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しにガミ  作者: 夢邑 ひつじ
第 10 章「再会」
45/48

#10ー3



「恭助!」

 階下にいた死神はすんでのところで恭助を受け止めた。

「大丈夫か?」

「う、うん……僕」

「遅くなってしまって申し訳ない」

 二人は声のした方を見てぎょっとした。

 大階段の踊り場にたたずむ黒い影。それは、まぎれもなく“猫”だったからだ。黒いつややかな毛並み、宝石のように光る瞳──“彼”は恭助のほうを見て、ぱちりとウインクした……ように見えた。恭助はハッとしながら、「公爵様?」

「ああ、そのとおり」

 猫は嬉しそうに答えた。

「馬鹿な……」

 死神は信じられないというふうに、目をぱちくりさせた。

「まあ、これはいわゆる“仮”の姿なんだけどね」

 二人の心中を察したかのように言って、黒猫はくるりと宙返りをした。あたりに白い霧が漂い、彼の姿をしだいに覆い隠していく。やがて、“彼”はひとりの人間の影になった。霧が晴れていくにつれ、その全貌ぜんぼうがあらわになっていく。ぴしっとした白いシャツ、黒のベスト、緑色のネクタイ。短めの茶髪。しわひとつない若々しい肌──その男性は黒いローブを肩に担がせながら、「やあ、ひさしぶりだね。恭助」

「伯父さん!?」

 恭助は素っ頓狂な声を上げた。

「どういうことだ?」

 死神も呆気にとられたようすで、「お前はたしか、自殺を図って……」

「ああ、それにはちょっとした事情があってね」

 恭助の伯父・神宮司は二人に歩み寄り、にっこりと微笑む。

「この霊体に戻るためには、ああするしかなかったんだ──心配をかけてしまったみたいで、申し訳ない」

「ほんとうに伯父さんなの?」

「ああ、恭助」

 恭助は懐かしいやら、申し訳ないやらで気持ちがいっぱいになりながら、「ごめんなさい、僕……あの時のこと、ずっと謝りたくて」

「いいんだ」

 神宮司はやさしく言って恭助を抱きしめた。



「何故、部外者のお前がここにいる?」

 死神は訳も分からずじれったそうに口をひらいた。

「ああ、実はね──」

 神宮司はそう言って恭助を腕から解放したあと、「私は“神宮司 透ではない”んだ──実の名は、エル。死神局で“局長”をやっているよ」

「局長だと?」

 死神は驚きを隠せなかった。

 死神局の局長・エルは不在と聞かされていたのである。

「ああ、君が知らないのも無理はない。何しろ、“君が死神になった頃”には、私はすでに人間としての生活を営んでいたからね」

「人間としての生活……?」

「もちろん、調査の一環としてだよ。【死神くずれ】のね──私はその中で恭助と出会い、この子が狙われていることを知った。ちょうど、10年前のことだよ。だから、保護する目的で一緒に暮らしていたんだけど……ああ、【死神くずれ】が上層部の中に潜んでいることは感づいていたけどね。まさか、彼だとは思わなかったよ」

 エルはそう言って踊り場を見上げた。

 グロリアは苦痛に呻いている。

「伯父さんは“死神”だったの?」

「ああ、そうなんだよ」

 彼はにっこりとしながら、「だましているつもりじゃなかったんだけど……ごめんな、恭助」

 恭助は力が抜けたように、その場にへなへなと座りこんだ。今までの恐怖から開放され、安堵すると同時に、伯父が死神だという事実に戸惑いを隠せなかった。

 死神も呆然とするより他になかったようだ。



局長ボス!」

 ホールに可愛らしい声が響きわたった。

 モノローグだ。黒いローブに身を包んだ彼女は、嬉しそうに恭助たちのもとへ駆け寄るなり、「無事だったみたいね、よかった……」

 と、安堵したように胸をなでおろした。

 モノローグの背後から二名の死神があわててついてきていた。きっと彼女の部下だろう。彼らは恭助たちに向かって一礼したあと、「──局長殿」

「ああ、ご苦労さま」

 エルはにっこりと微笑んだあと、「グロリアを頼んだよ」

「了解しました」

 モノローグは部下たちを引き連れ、大階段の踊り場に向かった。グロリアは片手で目を押さえながら、「馬鹿な……貴様は我が葬り去ったはずなのに!」

「ええ、一度はね」

 モノローグは縄を取り出し、鳴れた手つきでグロリアの身体を拘束しながら、「局長が助けてくださったのよ。もちろん、ゼロのこともね」

「シュヴァルツは……」

「すでに拘束ずみよ。一足先に“取調べ”を受けているわ」

 グロリアは悔しそうに唇を噛みしめた。





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