃあ!!」


突然の悲鳴と叩きつけられたような衝撃が俺を襲う。すぐあと、俺の上に何か重くて柔らかいものが乗っかってきた。


「ウウウ…」驚きと痛みでうなり声しか出てこない。まずはこの上のものを…

どかそうと手を出した。柔らかいなと感じながらてを動かしたその時、


「きゃあぁぁぁ!!!」


またもや悲鳴。そして気持ちのいいくらいの”バチン”という音のあと、俺の頬に鋭い痛みが走った。


「いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


なんという痛さだ。つか、そもそも叩いたのだれだ!理不尽な暴力に俺は戸惑う。


「痴漢…!!」俺の上から聞こえる声...上?

倒れている俺の上に乗っているのは、女の子だった。

と、いうことは…。手を動かす。さっきの感触は…。

「違う!!事故事故!ちょほっとm-」

「逃げてください!!」

「は!?」いきなりなんだ?言ってることがまるで分らない。

「来ます!!」いや誰が? と思って横を見てみる。何やらせまってくる影。その瞬間、俺は悟った。


―これ絶対ヤバいヤツや..


無意識に体が動いた。立ち上がり、自転車を立て直す。乗って準備完了。あとは―


「乗れ!」

「え?」 固まる女の子。ああ面倒くさい!

手を引っ張って後ろの荷台に乗っける。スタート。いける。道を曲がりに曲がり、自分さえもどこにいるか分からなくなるまで走った。ようやく止まり、角へ隠れる。このままいればバレるはずがない。


10秒後、

「おったぞ」

「早ッッッ!!」早すぎる。相手を見てみる。腕の装置。ジーニアスの連中か。

ほかの奴らも集まってきた


―マズいな 








目が覚めた。

白い天井。誰もいない部屋。俺はベッドに寝ている。

ベッド? 考えて、違和感に気づく。


―ここは、どこだ?


「ああ、起きた」  誰かの声が聞こえる。


「私が見える?自分が誰だかわかる?」


ぼやけていた視界が次第にはっきりしてくる。横に心配そうな顔をした若い女の人がいる。誰だ?

試しに聞いてみる。「ここ、どこですか?」

「保健室よ。アポカリプスの」

アポカリプス…

そうか、俺は…誰かを殴ろうとして…それから…

それから…俺はどうした?あいつらは、あの子はどうなった?

「あの、チンピラ達―」

「全く、初日からあまり問題を起こさないでね。ただでさえ、これから色々大変なのに…」 

「問題?」

「あなた、6人の男を戦闘不能にまで追い込んだのよ。凄い力の大きさだったから、すぐに先生方が気が付いて駆けつけてみたら、男6人とあなたが倒れていた。連れてきてみたら、一人はうちの生徒だった。だから、ここへ寝かせておいたのよ」


何…だと? 

俺が? 戦闘不能に? 


「でも俺、ギアも何もつけてな―」

「話は後。とりあえず、入学式よ。」そういってその女の人は部屋を出ていく。俺も慌てて後を追った。

講堂に着く。たくさんの生徒とその腕にあるギア。俺は当然つけていない。意味がないから。

そのまま女の人についていくと端のほうへ来た。指示された通りの席へ行く。その時だった。


―何か違う。


違和感がある。俺の周りは何か違う。けれど何が違う?頭の中で欠片が引っかかって落ちない。

隣をそっと見てみる。体格は普通。顔も普通。足も腕も調和がとれている。 ― 腕?

もう一回見てみる。無い。ここにいればあって当然なもの。”ギアがない”。

前も、後ろも、俺の周り20人程が、ギアをつけていなかった。



式が始まった。校長の長くつまらない話の後、新入生の宣誓がある。今、生徒が壇上に上がってきた。どんな奴なんだ?


その子は―


「……」 言葉が出ない


その子は、俺が一緒に逃げた子だった。



式が終わり、クラス分けの紙が配られる。本来1学年は7クラス、見込み(成績)の度合いで分けられる。

紙を見る。


クラス表の7クラスに俺の名前はない。しかし、クラスはそれだけではなかった。

つながった”A課”7クラスの表から分離して、もう一クラス”B課”と書かれた表があった。ただ、人数が圧倒的に少ない。A課は1クラス40人少し。B課は20人だ。つまり、今俺の周りにいる奴らがB課の連中だろう。


何故、彼らはギアをつけていないのか。

一体、B課はどんな生徒の集まりなのか。

俺が入学した理由は何なのか。

彼女が追われていた原因。

それを知るのは、もう少しあとになってからだった。



―にしても、校長ってやつは本当にハゲが多いな…







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