♯5-1
悲しみを告げる鐘が鳴る。
街の中心から外れた場所に、ひっそりと佇む小さな教会――礼拝堂には、死者を悼むためにつどった人々が、白い百合の花を手にささやかな列をなしていた。棺には、死化粧をほどこされた恭助が横たえられている。
「恭助……」
神宮司は思わず口もとを押さえた。まるで、死んだとは思えない。今にもムクリと起きあがって、寝ぼけ眼で笑いながら、自分に語りかけてくる――彼は、そんな錯覚をおぼえた。
――ああ。なんだ、伯父さんか。
――悪い夢でも見たのか?
――いや、全然。そういうんじゃないけどさ……よかったなあ、と思って。
――何が?
――ううん、なんでもないよ。たいしたことじゃないんだ……それより、なんかお腹すいちゃったな。
他愛のないやりとりが脳裏によみがえる。あの時、恭助は何を言おうとしたのだろう。今となってはわからない。神宮司は、彼の亡骸を見つめながら、ただただ茫然とした。
別れの時を惜しむかのように、礼拝堂は静かな涙に包まれる。パイプオルガンの音色だけがやさしい旋律を奏でていた。参列者の中に、彼女の姿は見あたらない。
その頃、小林は公園のベンチでため息をもらしていた。そこは、高台にある城址公園だ。眼下には、彼女の暮らしている街が一面に広がっている。そこから、小さな教会も見えた。弔いの鐘が聞こえてくる。冷たい風が、彼女の頬をなでた。目の前には転落防止のための、柵が設けられている。ちょうど、彼女の胸のあたりの高さだ。木製のそれは、あちらこちらが黴びていて、少し力を加えたら折れるのではないかと心配になるほど、脆さを感じさせる。乗り越えるのは、簡単だ。
今にも泣き出しそうな曇り空。
小林は何度目かのため息をもらした。
彼女の傍らには、コンビニで買ってきたおにぎりやサンドイッチ、飲料水のペットボトルが入った袋が置かれている。昨日から家には帰っていない。といっても、彼女の家に帰りたくない事情があるわけではなかった。
「恭、ちゃん……」
小林は、おもむろに呟いた。




