#9ー4
外には雪が舞っていた。
死神は恭助を抱え、息をつく間もない速さで駆けた──シャッターの下りた店頭をいくつも通り過ぎる。くるぶしまで積もった雪には足跡さえ残らない。明かりの消えた商店街は、凍りつくような静寂に支配されていた。
狭い路地裏に入ったところで、ここまで来れば大丈夫だろう、と死神はようやく足をとめた。蒼白い月明かりが彼の足下をぼんやりと映し出している。湿っぽい空気が肌にまとわりつくようだ。
「もう、大丈夫だから」
恭助は弱々しく言って、死神の腕から開放された。まだ若干の痺れは残っていたが、動けないほどではない。
「何があったのだ?」
「そ、それが……」
恭助は混乱しそうになる思考を必死に働かせ、死神に事の一部始終を説明した。自分の死は仕組まれていたこと、ゼロはハメられたこと、すべては計画されていたこと──死神は静かに耳を傾けていたが、やがて、「やはり、グロリアだったか」
と、ため息まじりに呟いた。
「シュヴァルツがそれらしいことを仄めかしていたから、まさかとは思ったが──おそらく、共犯だったのだろうな」
「シュヴァルツは?」
「ああ、あと一歩のところで逃げられた」
「そうなんだ……」
恭助はその場にへなへなと座り込んだ。
死神は相変わらず冷ややかな眼差しで、「大丈夫か?」
その言葉に恭助は驚きを隠せなかった。
心配してくれているのだろうか。
「う、うん……ありがとう」
「別に礼を言われるようなことではない」
死神は野暮ったそうに否定した。
恭助は少しばかり躊躇ったあと、「伯父さんの死も関係あるのかな……グロリアと」
「残念ながら、そればかりは知る由もない。基本的に“死神は自殺には関与できない”のだ」
「そう、だよね」
恭助はつらそうに目を伏せた。
(伯父さん……どうして)
自問自答を繰り返す恭助をよそに、死神はローブの懐から懐中時計を取り出し、「猶予はあと2日──時間がない。情報屋へ急ごう」
「え?」
死神は恭助の腕をつかみ、足早に路地裏を歩いた。




