骸ノ引キ金
未来ガジェット八号機《誰も知らない物語》、その黒い銃身が唸り、乾いた音に重なり螺旋を描く弾丸が吐かれた。
時間がゆっくりと流れる、脚を踏み出した友人A、彼に向かって直進する弾丸、彼と過去さんの延長線上、未来さんが叫んだ。
「やめろぉ――――っ!!」
駆け出していた友人A、彼が振り向く事など無かった。弾丸はその頭頂を掠め、背後に居た未来さんの頭上を行き過ぎた。ズギュンとした鈍い音、それと同時に背後から爆音が響いた。
爆ぜた燃料タンク、食い込んだ弾丸の特殊火薬が炸裂して細かく砕けた。
しかし、それだけでは終わらない。2発3発と続けて放たれた弾丸、詰まっていた薬莢がバラリと跳ね、その弾丸もまた友人Aへと直進する。
カチリと響いたトリガー音、煙を吐いた銃口に地に落ちた2つの薬莢、それが物語る発砲、友人Aの右腕が空中に舞い、その肩へと弾丸が食い込む。
「かふっ……!」
声にもならない苦痛、しかし飛び散るのは鮮血だけではなかった、茶色に近い半透明の液体、それと同時に爛れたケーブルが四散する。
地に落ちたケーブル、それが血溜まりでびくんと震えた。
「や……おま、や……」
未来さんの弱々しい声、彼女は両手で口を押さえながらも後退りをしていた。流石にショッキングだったか、見方によっては人間以上にグロテスクな傷痕に未来さんは膝から崩れた。
対して、過去さんは力無く笑っていた。友人Aの片腕に抱かれて、だくだくと漏れ出す赤のオイルをその見に浴びつつ。
「は、ははっ……」
チリチリチリ、焚き火の様な焔の音色。未来さんが啜り泣く、それに続いた咳と嗚咽。ドロリと溢れた床の液体、朱と混じった明るいオレンジ。異様な香りに異様な景色、崩壊の中、友人Aは抱懐を呟きに漏らした。
「姉さん、いや未来さん……俺は、好きでいるんです」
「何……が、だ?」
答えた未来の未来さん、過去さんはただ起立のまま抱かれていた。向かい合って居た乃々葉は呆然とし、膝の上の少女はいまだ寝ていた。
静寂、僅かな環境音だけが縁取る紅の中心で2人は言葉を交わしていく。友人Aと過去さんと、時を忘れた2人の間を呟きだけが往き来していた。
「貴女が、ですよ……?」
「…………そうか」
短い応答、友人Aの身体がミシリと音を立てて軋む。そして、また声は響いた。
「俺はね、俺は……、貴女が好きなんすよ? 凄く……何よりも」
「ならば……」
ガタッと椅子が倒れる、過去さんの腰掛けていた椅子。そう言えば、友人Aを団員その2と言った時にもその椅子を見ていた。
朧な“初めての今日”の記憶、思いを馳せている間にも2人の会話は進行していく。友人Aの後ろ姿が傾く、力無くも首を傾げて背中は揺れる。
「…………なら、ば……?」
「ならば、ならば何故! ならばどうして、どうして私の誘いを断ったのよ!! 私は、私はな……お前、お前を救ってやりたくて……!」
「……余計な御世話ですよ、姉さん」
「ふあっ!!!?」
言葉にならない心の悲鳴、俯いて叫んだ過去さんが友人Aを見上げた。友人Aは過去さんの額へと弱々しいデコピンを浴びせ、またも呟く。
「だから小さい、だからそんな幼いままで……態度ばかりが、膨らんでいくんすよ姉さん」
その言葉に、声だけ不貞腐れた様に未来さんが答えた。拗ねる様に唇を尖らせてはいたが、肩は変わらずに震えていた。
「……好きで小さい、悪かったなー」
それに対し、友人Aは諭すように続ける。今度は背丈を比べて、ぎこちない動きでジェスチャーをしていた。
「良いですか姉さん? 俺は姉さんが、未来さんが好きなんです……。つまり、貴女を守れりゃもう……それで良いんっすよ、俺は」
「や、……ヤれなくても、か?」
友人Aがブフッと吹き出す。唾と赤い血、それが奴の手に斑点を浮かべていた。右腕はもう、動く素振りすら無かった。
「男じゃ……ないんですから、未来さん。貴女は、女の子らしく……笑うべき、ですよっ?」
「余計な……御世話、だ……」
過去さんが無理に浮かべた微笑みで強がる。無意味、何故かそんな言葉が浮かんだ。
「「…………馬鹿」」
ムクロノトリガー、続いちゃいますよ。作者ですこんばんは、今日もどうにか更新できたよ!
明日検定だけど、眠いから寝るねお兄ちゃん! おやすみなさい、また明日ね!
P.S.今日は寝させて、また明日にでも、逢いましょう……ね?




