行動開始?
気を失っている間に陽が沈んだ様で、辺りは暗い。
俺はどれくらいの時間が経ったのかを確認すべく、ステータス画面を表示させた。
時計の表示は無いが、あの謎のカウントダウンで確認できると思ったからだ。
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name:[未設定] Lv1
職業:[未設定]
HP/99999 MP/9999
AT/999 DF/999
MAT/999 MDF/999
TEC/999 LUC/999
[00:18:22]
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「…………マジか」
目が覚めるまでに約12時間も経過していた事に驚きを隠せない。
普段の俺が必要としていた睡眠時間は多くても5時間。
約、倍の時間が経っている。
生活管理はしっかりと出来ているつもりだ。バカ兄貴みたいにはなりたく無かったからな。
あいつと俺を比べたなら、俺の方が数十倍まともな自信がある。
もしかしたら俺は生死の境をさまよっていたんじゃないか? なんて思考が一瞬過ぎったが、直ぐに打ち消す。
世界の豹変ぶりに振り回されて疲れてただけ。きっとそうに違いない。
断じて現実逃避はしてない。
***
カウントが表示されているということは、タイムリミットになれば何かが起きるということだ。
残り約15分。俺はただ指をくわえて見ているつもりは無かった。
ゲームではどうだか知らないが、人生の主役。つまり主人公は自分なのだ。
他人任せでは何も解決しない。
それに誰かが勝手に役割を与えてくれる様なストーリーは必要無いのだ。
ましてやバカ兄貴が考えたシナリオならば、絶対に思い通りにさせるべきではない。
俺がさせたくないだけなのもる。
まず、邪魔をする為には情報を集めなければならないだろう。
出来れば仲間なんかも欲しい。
……でもあのオレンジ髪女は勘弁してくれ。出来れば二度とエンカウントしたくない。
こうしている間にも時間は減っている。
留まっている暇はないのだ。
ここが何処なのかは分からないが、行動に移るに限る。
***
手探りで扉を探してみると、意外と近くにあった。俺は迷わずに開ける。
部屋の外は窓があり、光が差し込んでいたので足元までよく見えた。
目の前にはありふれた学校の廊下が続いている。しかし俺の通う中学校ではない。
後ろを振り返ると、『体育館閉鎖中』と汚い字で書かれた紙が大量にはられていた。
その範囲は扉や壁、天井にまで及んでいる。
とても趣味が悪い。
そもそも鍵をかけずに閉鎖というのは成立しないのでは?
窓の外を見ると、月が赤い。
てっきり差し込んでいるのは街灯の明かりだと思っていたが、そうか月だったのか。
光の強さからして皆既月食という線は無いだろう。
「ますますファンタジーだな……」
この月は改めて俺に、バカ兄貴が世界そのものを本当に変えてしまったんだと、認識させるのであった。