堕ちる帳と福音と。
「…………仕方、ないよね? だって明日が来ないんだもの」
仕方がないよ、と空の上から少女は呟く。目線の先、見下ろす眺望には闇に堕ちるコンクリート校舎が音もなく鎮座していた。少女は翼で飛ぶでもなく、ただ立ち尽くしたままにそれを見下ろしていた。ある意味では、見守っていたという方が正しいのかも知れない。
「ねえ、貴女が忘れた私の名前……きっと、思い出してくれないね?」
ツインテールを包んだウサギ耳パーカー、その白いフードを脱ぎ、少女はその手でジーンズのポケットをまさぐる。手に掴んだ冷たさ、取り出したそれを色白な指先で転がす。《メンインブラック》、彼らの用いる記憶でっち上げ装置であるそれを見詰め、少女は再び呟いた。
「私の名前は乃々葉じゃない、私の名前はアニュスデイ……ふふっ?」
ピカッと、網膜に景色と言葉が焼き付けられた。総ては機械の成すままに、全ては因果の絡まるままにと少女は呟く。乃々葉、いや――神の子羊――アニュスデイは瞳を閉じ、そして見開き小さく告げた。暮れゆく世界に福音を、綺麗な冷たい声が満天の星空へと密かに響き、そして消え去る。アニュスデイ、救いの少女は微笑んだ。
「お願いみんな。世界の為に、死んでね……? そう何度も、何度でもね」
バサリと舞い上がるパーカー、翻るその身は溶ける様に闇へと潰えた。
『君らが死んで、報われる世界が“此処”にあるんだ。
――未来、そこに君は世界に何を望んだ? ――
なんて、ね……?』
◆◇◆◇◆
「んっ……うぅ、一喜憂……さんっ!」
ハッと意識が覚醒する、葉月が目覚めた時、そこには知らない天井が存在していた。
「起きたんだね? つ~っ……傷口、私みたいに痛まない?」
声の方へと視線を向ける、ベッドの上には膝を立てて座る久遠。彼女は立てた左膝の傷口へと脱脂綿で薬剤を塗り込んでいた。染みるのだろうか、月光に縁どられた姿はびくんと時たま跳ねては震える。恐らく此処は保健室だろうか、そう考えれば止まない汗にも納得がいった。
全身が熱い、身を包む包帯の性でも重くかさんだ羽毛布團の仕業でもない、全身が傷口へと抵抗していた。ひりりと痛む傷口の数々、トクトクと流れる血潮に呻く喉奥、瀕死じゃないかと勘違いしそうな息の苦しさ。どうやら、視界が戻っている辺り無事だったらしい。葉月は先の戦いを思い出し、少し悔しい想いを感じた。
「……みんな、は?」
「さあ、どこ行っちゃたんだろう。ね……」
寂しげな2人、影を探すもそこには誰も居なくて。
時間がないので、手短にですが失礼しますね? こんばんわ作者です、ついに出せましたよアニュスデイさん! いやまあ、読者の皆様からすれば誰これって状態ですよね?
ええ、そうです。それが正解でいいんです。
彼女の存在意義はまだありません、彼女の行動理念も闇の中。本来ならば『久遠の時を握り締めて僕は今』辺りには出番があったはずの新キャラさんです、素晴らしいですね、狙いすぎた不思議キャラです。
この予定の狂い具合は救えませんよ……なんてまあ、大分予定が狂っているのは前からなんですけどね? むしろ、下手すれば某幻回の2人と同じ扱いになってましたよ、彼女。まあ、ある意味シリーズ通しての顔になるかも知れませんけどね? 深い意味はないです、はい。
にしてもですね? アニュスデイ、その意味が宗教関係だったりするとかも深い理由はないのですが、彼女が私にとって大切な存在なのは確かだったりします。乃々葉はこの作品のキーワードというか、意味不明の頻出単語でしょうね? 事実、そうなんだとは思っています。
だって、これで乃々葉は三人目ですよ?
……まあいいです。
時間はないので落ちますが、最後に豆知識をひとつ。映画『メンインブラック』で用いられる、チカッと光る記憶でっち上げ装置の名前は『ニューラライザー』というそうです。ただ、登録商標だそうなので創作上での扱いにはご注意くださいね? 本作に存在する装置、機能性能は同一ですが、名前は確か……ニューなんとか、そういった感じの名前だったと思いますよ? 忘れましたね、きっとそうです、忘れたんです。
こう、チカッ☆ とね?
さて皆さん。おやすみなさい、また明日にでも逢いましょうか? どうにか努力はしますから、是非また次回に逢いましょう? 明日の投稿間に合うかの保証は無いですが、取り敢えず寝ますね?
貴方に幸せを、どうか夢が消えなき様に皆様へと祈ります。
おやすみなさい、良き夢を貴方に。
P.S.頭の中身が重いです、主に作者人格起動に目一杯なのが凄く辛いです。




