咲き誇る華舞のエチュード。
私の頬を掠めた刃、束の間閃いたカッターナイフは私が放つ電光に照らされる事すらなくひらりと闇に溶け去った。
事実私は唖然としていた。敵の攻撃、鎌鼬の様な斬撃はてっきり超高速のヒットアンドアウェイだと考えていたからだ。それがどうだ、今や相手も姿も攻撃に使われたその凶器すらも何一つ見えないのだ。完全な暗闇でもないというのに、異常なまでの見にくさだった。
「どういう事ですかね、これ……」
「ああ、さあなっ!」
背中合わせの友人Aが問い掛けてくる。もう1度襲い掛かってきたナイフを弾き返しながら、私は返事ともつかない声を返した。いまや2人は追い詰められている、背後からの連撃によって部屋の中央へと押し入れられた。
「どこから!?」
友人Aが叫ぶ、二つの意味があるのだろう。どこから襲い掛かってくるのか、或いはどこから襲い掛かってきたのかだ。しかし、叫んだ所で意味は無かった。
「分からない……だが部が悪いのは確かだな。恐らく罠に嵌められたか、この部屋自体にトリックがあるのだろうな」
「パソコン室、一体ここに何がっ!」
肩に傷を受け、痛みに姿勢を崩しながら友人Aが言った。どうして敵は一思いに殺さないのだろうか? わざわざこうして嬲り殺す様にする必要が、一体何処にあるというのだろうか。
分からない、どうした事か何一つも閃かない。不思議と頬を汗が伝う。私は思考を止められない、どうしたとしても止めてはいけない。
死にたくなんて、ないからだ。
ならば、敵の能力は何だ? 蓄放電に水流操作と続いたこれまでの奴等とは異質だ、どちらかというと防御よりの力に思える。
ナイフ自体への攻撃は引くように逃げられ当たらない、網から逃げる蛍を追う気分だ。そして、本来はそれを握る箇所自体に存在する敵の肉体への放電も向こうに思えた。
電流を加減したのがいけないのか? しかし、これ以上は隣の友人Aにも危険が及ばないとも限らない、彼への被害が無いと断言できないのだ。ジレンマだ、ならば私はどうすれば!
「一体、なんなんだよコイツはっ!!?」
◆◇◆◇◆
「にゃははっ! なかなかに芸達者にゃよね、まだまだペース上げるよ!」
「身体速度の加速……!?」
トンッと響いた地を蹴る音、ふっと視界から八代が消えた。しかし、彼女はすぐさま久遠へとカポエラばりの回し蹴りを浴びせていた。正しく電光石火な彼女の技に対し、どうにか回避を繰り返していた久遠は目を見開いた。
「まさか、意識速度さえも数倍速だなんて……」
「にゃはは♪」
葉月が呟く。久遠へと繰り出されるジャブの嵐。それを受け止める袖は確実に糸を綻ばせつつある、時間の問題、久遠の瞳にも苦痛の涙が浮かび始めていた。
「はあっ!!」
葉月が振り回した大鎌。しかし、八代はその場でハンドスプリングをする様に身を反らしつつて空中回避をしてみせた。その瞬間だけは、慣性運動の合間だからかスピードが通常だった。
「にゃは!」
そして、着地と同時に下から蹴上る様な蹴りが八代の高速回転から繰り出される。まさしくコンマ数秒の一撃に、鎌を握る葉月の左手は腫れ上がっていた。飛び掛かろうとしていた久遠も、そこからの着地から繰り出された踵落としに飛び退く羽目になった。
最早、僕には手が届かない世界、意識が到底辿り着けない次元での戦いだった。疲弊する仲間、それなのに相手は息1つ切らさずに笑っていた。おかしいと知っている、この光景がおかしいと、戦う事自体がおかしいのだと僕は理解していた。
だけど、何故だろう? いつしか巻き込まれていた、或いはみんなを巻き込んでいたのかも知れない。気付けば価値観がずれていた様に、僕の住むこの世界もまた表情を変えていた。残酷に、残虐に振る舞う《アバターエヴァン》の様な現実がそこにはあった。
「にゃははははっ! にゃふ♪」
理不尽な現実、非力な僕には如何に抗えと言うのか。僕は両手を見詰めて溜め息をひとつ、見上げた先の非現実へと視線を移した。
そして、大きな溜め息をまたひとつ。
「逃げられない、現実……」
視線を移した青空、久遠が放つ爆炎の煙に靄がかかりつつあるそこを鋭利な影が横切っていくその時だった。
「通り雨、天気雨です?」
「ちょっと、牽制の火力が……!」
遂には神にも見放されたか、途端に雨は夕立の如く雨足を強めた。久遠の炎が目に見えて小さくなる、それを好機といわんばかりに飛び付いた八代、その一撃を庇いに割り込んだ葉月が食らってしまう。
「あぐっ!! つうっ……」
呻き声と共に膝から崩れ落ちる葉月。事態はまさしく最悪の状況へと変わりつつある、そんな風に僕には思えた。
どうしたら良いのか、どうすれば良いのか。幾ら考えた所で、さして状況が変わる訳でも無かった。
こんばんは、作者です。暫く間が空いてしまい誠に申し訳ございません、腹痛でした便秘由来の。作者はお腹が弱点です(意味深)
さて、今回は新キャラ2人との戦闘ですね。微妙な演出ながらもピンチです、さて主人公は死ぬのか死なないのか、なんてまあ死なないだろ絶対な作品との差別化はかれていたらなぁと考えてます。
まあ、生き返るんですけどね。残機無限で無茶すぎるエンドレスエイト、なのでしょうか? 死亡限度は明言していませんが、死にすぎた結末は存在するのかも知れませんね。四十九院乃々葉さん以上に主人公が死んだ先、一体どんな世界なのでしょうかね?
取り敢えず今回はここまで、また明日明後日にでも逢えたのならまた逢いましょう?
おやすみなさい、どうにか皆様と明日を迎えられます様に。まあ週末論なんて信じていませんけど、終わるならみなさんと一緒にね? とか言ってみる訳ですよ〜、今日は出来れば記念短編を書きたいなと思っています。仕上がるかは別ですがね?
おやすみなさい、また明日。素晴らしき明日の世界で逢いましょう? 未来とは近い、過去とは遠い、今なんて距離は光の中に潰えて。不思議だよね、さておやすみ。
P.S.終わってほしい世界、続いてほしい世界? コンティニュー?




