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裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。  作者: にゃんと鳴く狐っ娘
Loop.2#【jihad 明日を探して】
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逃走迷走混沌ヴィヴァチェシモ

「良かったんですか、未来さん?」


 友人Aは唐突に訊ねて来る。時は夕暮れ、駆け抜ける廊下は人影も無く静寂、先ほどのやり取りが嘘の様な別世界が広がっていた。外には雲1つ無い、しかしそこには降りしきる雨が確認できた。仄かに感じた違和感に、首を傾げながら私は訊ね返した。


「何か……問題でもあったか?」


 すると、友人Aは何かを思い返すように考え込み、いつもの彼にしては自信なさげな小さい声で答えた。


「ワクチンですよ、ワクチン注射」


「ああ、《アバターエヴァン》のか……」


 痛い所をついてきた。そう思い私は顔をしかめる、階段への曲がり角を曲がりながら、視界の隅奥に見えたパソコン室を見詰めて私は、


「仕方が無かろう。あやつが何をしでかしたか、或いは何をしでかすかだなんて到底理解できまい? それにな、あいつはこうも言っていた。『何、この時代でも量産は可能さ。ワクチンも、ナノマシン注射もね』……とな。ならば、時間はかかろうと私が……!」


 そこまで言って、それでも私は断言できなくなってしまった。何かも良く分からない存在、確かに私の中にも居るのにまったく別の形式と力を持つ存在アバターエヴァン、そんな吃驚人間兵器を治療だなんて到底なし得る事は不可能の様に思えていた。


 私の心残り、気の迷いはそれだった。乗るだけ乗ってしまっても良かったのでは無いのだろうか、何度もなんどもそう考えてしまうのだ。今回ばかりは、私は自分の決断を正しいとは言い切れなかった。悔しい、今更ながらに悩んでしまう自分を私は許せなかった。


「そう……ですか。あとですね、未来さん?」


「どうした、まだ心残りがあるのか?」


 辛そうに目を伏せ、そしてどうにか顔をあげてきた友人A。彼の様子が不安に思えて仕方が無い、何かをずっと引き摺っているような、それもパソコン室に入る前からもずっとだった。そういえば、先程から呼び方が未来だったり姉さんだったりと不安定な気がする。


 未来の私、過去とやらと出逢ってからだが、きっと終始理由は語らないのだろうなと私は憶測している。きっと、彼の言えない未来の事に関わっているのだろう。だとすれば……と、予想通りに関係のない質問を友人Aは飛ばしてきた。


「いや、むしろ素朴な疑問ですかね。どうして、『少女達』って複数形だったのかなって思いまして」


「ああ、それ? 勘だよ勘、未来ネットで噂だったからね。青少年連続失踪事件、あれ実は女子ばかりが被害者だから変態きたんじゃね? 性少女連続誘拐事件なんじゃね? なんて、そんな話題が随分と流れていたからな。私もスタンガンくらい持つべきかと調べていたのさ」


「全然勘じゃないじゃないですか!! しかも、姉さん卑猥ですし、何より姉さんスタンガン要らないじゃないですか!!」


 うん、ツッコミは冴えてるんだよツッコミは。しかし、やはりどうも釈然としない。嘘を吐かれているというか、隠し事をされているのが気に食わないのかも知れない。我ながら乙女だなぁ、そんな風に思ったのも束の間だった。


「ねえ姉さん……」


 急に、立ち止まった友人A、彼を見向いた私に彼は言った。敢然と、正面きって話をして来た。差し込む夕焼け、それは不穏な雨に屈折して独特の色味を成す。ストライプの夕焼け、そんな変わった空間内で向かい合う時だった。


「姉さんは、俺を人だと思ってくれます?」


「お前はお前、人かどうかなんて些細な事だろうに。私も半分化物だからな」


「あはは、そうでしたね……」


 気付いてくれたのだろうか、友人Aは苦笑いをする。奴の悩み、その1つにターミ●ーターちっくな存在だという事が存在したのではないのだろうかと、今の問い掛けに私は思った。友人A、奴は人知れずに悩み続けていたのかもしれない。自分という生き物の真意を。


 ならば、私とて同じだろうに。そう言ってはやった、しかし……改まって考えると、やはり辛い物なんだなと思ってしまう。どうして、どうして私達は半端者なのだろうな。神が居たら殴ってやりたいと思う、切実に、それも泣くまで殴るのをやめない。絶対にだ。


「お前の悩み、それだけで良いのか?」


 事実、私の涙は隠せたのだろうか。私の瞳は潤んでいた、少しばかりなら睫毛を摺り抜けたのかもしれない。冷たい頬の感覚、それは感情論の感覚、或いは涙粒の気化熱なのだろうか。


 精神か実体か、それはおそらく両方だろう。涙はきっと、片方だけでは涙と言わない。悲しみからの肌寒い感覚、それに気化熱での体温低下が合わさって、涙は涙として心身を濡らしてしまうのだろう。


 らしくないな、私らしくない。


「そう、らしいっすね」


 嘘だ、お前らしくない。


「……そ…………う……そ……」


 喉が、喉が痛くなってきた。不思議だな、体調だけは万全なのに。


「嘘だ……嘘だッ!! 嘘だあ!!」


「ど、どうしたんですかっ……どうしたん……すか、姉、さんっ!」


 らしくもない、これじゃあまるで……ヒロインと主人公じゃないか。


 らしくない。子供みたいな私、甘えん坊な私だなんて、私……らしくない。


 焼け付くように痛む喉、嗚咽、とめどない涙、立ち上がれない足に、頬を拭う事しか出来ない私、何もかもが……嘘だと思いたかった。


 なんなんだろうか、今日は。そして、私達は一体何者なのだろうか。不毛、そして果てし無く自虐的な自問自答が私を壊し続ける。もう、おかしくなってしまいそうだった。2人で泣く、恥も苦しみも打ち捨てて、何もかも忘れて泣き出していた。


「くそう! くそっ、くそっ!!」


 気丈な友人A、思えば彼は言っていた。


『貴様に“俺”だなんて背伸びした言葉、これっぽちも似合ってねえぜ?』


 案外、彼も背伸びをしているのかも知れない。そう思いながら、泣き止んだ彼へと身体を預けた。やはり彼は強い、私はそう常々思っていた。そして今日、彼が耐え、苦しんできた物を理解したら尚更そう思えてしまった。


「う…‥、うぅ…………ひっく」


 でも、それでも、私が知る彼の苦しみなんて断片ばかりだ。


「姉さん、涙……玄関前までには、拭いときましょうか……」


 音もなく頷く私、彼はそれを抱き上げて走り出していた。情けない、私ってば本当に情けない物だね。素直にもなれず、気丈にもなれず、誤魔化してばかり。そう、頭の中で幼少の日の私に囁かれた気がした。


 そうだ。涙、拭かないと。

 こんばんわ、作者です。最近予約投稿機能をいかせてません作者です、はい。


 新年だからか、忙しいような寂しいような不自然な毎日を送っております。まあ、4日から部活開始で普段の毎日なんですけどね、私は。まあ、運動しなきゃ身体がなまりますしね。


 そういえば、『1000兆円あったら仕事する?』みたいな記事をどこぞで読んだのですが、やはり働く人が多いみたいですね。まあ、餓鬼相手に聞けば話は別なのでしょうが、やっぱり生きがいは苦労の中やその後に見いだせるんですかね? 仕事終わりのビール、それを味わえる未来が楽しみです。


 ちなみに作者、こんな事をいっておりますが飲酒経験も喫煙経験も無い優等生だったりします。成績は振るわないけどな!! 震えるぞハート、燃え尽きるほどにヒート!! ああ、燃え尽きますとも。


 真っ白にな……。


 ……コホン。以上、燕の子安貝で子安を連想した作者からでした~♪


 取り敢えず、次回は明日明後日を理想としています。さて、おやすみなさいまし。また次回、続く未来に逢いましょう……ね?


P.S.ケルトとかスパニッシュとか民族音楽って格好良いね。

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