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裸天使にバスタオル、僕には生きる意味を下さい。  作者: にゃんと鳴く狐っ娘
Loop.0【親愛なるキミへ】
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四十九院と天罰ゲーム:急

 人が一番怖いのは無知に陥る事だと思う、周りを未知に囲まれた僕は正しくそれだ。


 状況も分からず、結末も分からずに踊るしかない。自分から何も出来ずに流されるままの存在、それが今の僕自身だった。



◆◇◆◇◆



「出番を下さいよ、お父様……」



◆◇◆◇◆



「さて、七ヶ崎が何をしたんだっけ?」


 プール脇。夏に触れると暖かい白い壁に凭れる青髪の少女と、その頭の脇に手を着いて顔を訝しめる久遠が居た。


「時間を壊して過去を変えた、つまる所の過去改編よ」


 問い詰める久遠に、答える青い夜会巻きの少女。僕の事を話している様だが、つまりそれは2人も何かを知っているという事だろうか?

 僕は、影からしばし聞いている事を選んだ。非常口を出れば、フェンス越しに一段高いプールを眺める事が出来た。


 都合良くあった茂みに身を隠す、小柄で良かったと思った自分を呪いたい。プールに踏み入るには向こうまで回り込まなければならず、僕はここで傍観する事を選んだ。


「あんたね、冗談言ってると私怒るよ?」


「シワが増えるよ」


「余計な御世話よ。あいつがそんな事する訳も無いし、そんな事出来る訳が無いじゃない!」


 青髪、風変わりな髪色の少女はどうやら未来人らしい。瑞瑞しい長髪を揺らしながら少女を否定した久遠は、続けざまにこう断言した。


「あいつはね……過去を悔やまないのよ、乗り越えられるの。親御さんが亡くなってしまった時も泣かなかった。私が馬鹿みたいに泣いてる脇でずっと俯くだけ、私の頭を撫でてただけよ!?」


「……へえ、そうなの?」


 体育座りで壁に寄り掛かる青髪の子は、なんとも言えぬ頷きを返した。躍起になる久遠、その姿はやはり頼もしく思えた。


 いったい何故、未知の力を持つ未来人に久遠が優勢に立ち回れるのかは不明だが、口論では情報量からして青髪の未来人が有利な気がした。


 そんな久遠は続けて、


「そんなに芯がしっかりした奴がわざわざ過去を変えたがる? 私はそうは思えない。まず高校生にそんな大それた事が出来る訳……無いでしょ!?」


 嬉しいと思った。だが、それは違うとも思った。僕は強くない、過去を悔やみはするし嘆きもする。


 久遠は僕を過大評価していた。しかし、それから生まれた信頼はとても熱く、絆は千切れぬ固い糸となっていた。


 だから、久遠とは長く続いたのだろう。真っ直ぐで折れなくて、人を強く信じれるから。


 僕とは、大違いだった。


「出来るよ」


 青髪は言った、頬杖に歪んだ無表情と押し殺した声色。怯まない久遠相手に、立ち上がりながらこう述べた。


「彼は“大事なモノを失った”の……割と遠く無い未来の筈よ。愛する人か、はたまた信頼できる友達か。彼は自ら取り戻す事を選んだの、時に抗う事によってね?」


「百合香……あんた、やっぱり未来人?」


 久遠の問いに立ち上がった青髪、百合香と呼ばれた少女は答えた。巻いた髪が左右に揺れ、水飛沫が綺麗に散った。


「今居るココとは結末がずれている世界から来たから異世界人でも良いけど? 総てを引き替えにしても良いモノ、貴女になら有るんじゃなくって?」


 一呼吸おいて、


「七ヶ崎一喜憂とか?」


 百合香の掻き上げた巻き髪、千切れたゴムより解き放たれた長髪がウェーブとなって降りてゆく。


 腰まで垂れるポニーテールほど頭を揺らし、空いた腕で口許を隠す久遠。明らかに戸惑う素振りで久遠は言った。


「それは、そのーっ……」


 ※どうやら図星だったみたいです。


「はいはいご馳走さまー、精々頑張ってみなさいよ。私達は彼殺すから足掻きなさいな、簡単すぎたらつまらないでしょ?」


 これは……僕が聞いても良かったのだろうか?


 これから久遠と、一体どう接すれば良いのだろう。こんな時の対応を、僕は知らない。


「それで、貴女は私をどうするつもり? 焼き殺しても煮ても構わないし、なんなら拷問してみる?」


「止めとくわ。あんたの話を聞く限り、あんたも寄生型とやらのサナダ虫なんでしょ? なら身体の持ち主に悪いじゃない」


 “あんたも”……?


 どういう事だ、久遠も未来人だという事なのか? 少なくとも久遠も何かを握っているのは明白だ、ますます久遠との間に隔たりが生まれるを感じた。


「貴女のは目標地点だった今より遥か以前、数世紀前に《タイムスリップ》しちゃった奴みたいなんだよね。寄生型は血にも混ざるから薄まるのよ。私はまだ大丈夫だけどね、貴女のは自我が無いでしょ?」


「まあ、『何故か凄い事が出来ましたー』な女児ばかりが産まれやすい天津風一門に伝わる伝承だったりするし、それが何の作用かは分からなくとも悪影響は出てないわ。てかあんたも寄生型なのに寄生型嫌いなの?」


「同族嫌悪よ。自分見せつけられてるみたいで嫌じゃない? いくら《タイムスリップ》時に死なない為とは言え、液体緩衝材としてナノマシンにまで分解されちゃうなんてね……元はもっと胸も背もあるグラマー美女だったのよ?」


「うっわぁー、こいつこれみよがしに過去自慢とか。どうせ今は特に目立たない身長の病弱ヒッキーの癖に、欲情させた男子のオカズになる胸だけが取り柄の青髪厨二病なんですね分かりますーっ!」


「青髪は寄生前からだよ!? ボクの趣味じゃないからね!!?」


「中途半端なボクっ娘って一体……」


「虚ろな乳の虚乳に言われたくは無いわよっ!!」


「ねえ……決めた。焼却処分してあげるよ?」


「決めたわ、ボ……私が寄生して中から盛ってあげるわよ!? さあ……!!」


「是非ともお願いしたいけど、超絶ド変態に乗っ取られるのは勘弁ね!! 始めましょ?」


「「いざ、第2幕と参りましょうか!!」」


(こいつら絶対に仲良いだろ……)


 そんな事を思いつつも不穏な会話を聞いていた時だった、肩をつつく感覚に振り替えるとあろう事か四十九院乃々葉が後ろに居た。


 ただ、肩をつついていたのは銃身だった。太い2連装の柱、漫画で見るレールガンの様に見て取れた。ライフルの様に無骨なそれを構え、奴は黒い笑みを浮かべていた。


「な、何故ここに……!?」


 まるで小物みたいな発言が溢れた、振り替えるとナスカの地上絵の鳥に似たデザインの機械的な翼を生やした四十九院乃々葉と思わしい人物が居た。


 別れた時には振り返れなかったが、銃声より誰かに撃たれた物だと思っていた。僕は悪霊を見た様な気分になる。


「初めまして七ヶ崎一喜憂くん」


「さ、さっき廊下であっただろう……?」


 脳が叫ぶ――逃げろ――此処に居てはいけないと。本能的な危機感が僕の中に渦巻いた。


「私は半有機生命体時跳躍個体が1人……《アバターエヴァン》が統合狂化固体ルナシェルコールこと七ヶ崎乃々葉と申します。不束者ですが何卒」


 名字が同じ? そっくりさん所じゃない、瓜二つと言っても良い。僕には四十九院乃々葉と同一人物にしか見えなかった。


 七ヶ崎乃々葉はにこやかに笑い、首を傾げた。悪戯な笑みまで同じで、その乃々葉は問い掛けた。


「早速だけど……天罰ゲームを始めましょう?」


「天……罰ゲーム?」


「そう……生存競争、神が与えた御遊戯よ。ベットは命、行きますよ!!」


 僕の未来は混沌だ、深い夜霧に覆われた血生臭い現実だ。


 自身のドッペルゲンガーに逢えば死ぬという、他人に会ったらどうなるだろうか?


 勝てる見込みは無い、だから足掻こう。きっと四十九院乃々葉はこいつの銃で撃たれたんだ、僕もそうなるに違いない。


 友人Aが消えた、幼馴染みの恋に気付いた、謎の転校生が美少女だった、目前に覗くのは銃口、頼りの天使は風邪で駄目……バッドエンドには充分過ぎる条件じゃないか?


(ふふっ……馬鹿みたいだな)


 だけど、どうせなら格好良く死んでみよう。未来を刈り取る死神に、天使無しでも足掻いてみよう。


 なけなしの力。機械を殺す力で、僕は神さえ殺して見せよう。無理だと知っていても、その昂揚は止まらない。口から啖呵が溢れだす、


(プロローグは突然で最終回も突然か? だが僕には、知りたい事が山程あるんだ!!)


 さあ、


「殺れるもんなら、やってみやがれ!! 僕は……七ヶ崎一喜憂は此処に居る!!」


 天罰ゲームを……


「運命も必然も、偶然も何もかも……森羅万象須く総て仇為す者を僕は!!」


 始めよう!!


「総てを纏めてブチ壊す!!」

 その幻想を(以下略


 どうも、キメ台詞が必然的にパロディ臭くなった作者です。


 即刻退場した友人Aが意外に好評だったりして吃驚です。葉月と並んで出番が少なく、青髪な百合香より台詞が無い筈なのに、何故か影がやたらと濃いです。


 さて、今回は遂に合流手前です。無論、邪魔が入りましたがこれは一体……?


 次回、多分バトルが来ますよ!!




PS.作者は男女比率の偏りが何よりも強く心配です。

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