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裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。  作者: にゃんと鳴く狐っ娘
Loop.2#【jihad 明日を探して】
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枝垂れた福音、女神の角笛。γ

「ふふっ……」


 言い終えてから小さく過去さんが笑う。その不敵な笑みは圧倒的な自信に満ち満ちていた。そしてひらりと、跳ね踊る様に身を翻して過去さんは左手を差し出す。


「楽にしてやる、最愛の友よ永遠に。さぁ……」


「止めてっ!!」


 突如叫んだのはなんと、未来さんだった。まるで噎ぶ久遠の様に上ずった声、それがまさしくもう一方の少女の口から飛び出したのだ。普段の彼女は虚勢だったのかと思うほど、やはりその声は乙女で年相応の少女の様に思えた。


「もう……邪魔をしないで、もう……」


「姉さん……!」


 萎んだ声で懇願する未来さんへと、遂に友人Aが口を開いた。過去さんへと身を乗り出した未来さんを、過去さんという存在から庇う位置へと割り込んで彼は話しを始めたのだ。はっとする未来さんと、鋭く目線を細めた過去さんの目線が交錯する。


「確かに、その目にその髪、その声は未来さんです……未来の時の」


「やっと……認めてくれたんだね」


 過去さんが、胸元で両手を握り締める。瞳を閉じて、やがてゆっくりと紅を見開く。その時の彼女は狂おしいまでに可愛く、とても艶めかしい物にさえ思えた。そんな彼女に、友人Aは言い放った。


「だがしかし、貴女には過去介入の必要が無い筈だ。どうして貴女が此処に居る、どうして今更此処までやって来たのですかっ!!」


「お前……」


 叫ぶ友人Aに未来さんは呟く。血走る赤目と白亜の頬、それを過去さんへと訴える友人Aの横顔へと浴びせる。事情は分からないが、それでも彼らは悩んでいるのだと理解できた。


「簡単な話だ。確かに私達の組織、その役割は“正史の完全確保”へと形を変えた。しかしだね? 気付いてしまったんだよ私達は。『歴史は繰り返される物』だとね、オーパーツにしたって同じだろう? この街にも存在する都市伝説、それも未来からの差し金だったのだからな」


「どういう事だ?」


 つい僕も口を開く。記憶を失ったからか1周分を損しているとは久遠から聞いていたが、その久遠も首を傾げていたし、僕達よりも遥かに多くのループを経験する乃々葉でさえもそれは同じな様だった。


「《タイムパトロール》、Artificial Attractorアーティフィシャルアトラクタ……?」


 久遠の呟きに、その場はまた硬直した。そして暫しの寸暇の後、過去さんは感心した様子で口を開いた。友人Aがそれへと続く。


「知っているのか、妹よ。何処でそれを覚えた、それを私は知り得こそしないが、それに私は敬意を抱きたく思うよ。真実でありまた虚偽、しかし我々は歴史を守る者である」


 その言葉に、友人Aは再び叫ぶ。握り締めた右手、それで空ごと不安を拭い去ろうとしながら。しかし、そんな行為に結果などは伴わない。其処にあるのは虚しさ、何も無く涼やかな虚無だ。


「ならば、ならばどうして……どうして此処に来たのですかと!!」


 その言葉に過去さんは答える。自嘲気味に、且つ厭世を漂わせて含み笑いを零しながら。それは、世界に飽きたマッドサイエンティストのイメージに似ていた。


「くすっ……簡単だよ、気付かないかい? 歴史は輪を描いて廻っている、この世界は破綻してるという事にさ」


「分かる訳、ないじゃないですか……未来さん!!」


 すかさず反論した友人A。だが、それは最早反論とは言えない。唯の思考放棄と過去さんは笑うのだ、きっと。七ヶ崎乃々葉、それとはまた違う歪みを彼女は見せた。赤く輝く瞳が嘲る。


「ふふふっ、あははっ! だから過去だと言ったろう? このまま行けばな、君は何時まで私を守るか? 可笑しいとは思わないのか? 組織設立からずっと隣に居て、そして組織の始まりへと帰依するお前を、お前自身は不思議だとも思わないのか!? 馬鹿だな、阿呆だな!!? お前は、お前は私は神の手で踊ってたんだよ……ずっと!!」


「でも!!」


 未来さんを守る為、僕らの元へと友人Aはやって来た。そして彼は未来さんと某組織、Artificial Attractorアーティフィシャルアトラクタを設立した。やがて時を経て組織は変わり、その役割は歴史守護へと変容する。その際に、友人Aという存在は過去へと飛んだ。組織の始祖、未来さんを守る為に。


 恐らくは、そこまで酷な物語。無常なそれは神の所業か、過去さんの主張も分かる気がしつつあった。叫ぶ2人、惑う1人の少女を廻る口論。不可思議な空間に、僕らの興味は磔だった。噛み合った歴史、無駄になった存在意義、その重さには痛い程の矛盾があって、だからこそ成立した理論が首を絞めてく。だから過去さんは、此処へと逃げて来たのかも知れないと僕は思った。


「でもお前はそれで良いと言う!! それが、それが無意味だと何故分からん! 分かれ、お前の居場所が歴史に無くなる!! お前は居ない、過去にも未来にも……そんな理屈を通して堪るかっ!! だから、だから来い友人A……やり直そう、ユージーン・アイザック!!」


 だが、それは本当に正解なのだろうか……?

 おはようございます。投稿遅れまして申し訳無いです、作者です。


 今回は、というかこれからは過去さんが話に絡み始めてきます。と、言いますか友人Aが主人公ばりに目立っちゃいますね。何人かが空気ですが、それは後ほど埋め合わせを目指したく思います。


 今回も閲覧ありがとう御座いました、取り敢えず今日はここまで。余裕があれば続きもあげますが、恐らくは厳しいものだと思われます。なので今日は早めに、休みを取らせていただきますね?


 なにせ深夜執筆になりましたので、今宵はもう寝ます。おやすみなさい、また明日。朝にお読みの皆様、皆様方の今日が麗しくある事を願いましょう。なんかヴァンパイアみたいですね、私。


 とりあえず、また明日にでも逢いましょう? ……ね。


P.S.句読点、特に句点が多すぎでしょうか?

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