月が出ない須臾の心根。2
「私には無理です、根幹から違いますから」
葉月は、目にかかった前髪ともみの毛を払いながら静かに答えた。友人Aの首根っこに指先を当て、肩から胸にかけてのラインに右腕を這わせて呟く。
「根幹から違いますから。私達は、細胞単位での機械化ですが、彼の場合はまるで違う」
「そうだな、彼の手術に関与した身として、それは重々把握している。私自身も驚きを隠せない設計だったが、友人Aの肉体は合金骨格にシリンダの筋肉、バイオマス炉の胃腸に生体ユニット被膜の露出部で構築されている」
「ならば、尚更に手が出せませんよ? 生体ユニットとは何処です、頭脳は?」
答えた過去さんへと、葉月が顔だけを向けて尋ねる。
友人Aの身体は、動くそぶりすら見せない。当たり前だ、人間ならば死んでいる。しかし、千切れたパイプの先が塞がっているその姿を見ると、実は生きていて気絶しているそれだけなんじゃないかなとさえ思えてしまう。
まるで、今すぐにでも身体を起こして、欠伸をしながら首を捻りそうなそんな雰囲気。奴には、殺してもしなさそうな頑丈さと力強さがあった。
昔、幼い頃にはただ頑丈な奴だと奴を見ていた。やがて、年を経て僕は、奴の事をコスモスの様だと思い始めた。野草や草木、痩せた地にも負けずに背伸びをして鮮やかな華を咲かせる。それが、どうともいえない一体感をもって奴、友人Aの誰彼構わずに振り撒かれる眩しい笑顔と重なるのだ。
そう、だから僕は諦めたくない。諦めたくないのだ、現在進行形でだ。
そんな時に、葉月は小さく言葉を漏らした。
「…………なら」
「え?」
僕は尋ねる。
すると葉月は、
「お父様なら!!」
「ああ……」
そう思い付いたらしい。それは、僕が真っ先に伏せていた解答だった。怨敵、とまではいかないまでも今日の事件の主犯格だ。それに、未来人を相手に潜伏していた僕がそう素直に姿を現すとは思えないのだ。
もちろん、運良く出会えたとしても手伝ってもらえないだろうという事が最もな理由だった。
僕は、葉月に対して、否定の意を表しながらに理由を求めた。
「無理だと思うけど、アイツなら直せると言うのかい?」
すると葉月は、少し表情を曇らせてから、明後日の方向に目線を泳がせつつも答えた。
「ええ、彼の……真っ先に手を付けて完成できなかった分野ですから」
「なるほどな、友人Aを再起させたくて未来のお前は無茶した訳か。あー重かった、あの無駄肉娘が」
カーテン奥から、過去さんが疲れた様に肩を揉みほぐしながら出てきた。もちろん、その後には乃々葉も続いて。
「つまり、残念ながら最後の望みは敵そのもの。何をされても、何も言えませんよ私達。どうしますか、お父様?」
「……おい、乃々葉、お前今……!!?」
“お父様”って呼ばなかったか――?
はいおはようございます!! 不思議展開、伏線展開上等な作者ですっ!!
最近はすっかり暖かくなりましたね。ええ、あたたたか……ああ、間違えました。ちなみに、ケンシロウの好物はカレーライスなんだそうで。
ええっと、今日はお時間が無いのでこれまでって言う事でどうにか。
次回は、何か釈然としない今回を紐解くのでしょうかね?
閲覧有り難う御座いました、次回に御期待ください。
また明日にでも、逢いましょう……ね♪
P.S.おうどん美味しい人狼楽しい! こんこんっ♪ わおーん!




