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裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。  作者: にゃんと鳴く狐っ娘
Loop.2#【jihad 明日を探して】
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溢れる明度のシンフォニア。R

「必要だからさ、未来人にMIB、敵なら五万と居るだろうからね」


「MIB……喪服連中は関係なかろう? 連中の専門は宇宙人が中心だろうに」


 昔、SFアクションコメディーの人気作として名を馳せたワード《メン・イン・ブラック》、UFOや宇宙人とその関係者に対して行動を行う組織。都市伝説としての知名度はそこそこだが、その映画のお陰で認知度だけは跳ね上がっている事だろう。その行動は全体的に謎に包まれており、構成員はロボットだとか、宇宙人だとか囁かれる事も多々ある。


 その一員、後に私のスポンサーとなった彼らが以前訪ねて来たことがあったのだが、その時は『君の科学力を高く買いたい』と言っていた気がする。怪しい連中だったから断ろうかとも思ったが、直後に拳銃ちっくな何かと、映画にも出てきた記憶改竄装置ニューなんとかを突き付けてきたので従うしかなかったのだ。それ以来は口座に金が来るだけ、それも不自然な額の大金だけである。


 実は、未来ガジェット八号機《誰も知らない物語》がその拳銃だったりするのだが、あれも厳密に言えば改造品である。ばらすと2度と汲み上げられない、隠蔽要らずの銃として高評価を受けたが、生産の手間によって不採用だった。つまり連中は生産性を考慮できる人数はいるという事だ。それが敵だと言うのなら、男の心情も分からない訳ではない。


「本当にそう思うか? 連中は唯、“科学力だけを求めている”と考えた事は無いか? 映画に感化でもされたか、或いはあれが1つの思考誘導だったかは理解しかねるけどね。でも、連中は鴨葱である宇宙人を技術の源として歓迎しているのさ。そう、歓迎をね」


「……こくり。こくり…………こっくり、こっくり……」


「おいお前、連れが寝てるぞ」


「疲れているのさ、休ませてやってくれよ。とにかく、君達もいずれ分かるさ、MIBは敵対組織、未来人以上に恐ろしい連中なんだとね。まあ戦う機会すら無いかと思うけど」


 っと、気付けば話を誤魔化されていた。危ない危ない、危うくMIBという釣り針に釣られてしまう所だった訳だ。にしても寝言もオノマトペとか器用だな、これから奴をネゴマトペと呼称する。ネゴシエイター的な語感という事で、区別の為にもそうする事に決定した。


「姉さん……」


 腕をつつかれる感触、脇腹をつつこう物なら全力で殴っていたのだがそんな場合でもない。どうにか持ち直したのであろう友人Aは満身創痍といった様子で震えていた。例えるならば生まれたての小鹿、立とうにも全身に力が入らないのだろう。


 そんな彼、友人Aは焦点の霞んだ目で此方を見上げる。そして小さく呟いた。


「チャンスです……、姉さん」


 返事をすると男に勘付かれるであろうか、取り敢えず私は引き寄せた友人Aの手の平へと『YES』の文字列を書き込む。すると彼は気付いたのか、続いて私の手へと文字を綴った。敬語を保っている辺り、命に別状は無いかと思われよう。


『女』『ね』『て』『ま』『す』


 そんな彼が一文字ずつ文字を描く中でも、私は男へと追求を続けた。男には見事に誤魔化されたが、私が聞きたいのは“如何なる手段を持ち得て少女を従えたか”という問題だ。質問の仕方も悪かったのであろうが、未来の七ヶ崎一喜憂である男、彼は格段に心理戦技術が向上している。目深に帽子を被り直す彼に、私は再び真意を求め訊ねた。


「七ヶ崎一喜憂、お前はどんな手段で彼女を手籠めにした? 彼女は現代人だろう? 《アバターエヴァン》である意味も、そうなる意味もてんで見当が付かないのだが」


『8』『ご』『う』


「何、ちょっとしたトリックだよ。僕から聞いていないのかい? 《ルナシェルコール》みたいに、ナノマシンを注射できれば2日は洗脳できるってね」


 記憶に無い。確かに《ルナシェルコール》、七ヶ崎乃々葉についての事は大体を把握していたがナノマシン注射実用化の事実は初めて確認した気がする。最も、技術水準からすれば《アバターエヴァン》存在の時点でナノマシン注射の存在は裏付けられた様な物ではある。だが、“有るかもしれない”と“確かに存在する”のでは訳が違うのだ。私は続けて問い詰めた。


「ならば、如何にして彼女に能力を与えたのだ? 生身の人間、それをここまで変容されるだなんて術、私には皆目見当が付かないのだがな」


『お』『れ』


「技術は進歩する物だろう? ならばその注射が開発された数十年後に飛んでみた訳だ、過去に戻る材料調達はその数百年先で済ませたし、コストの問題でも技術の問題でもそちらの方が理想的だった訳だ。未来人は真っ先に過去へと捜索隊を送ったがね? それで、馬鹿な連中をよそに僕は見付けてしまった訳だよ。人間兵器の作り方をね」


「…………納得だ。それなら、少女調達の仕業に思えた事件とも整合性が取れる。つまりは自分の研究、その先に開発された技術を再開発して持ち込んだ訳か。だから2日という期間も、少女らが生身の人間だという事実も関係無い、と……」


 悪魔だ、まさしく奴は悪魔だった。自分の兵隊、駒として浚った少女を用いていたどころか、未来の兵器を転用してそれを過去へと持ち込んでいる。その使用用途が私欲の為、戦うために罪の無い少女達を贄としたなら尚更である。


 私は考えていた。果たして治せるのだろうか、彼女達を元通りに。しかし、機械を破壊する彼と共に生活していたとなれば……恐らくは一喜憂の“力”を用いたとしても望みは薄い。こみ上げる悔しさに、私は奥歯を噛み締めていた。


『せ』『な』『か』


 友人Aの文章、それを纏めるならば『女が寝ています、俺の背中に未来ガジェット8号機があります』という意味になるのであろう。私は、また男に質問をしながら、友人Aの手の平へと文字列を綴っていく。


「未来の七ヶ崎一喜憂よ、少女達は治るのか? 元通りに普通の人間には戻れるのか?」


『は』『し』『れ』『る』『?』


 友人Aから返ってくる『YES』の返答、それに対してまた私は言葉を返した。未来の七ヶ崎一喜憂が告げた真実、それに耳を傾けながらも、きつく歯茎を噛み締めながらも、だ。


『あ』『い』『ず』


「出来るさ。唯……ワクチン注射が必要だがな、手元には2本しかないのだがね」


「この野郎……!!」


『で』『ん』『き』


「何、この時代でも量産は可能さ。ワクチンも、ナノマシン注射もね。ただ、それこそMIB規模の資金源が必要にはなるだろうけどね。どうだい、庇ってくれるというならプレゼントしても構わないのだよ? 《タイムパトロール》なんかよりも、相当に高い地位まで登り詰める事が出来るだろうさ。連中が望んだ超科学兵器となれば尚更ね」


「誰が貴様なんぞを!! 私は反則が嫌いだ、そしてズルはもっと嫌いだ……!!」


 私は叫んだ。しかし、男はくすりと笑って言い返してきた。一時、起こしてしまったかと不安になりネゴマトペを見遣るが、そいつは最早立ったまま船を漕いでいた。つくづく器用な奴だなあオイ。


「嘘だね。未来の君にタイムマシン完成のラストヒントを教えたのだがね、その時やつれていた君は随分あっさりと協力を申し出てくれたよ。最も、その時に君へと手渡したのはタイムマシンの設計データ、だからMIBから見捨てられつつあった君も、今は共にこの時代に居る訳なのさ。逢ったんだろう? 彼女と」


 過去の事だ。確かに、数十年で光速を超えるなぞ不可能だろう。むしろ、過去に戻る技術自体が絵空事、夢物語に等しい存在なのだ。つまり、男は大きな回り道をして今に来ている。遥か未来でどんな手段を用いたのかは謎だが、未来での資金と資材の調達に私を利用したというのには納得がいく。少なくとも、数十年先で過去への《タイムトラベル》を確立するよりは遥かにマシなのであろう。


 未来へのタイムマシン。それは実用化に近いもの、或いは理想に近しい物でも幾つか理論は存在している。ウラシマ効果や双子のパラドックスを利用した物や、コールドスリープなんかもある意味同じ効果を期待できる。何処かの研究所ではマウスの脳を機器へと複製さえされているという。それらを駆使できれば十二分に未来への道は開ける。もっとも、今現在では夢物語に変わりはない。


 彼が言う限り、彼の《タイムマシン》は数多に広がるパラレルワールドの内、他世界での矛盾を被害として被るこの世界だけが行き来の対象にも思える。だとすれば、他の未来人である《アバターエヴァン》が口にした品物はより高性能な物なのでは無いのだろうか?


 なんでも、葉月らの世界では既に過去改変がなされ、第2次世界大戦が未来勢力で混沌と化しているそうでは無いか。つまり、未来の私が《タイムマシン》を求めるなら……、


「“天津風未来は世界の壁に囚われない完璧な《タイムマシン》を求めている”のさ。この時代へと彼女を連れ込んだのが間違い。彼女は今、僕らを犠牲にそれ唯1つを追い求めて居るのだろうから。彼女は恐らく、《アバターエヴァン》との接触を図るんだろうさ」


「…………そうだな」


 私でもそうする、私ならそうするのだろうと納得できてしまった。唯、納得がいかないのはこの男と協力をした事。果たして、いくらやつれた未来の私と言えども、他人の技術を欲しがるだなんて有り得るのだろうか? 私の事なのに分からない、断言できない。時の壁、それは只管に厚い壁だと私は思った。


「だからね、僕達はMIBや未来人だけじゃない。未来の君を止めなくてはならない訳さ」


「だから、今の私を殺すというのか? 過去のお前が言う、ループの遥か外側に位置する私を……」


「愚問だね、そうするしか無いだろう? 最後に聞こう、僕を庇うつもりはないかい?」


 男は身を屈めた、ナイフを手に腰を落として此方を睨んでいる。知ってか知らずか、脇のオノナントカ、取り敢えず擬音女もこっくり呟きながら腰を落としていた。目を開けたまま寝てるのか、或いは寝たまま動いているのか、どちらにしても器用な奴だな!!?


「残念だ。答えはノー、そして問いにはノープロブレムだ!! 行くぞ、友人A!!」


 目くらましの電撃、周囲に放ったそれはパソコンを壊し、眩い閃光と共にディスプレイを爆散させた。目暗ましには上々だろう、私は友人Aの手を引き駆け出そうとする。そこに男は身を乗り出し叫んだ、耳に痛いしゃがれた声で。


「させ……るか!!」


 と、今にも飛び付きそうな男の額へと、未来ガジェット八号機《誰も知らない物語》の銃口が突き付けられる。大分回復したのであろう、今回ばかりは運が良かった友人Aは言った。自信満々に笑う、はにかんだ笑みで男へと喋った。


「おっと、それはコッチの台詞だぜ。俺達は死ねない、お生憎だが一遍こっきりん人生を謳歌してるもんなんでね!! それとだ一喜憂、貴様に“俺”だなんて背伸びした言葉、これっぽちも似合ってねえぜ?」


「行くぞ友よ、馬鹿なそいつは後回しだ!! 自分と世界に酔いしれた下戸なんぞ、見ていて虫唾が走る! 逃げるぞ、トンズラするぞ!!」


「久々に聞きましたよトンズラなんて。走りましょう、姉さん!! 追ってくるなよ、一喜憂!!」


 私達は駆け出した。友人Aは男を強く蹴飛ばし、私は彼を連れて扉を開いた。廊下の色は黄昏の赤、彼方に夜を見据えた暗がりのオレンジ色だった。遮光眩しいその廊下、そこを玄関前へと私達は貫き進むのであった。


◆◇◆◇◆


 一方。


「…………こっくん、くぅ……こっくん」


「ってえ……、お前さえ寝ていなければ、きっと……!!」


 つくづく運の無い男、それが七ヶ崎一喜憂の一面でもあった。

 どうも、おはこんばんちわっすっす~作者です。むしろ明けましてです、おめでとうかは人によりけりでしょうがお正月ですね。お餅が美味しいです、凄く美味しいですハイ。


 さて今回、やたら筆が進んだ印象がありましたがパソコン室は終了でしょうね。ある意味、未知との遭遇だった訳ですが、ここで敵が明かされる訳です。まあ未来の彼自体が敵なのでしょうけれども。


 あ、基本オノマトペちゃんはお飾りですね。やたら器用な子ですけど名前が明かされていません、しかも命名されてすぐに忘れられてしまうという扱いの酷さですね。ある意味、マスコットでもあるのかもしれませんね。存在自体が個性ですから、彼女は。


 時を経て人は変わります。子供にとって未来は夢見るもの、大人にとって過去は顧みるもの、そう形を変えていくのが時という概念なのです。作者はそう思っています。夢は形無し、世は無常、顧みつつも戻れぬ過去へとそんな具合です。うまく韻が踏めてんませんが悪しからず。


 一応、形だけの《タイムスリップ》物ではある本作ですが、やはり内容としてはファンタジー色が強いのかも知れませんね。というか、最早ファンタジーじゃないですか。というか出だしが“そらおと”だとか友人に言われましたよ、『ラピュタ乙』って!!


 いやまあ確かに元ネタですよ? 緋弾の●リアさまやその他諸々、沢山の作品にて用いられる典型的なボーイミーツガールですとも。ええ、まあすっぽんぽんだったりなんかはアレでしょうけど。


 タイトルからして釣る気が満々なんでしょうけどね、正直。でも、実際いると思うんですよ作者。『タイトルだけ見て敬遠しちゃった人』、『出だしの流れで読むのやめちゃった人』。


 だって、雰囲気からしてハーレム臭かったじゃないですか、青春物臭かったじゃあないですか? ええ釣りでしょう、むしろ科学バリバリになり始めたら『俺の青春を返せ』と言わんばかりにマニア向けですよ。多分、そこで初期『ハーレム期待勢』が離脱なのでしょうね。


 そう考えるとこの作品、対象者どんな人間なのだろう。そう、ふと考えてしまったのです。


 少なくとも、目を引く箇所は『裸天使』と『バスタオル』、それとカオスなタグが最初じゃないですか? まあ異色作なのは確かですよね、『少し不思議なSF風味能力者バトル現代学園物+恋愛&コメディ』だなんんてなんですかコレ、いやしかも雰囲気的に『未来の僕を乗り越える物語』とかそんなテイ●ズとかの売り文句みたいなジャンル名になりそうですよね?


 皆さん、本当にお付き合い感謝しますよ。もう皆さん、こんなぶっとんだ作品と作者相手に付き合って下さるあたり菩薩ですよ、にょらーいしちゃいますよ?(←意味不明)


 とにかく、今回はここまで。次回にまた逢いましょう? そろそろ、そろそろ話を〆に掛かりたいけどもう一周とかなりそうで怖いな……では、また見てね!! また見てギア●、ギギ●ル、ギギギア●!!


P.S.思うのです、ラグラージってキモくなくね? と。

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