浮かんだ純白、響く鐘の音。
「こんにちは。お久しぶりです、或いは『初めまして』が妥当でしょうか? 2人とも、結婚おめでとう」
披露宴、祝辞に立った1人の女性。本人いわく天津風一族の本流、より有名な裏社会――実は妖怪社会――の筆頭らしい。
実姉が1人いる中で、久遠と同じく次女として家を継ぐ事になったという何処かミステリアスで不可思議なオーラを匂わせる女性だった。唯一の跡取りが、幼少時代に目前で失踪したらしいとは聞いていた。それ以上は、久遠は何も言えないとの事だったか。
この科学一番のご時世に妖怪という場違いな存在。その言葉が真実の意味で妖を指すのか、或いは何らかの例えとして使われたのかは未だ聞けずに居たままだった。いつだったか、彼女が背後へと隠した脇差、そしてブツクサ虚空に呟く訳も僕には何一つ分からなかった。
長い亜麻色の髪に、絡めた3つの水色リボン。少女の様で大人みたいな不思議な人、歳はおおよそ同じらしいが名前も見た目も久遠そっくりな――まるで、ドッペルゲンガーみたいな――どこか、作り物めいた女の人だった。
「久遠の従妹、しかし言うなれば久遠の姉貴分のクオンです。可愛らしい姉でした、もう1人の久遠さん……永遠にお幸せになってくださいね?」
隣の久遠、感動に泣き張らしたその頬が赤らむ。そんな彼女にクオンさんは続けた。
溢れる涙、止まらないそれをどうにか目蓋で押し留めた。クオンさんの、今となっては嫁に似た声が響いた。
「私の名前は久しい音、読みを変えれば『ひさしいね』と書いて久音。漢字2文字の珍しいコラボ、あるいは永久の音色を示してか久音といいます。久遠、貴女にはずっと前からお世話になりました。七ヶ崎一喜憂さん、貴方が我が家系の子を嫁がせる合間に並々ならぬ努力があったと思います。今は、それを評したい」
そうだった、彼女の家は仮にも名家。久音さん程ではなくとも、充分に良い所のお嬢様だったのだ。
きつかった日々、頷かない家族と頑ななお義父さんの渋面を思い浮かべた。苦しかった説得、そして数年ぶりの父親という存在に胸がやけつく。
すいません、編集中ですが一応です。(少し改変 1/27/21:57
続きは、また後程にでも書きましょう。
P.S.朝、時間が無いのをお許しください。




