プロローグ;一般生徒と特殊高校
遥か昔、神々は地球を創造した。
星ができ、海ができ、大地ができ、生命を生み出した。
単純だった命は次第に複雑化し、人が誕生した。
神は人に知恵を授け、人類は今もさらなる進歩を遂げている ― が、ここに間違いがある。
現在この星で暮らしているのは、人類だけではない。 神も、その内に入っている。
神であったものも、地球人として暮らしているのだ。
ただし、一つだけ違いがあるとすれば、神には、それぞれが持つ能力が存在していた。火の神なら火の、医神なら医学の、という風にである。
この星で、人類と神は対等な立場で共存していた。
しかし、長い年月を経るにつれ、スキルを有する者は自らを「優等」という見方をし始め、スキル保有者を<ジーニアス>、非保有者を<ウィーク>と呼び、基本能力のない人類を下に見るようになっていた。
2065年、政府は体に着装しスキルを科学的に最大限強化、活用、制御可能にするサポートアタッチメント、通称”ギア”を開発。 これにより、人間とスキル保持者の立場の溝はより大きくなった。
スキルは15歳になったころ体に”診えて”くる。
人々は15の時に診断を受け、潜在能力の有無を確かめる。 ”見込みあり”と判断された場合、は見つかった才能を引き伸ばすため、特殊高校への入学となる。
名前を”アポカリプス”。「優等生」だらけの学校。毎年四月になると、新たな<期待の>人材が多く集まってくる。
そして今年も―
「ちぁ~す」
全く言葉になっていない「行ってきます」という意味のあいさつで、俺は家を出た。
自転車置き場へ行き、深呼吸。荷物を背負い直して自転車に乗る。
分かってる。家の敷地内でまでそんな緊張など”普通なら”しなくてもいいと。
それでも俺は、今日から始まる「普通じゃない」生活に緊張せずにはいられない。
俺― 夜盗 創守は今年16になる普通の人間だ。名前以外は。
人によって何を普通と定義するかなんて、誰しも違うだろう。しかし、そのことを考慮に入れたとしても、やはり俺は普通としか言い表せないだろう。名前以外は。
これと言って秀でた特技があるわけでも無く、ただ誰かに言われた通りに生きている。そのくせ愚痴なら一人前という有様だ。これを普通といわないなら、なにを普通といえばいいのか知ってたら是非連絡いただきたい。
今年の1月、能力の診断を受けた。 結果はまあ「見込み0」。 しかし、この結果の表現は酷過ぎやしないか?「0」ってなんだよ?変なところで人の心をえぐるような表記するなおい!
正直、少し期待していた。本当は自分にも何かきっとあるんじゃないかと。けれど、結果はこの現実だけだった。
残り2か月の中学生活は話したくもない。「あれは俺の黒歴史になる」で察してもらいたい。
そんなわけで、俺は今のままで生きていくつもりだった。はずなのだが―
海沿いの坂を駆け降りる。見えてきた。超弩級に巨大な敷地、その中にあるたくさんの施設、登校している生徒もちらほらおり、その体についている装置。
2071年4月8日、今日は俺がこれから3年間過ごす学園―アポカリプスの入学式の日である。