白い空間
全身が……いや、俺の存在そのものが白く塗りつぶされていく様な感じがした。
視界が白く濁る。
手足の感覚が無くなっていく。
抗うように声を出してみるが、音が出ていないのか何も聞こえない。
息苦しさは無いが、水中で溺れているような感じだった。
ゲームオーバー
そんな単語が頭を過ぎる。
俺は選択肢を間違えてしまったのだろうか。
もしあのまま前へ進み続けていたら、いずれゴールが目の前に現れたりしたのだろうか。
お前には遊びの才能が無い。
人の部屋に勝手に入って来ては、俺に向かってバカ兄貴がよく言っていた。
楽しむ為の発想力に欠けるんだとか。
ムキになって夏休みの間、毎日ゲームをしていた事もあった。
けれど、いつだってバカ兄貴が先にクリアしてしまう。
寝る間を惜しんで何時間もやったけれど、一度たりとも先にクリアできた事が無かった。
そんなバカ兄貴が考えた世界。
絶対に脱出してみせたかった。
誰よりも早く、速く。
なのに、こんな出だしで俺は躓いて一歩も前に進めなかった。
文字通りに。
(悔しいな…………)
何もできずに終わる自分が歯痒い。
なんて無力なんだろう。
なんてちっぽけな存在なんだろうか。
色々な考えが、まるで走馬灯のように駆け抜けた。
おそらく俺は、このまま消えて無くなるのだろう。
短い人生だった。
そんな思考を遮るように、ピーンという音が脳内に響いた。
コップの縁を指で弾いたような音だ。
音に合わせて一つの窓が開く。
そこには
“Mission completed”
と書かれていた。
「へ、任務完了……?」
俺の情けない声が、先程まで音の伝わらなかった空間にこぼれた。
信じられず、目の前の文字を何度も繰り返し読んだ。
頭の中で反芻し終わった途端、酷い脱力感が襲ってくる。
俺、すげー馬鹿みたいだなぁ。
たとえ心の中だったとしても、泣き言を言い、落ち込み、思い出したくもない過去を一つ掘り返してしまった。
やるせない。
……だからといって泣いてねーよ? 本当だよ?
涙なんて拭いてないし。
別に袖が濡れてるのは仕様だよ。袖きもい。
いや、自分で言ったんだけど。
***
-追伸-
自分で言うのもなんだけれど、今の俺ってすげー情緒不安定だと思いました。