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裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。  作者: にゃんと鳴く狐っ娘
Never.【振り返れたら】
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とり☆ささみ

「久し振りだねーっ、とりささみ〜っ!」


 そう言いながら、ベランダの白鳩へと久音さんは飛びつく。マンション中階とは言え、翼が無い以上は人が墜ちたら即死である。それなのに、彼女はガバッと両手を広げて抱き付いたのだ。


 鳩が、まさしく豆鉄砲を食らった様な表情で飛び上がる。それでも、やはり懐いているらしく止まり木に止まる様に久音さんの腕に止まった。


 しかし、これまた性分というか癖は変わらない。やはり、僕はそのチキンちっくなワードに対して疑問を投げ掛けずには居られなかった。


「と……とりささみ?」


 ちなみに、今更ながらヒヨコは英語でチック(chick)という。別に狙った訳では無いが、××チックのチックはromanticなどの様にスペルが違うので注意。あ、要らないかこの注釈。


 と、1人で内心盛り上がっていたのが表情に出たのか、少しばかり心配そうに眉を潜めて久音さんは僕に答えた。そんな表情も、語る合間に解れていく訳だが。恐るべしとりささみパワー。


「名前……ですね。ええ、この子の名前ですよとりささみ。とりささみホラうわぁ可愛いですよ〜っ!」


 普段と違う口調。鳩を愛でる久音さんの声は、だんだん猫撫で声ならぬ鳩撫で声とでも言うべきなのか甘ったるい声色へと変わり、以前感じさせていた生真面目そうな印象をいとも容易く粉微塵に砕いてしまった。


 むしろ、そのギャップに僕の頬が蕩け落ちそうな勢いだった。事実、緩んだ頬が暫くは締まりそうにない。


 衛生面やらが危惧されるが彼女は無遠慮に鳩を撫で回していた。人の油は良くないらしいが、彼女のそれは大丈夫なのだろうか。非常に怪しい、見ていて肝を冷やす光景ではあった。羽がもげそうで見ていて怖い気持ちも僕には有った。


「とりささみ……」


 何はともかく、彼(彼女?)の安否に気が休まらなかった僕。その名前を反芻しつつも僕は、鳩に飛び付く久音さんがうっちゃけたハンドバッグやリュックサックをソファーの上に移した。


 そんな僕へと、瞳を輝かせて久音さんは頷いて答えた。ピョコンと、ウサギの様に跳ねる姿が非常に可愛らしい。


「はい! この子の名前は『とりささみ』なのです!!」


「トリ、それも鳩の名前に鶏肉の部位ってどうなのさ?」


 と、抗い難きツッコミの血脈に僕は流されてしまう。流れを断ち切れなかった事、それが長きに渡るとりささみ戦争を呼び起こすだなんて当時の僕には分からなかったのである。


「トリを鳥と呼ばずに何がササミですか!!」


 そんな僕へと、久音さんが最早理解不能な超次元理論で燃える様に熱く語り始めた。正直言って、僕としてはどうでも良かった。


 しかし、数年ぶりに覚醒したこの特性を抑え込む事は僕には不可能だったのである。


「意味が分からないよ!! なんだよ、鳩か軍鶏が烏骨鶏かぐらいハッキリさせろよ!!」


 もういっそ、この際“ぼたん”という猪だとか某グランドパレスの非常食雄鳥とこの鳩が同列でもいい気がしてきた。扱いとしては最早、鳩扱いされていない時点で最底辺ではあろうが。


 許せ、可哀想なとりささみよ。僕はお前を忘れない。そう内心に呟いた僕。


 その態度を読み取ったのか、またしても久音さんが追撃してくる。何故こうも必死なのだろうか? 恐るべし、とりささみ。お前は、こうも久音さんを変貌させると言うのか。


「鳥じゃないですか! 胸の筋肉、凄いじゃないですか!」

「だからといって、鳩胸イコールささみは無いだろうに……」


 すると、顔を真っ赤にして弁明する久音さん。必死こいた姿が可愛いには可愛い。ただ何より、強く抱かれた鳩が一番必死ではあるが。


「わっ、私が言うから良いんですよっ!」


 さも予想外といった様子で、口と左手の甲を寄せて後ずさる久音さん。


「あれ、まさか知らな」「そんな訳が、な、無いでしょうに!! わ、わかか、分かってますよその位!」


 その割には必死である。


 一体、とりささみの何が彼女をここまで駆り立てるのだろう。それが僕には不思議であった。どうにも、彼女は歪であると、過ごし初めてまた僕は違和感を覚えた。


 遥か昔に感じた違和感、誰かに覚えたその対象すら定かでは無い色褪せた感覚。セピアの景色、あの夏の断片と青空が頭を過った。


「私が一番、この子をきちんと語れるんです!!」


 と、またしても意味不明な切り口から久音さんが語り始めたそんな時、部屋の中へとインターホンが響いた。途切れた会話、丁度良いとばかりに僕は逃げ出す。


「出てくる、悪いね?」


 そう断ってから引き戸を閉める。それでも、ドアの向こうからの声は止まない。


「鳥とはですね…………なんですよー……ええ…………チキン!」


 僕は、ただ苦笑いする以外に道は無かった。

 2日も遅れてすみませんでしたぁあああああああはっ☆ どうもこんばんちわっすー作者で〜すっ!


 えーっと、今晩はテスト間近という事でチビチビ休憩がてらの寄せ集めです。タイトルは異色な不真面目ギャグ炸裂弾頭版です、何がしたかったのだろうか私は。


 今回、久音さんを含めてイメージ崩壊満載なテイストに仕上がっております。いやなんというか、ただ堅いだけの美人さんじゃないのが彼女なんですよ!


 久遠じゃないけど、たまに久遠以上にぶっ飛んだ1面を見せ付けてくれる訳です。だがそれが良い、そうなる様な久音さんで有りたい。


 最近、コンプレックスイマージュなるひぐらし主題歌にはまっています。今更ながらにひぐらしと似てますねこの話も、まあループ成分とキャラクター性重視、先に謎を山積みにするスタンス位ですが。


 取り敢えず、クライマックス読むときなんかは是非とも別タブなんかで開いてみては? いやまあ、あくまで雰囲気だけですけど。


 さあて次回は久し振りの来客です。まだテスト期間ゆえに投稿日時は不安定ですが、とにかくこっからは絡まりあいが始まります!




 歪んだ未来、狂い絡まる因果と画策。脈絡の無い既成事実のデフラグ、破綻しかけた物語の1面。


 ある日、僕は天使に逢いました。泣いた彼女は微笑みました、


『ありがとうございます、おと……一喜憂様』



 拙い言葉に短い言語、それに纏わる真理も知らで。


 あしたは、明日は来るのでしょうか?




 さて、おやすみなさいまた明日にでも逢えましたら。それでは、また明日にでもまた逢いましょう……?


P.S.ドラマチックフライトシューティングゲーム、EFFYのシナリオが凄すぎて素敵。オススメだよ!

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