クロス・ザ・ルビコン;破
ノリノリな未来さん、スマホを取り出した彼女に対して過去さんは伝えた。いまだに止まない鍵打音は、私の知らない未知の速さだ。
「白、此処のLANは外部と隔離されている筈だな?」
「未来ネットワークのサーバー以外は別回線だよ、実質的には繋がっているが未来ネットことクルネットは外部からのアクセス規制が厳しいからな、駄目なコードやらプログラムは併設した外側で弾く仕組みだ」
「そうか、ならばやはり物理的に割り込んできた様だな」
私には理解し得ない単語が会話に流れる。どうやらコンピューター用語らしいその羅列、普段聞かないカタカナ語ばかりに目眩を覚えた。
「だが、ポートやハブは多重リング型のシステム構築の為に使っているぞ? まあ半分はセキュリティが理由だが、途切れたりしたら警告が出る様にはしている」
「私の時代じゃそれは通じん。確か、サーバーは校内各所に分立しているんだよな? ならば総てを見回らなければ行けない、奴等は常識はずれな存在だからな」
止まらない過去さんの手、それが目まぐるしい速度でキーを打ち込んでいく。その隣では某タブレットPCを取り出して未来さんがまた何かをしようとしていた。
「友人A、ドクペと外付け2号を大至急だ! まずは最低限の復旧と防壁の再構築、時間を稼がねば話になるまいさ!」
「相変わらずマイペースだな。飲み物確か切れてたぞ、さっきみんなで飲んでたからな」
「うなああ――――っ!! 我が妹、あの野郎……!」
「女子に野郎は失礼ですよ、未来さん?」
「無礼講にしたのは奴、だから私も何言っても良いの! 良いんだよ、グリーンだよ!!」
「訳が分からんぞ、私……」
気恥ずかしいのか僅かに照れた様子で過去さんが言った。ああ、ドクペとはドク●●ペッパーの事でしたか、最近あんまり見かけませんね。アレ、好きなんですけど残念です。
「8基中3基が盗られた、それでも今取り返す所っ……よいしょ――っ!!」
「おしきた、私2人とか鬼に如意金箍棒も同然だぜ!!」
「まさかの半分西遊記……とにかく首尾は如何なんですか?」
「「最高にハイって奴だぜぇ!!」」
「…………」
もうやだこの2人、日本語話さないんだもん。流石にしんどくなって来ましたが、2人も2人で指先を止めないのが辛いように見えました。
やたらと速い指先、ターンとエンターキーが響く度に画面をガラガラと文字が流れる。そしてその度に警告が耳をつんざく。
「エラー文書が『hello world!!』とかふざけてやがる、コイツ余裕綽々じゃあないかよ!」
「らしいな、遊ばれているみたいだ。むしろ踊らされている様な、ダンスでエスコートされてる気分だなコイツは!」
「良いぞ、私こと未来は校内を回ってきてくれ!! 此方は私が引き受ける、友人Aも出来れば共に行ってこい! 今だけは任務を続けろ、任せたからな!!」
「……りょ、了解!」
「ああ、行くぞ親愛なる友人Aよ! あと過去よ、絶対にゲーム進めるなよ? 泣くからな、絶対に進めるなよ!!」
言葉と共に外へと消えた2人。未来さんの言葉は捨て台詞あるいはフリにしか思えませんが、先程までのぎこちなさが驚くほどにまで無くなっている様に思えた。
そして、私と膝の上に頭を垂れる西園寺さんとが残る結果になってしまった。過去さんは暫し画面を睨み、今度は此方へと視線を移した。
「どう……しましたか?」
何か、内側を見透かされた様な気がしてしまう。拭いきれない不安や疑心、それを読み取った様に過去さんは微笑む。
赤い瞳、品定めするかの様なその目線からは逃れられそうになかった。私を下から舐め回す様に見詰めて、過去さんは言葉を紡いだ。
「“力”とやらには興味があるよ、なあ……《ルナシェルコール》?」
こんばんは、作者です! 伏線回収しがちな今日この頃、今回は少しばかりややこしいのかも知れませんね。
七ヶ崎乃々葉に四十九院乃々葉、謎だらけの2人に加えて今と未来の天津風姉という雁字搦めのキーワードですよね。過去か未来か、2人の乃々葉とは一体何者なのか……以前は“本来居なかった者”だと誰かが語りましたが、これからそれが変わるのでしょうかね?
稚拙で緻密な物語、次回は少しばかり複雑かも知れませんね。それも楽しんで頂ければ幸いですよ。
では、おやすみなさい。皆様には良い夢を、終わる事なき白昼夢の様な恍惚を永久に。
また、明日にでも逢いましょう。
P.S.この作品、鵜呑みにしたら火傷しますよPC用語とかは特にね。ご注文……じゃなかったご注意を。




