無理を承知で挑む者ほど。
唐突に聞こえた少女の啖呵、未来さんが玄関前から此方を見ていた。晴れの嵐に舞い踊る白髪、宵と夕との境目の色に染まる、徐々に、徐々に白亜はオレンジへと果てていく。
「み……未来さんっ……?」
小柄な少女、彼女はその手を振り上げた。バチバチと、爆ぜる電気が指先で暴れる。それを構え、振り下ろしながら彼女は叫ぶ。小さな身体に大きな叫び、それが雨色の夕焼けへと響き渡った。
「少年よ、手前の悪事を打ち砕けっ!! 貴様がやらねば誰がやる、お前がそいつを覚まさせろ!! 未来のお前が馬鹿ならば、お前が殴って更生させろっ!! さあ、覚悟しろ……こいつは痛いぞ、超泣くぞ!! 走れ――っ!」
ちょっと待ってと、それすら言い返す暇もなかった。振りかぶった未来さん、彼女はお決まりの口上を叫び、数瞬の間も無く電撃を放とうとしていた。足元には水たまり――さっきと同じ状況――そこを伝う電撃の波、しかし、地面にはまだ久遠が倒れていたのだ。
「久遠がっ!!」
「にゃにゃっ!!?」
何事かと言わんばかりに驚く八代、それを無視して未来さんへと問い掛けるが、その時既に未来さんは地面へと右手を叩きつけていた。
「……悪く思うなっ! 私のジョー●アの恨みだぁあああ――――っ!!」
「食べ物の恨みにゃのかっ!!?」
――むしろ、飲み物だろうに――要は姉妹喧嘩の域らしいが、普通に考えてもシャレにならない気がしている。しかし、思いの外電撃は弱かった。前回は加減出来なかったのだろう、今回はむしろ心地いい程度の電流だった。
雨、薄くきらめくずぶ濡れの地面を、強く蹴って駆け抜ける、目前の八代へと、《アバターエヴァン》の少女へと、迷う事なく右腕を突き出す、五指を広げ、その中に見えない力を溜め込んだイメージ、それを強く突きつける。そして、僕は彼女に突っ込んだ。
「お前が、突っ込んでるんじゃ……ねえよっ!!」
炸裂する磁気、僕には見えない力が八代へと直撃する。こちらを見て、にやりと笑った未来さんを見る限りは成功らしい。久遠もどうやら無事らしく、気付けば、放電後に駆け出していたらしい未来さんの腕に抱かれ寝ていた。
「にゃ、にゃ……う……うぅ…………」
軽くコツンと手刀を下ろすと、ぐらりと彼女は崩れて倒れた。
「雨は、そろそろ止みそうだ」
未来さんがふと呟いた。今となっては救いの雨、僕へと電気を運んだ雨は確かに雨足を弱めていた。それに対して、僕は呟く。
「ああ……嫌な、雨だったね」
「そうだ。だがな、今日はすぐには終わらない……きっと、寝れんぞ」
眠れない夜、釈然としない朝より、それはどれほど美しいのだろうか。
彼女の後を、預けられた久遠を背負って追いかける。行き先は保健室らしい。
「葉月も運んでおいた、後で奴に礼を言うといい」
目線だけをこちらに向けて未来さんはそう言った。しかし、そんな彼女はやたらと周囲を警戒しているようにも思えた。おそらく、何処かに敵が潜んでいると睨んでいるのだろうか? その瞳は、まるで見えない誰かに脅しかける様に鋭い物だった。
「何があったんです?」
「未来のお前……らしき野郎が上に居たんだ、部が悪かったから逃げてきた。きっと、あやつがある意味ラスボスだろうな。おそらくだが、奴が止まれば……きっと、ゆっくりと眠れる筈だぞ」
「そう、ですか……」
薄々予想は出来ていた。未来の未来さん、所謂過去さんがやって来た事、それを考えると他の未来人が言うように奴が来ていても不自然ではないと。未来の僕、指名手配犯も同然な《タイムスリップ》理論の開発者、本来葉月達の敵であった時空逃亡者。そんな彼が、此処にいてと不思議じゃないなと、僕は薄々感づいていた。
「お前は今、死にたいだなんて思っているのか?」
未来さんが訊ねて来た。
「…………何故です?」
「七ヶ崎乃々葉を殺してしまった、今ならまだ……やり直せるぞ?」
「僕には、彼女が死んだとは思えません。今頃――」
言いかけてまた気付いた、僕は再び忘れていたのだ。確認に行こうとした所を、僕は未来さんに引き止められた。背中に久遠も居るし、そうなるのは当たり前ではあるのだが……、
「もう、必要ない……雨で、消えてしまった。そう、考えてはくれないか?」
「…………」
「少年よ、いや一喜憂よ……。私の手、未来の私に踊らされるなと、私は自ら進言したい。彼女は、そして私は――思いの外、汚い人物かも知れないから――な……」
そして、僕らは保健室の中へと踏み込む。哀しそうな彼女の目、それを見ながら、僕は背後に気配を感じていた……。
「夕焼けこやけの赤とんぼ、か……?」
お久しぶりです、更新遅れて申し訳がありませんっっっ!!
とまあ、作者でございます。すっかり間が開いてしまいました、今回も作品執筆がはかどりませんでしたね。もう言い訳しません、ほとんど書く事が出来なかったのです。気力的にも、時間的にも。ダメですね、これじゃ。
さて、こんばんは。最近は教養とか、生き方に関する本に惹かれております作者です。それも原因の1つです、別な本も読んではいました。しかし、意外にも為になりますよね、人生観の本も。
作者は、哲学やら人間の考え、行動には詳しくないのですが幾つか気になっていた物があります。処世術です。作者は上手く生きれない弱い存在なのでした、今も案外変わりませんが。
あれですよ、典型的な便利な人でした。
褒めてくれる人は居ても、「優しい」とか「気が利く」でした。要は単なる便利屋だったりした訳ですね、半端に世話焼きなのも災いしたのではないのでしょうか? 扱いやすい、便利な人物だった訳です。
それでも、他人に比べて目立つ事も評される事もない。あくまで、その人を立てる為の1パーツだったりする訳ですね。自分は、取り立てて優れた箇所も見当たらない普通の人だった訳です。普通の人、つまらない人が私でしたから。
それでも、読めば「変われるかも……」と思えた本はありましたね。
随分と読みあさったのでタイトルは忘れましたが、小説やノベル、伝記や古典以外にも本は色々存在します。物語以外にも、読む価値のある本は億と存在しますので是非、普段読まない本も読んでみてください。
きっと、新しい発見が、ありますでしょうから。
では、今夜はここまでです。おやすみなさい、また次回……間が開けばごめんなさいですけど、逢える時に逢いましょう? ……ねっ?
P.S.時間は有限、時は無限と続いてく。その僅かな須臾の狭間に、我が世の華を、見付けて満たれり。そう有れば人、心の温度温まりて、君の元へと、想いと温きを分け与えれぬかな。




