久遠の時を握り締めて僕は今
遅れてしまい申し訳有りませんが、間に合いませんので仮アップです。後に展開や内容が大幅修正されるかもしれませんが、もしも話みたいに笑って許していただければと思います。
2012/11/4(sat)大幅加筆修正
「これで、最初で最後の夢がラストに叶った。と、便宜的には言えるのだよな……違うか、七ヶ崎?」
「強ち間違いでは無いかもね? それで、何故貴女が此方に?」
なんとか人影を認識できる程度の暗がり、光の無い石窟にて2人の影は遭遇していた。薄暗い石窟の中だったそこは、不自然にもツルリと磨かれた様な壁の四角い通路が地下深くへと緩やかに傾斜している。
そんな常しえの暗中に声が響いた。何かを顧みる様な愁いを懐いて、その影は問いに答えた。黒い影、手の平であろうそれが揺らめくのが眼に見える。朧な輪郭だけ、それに音を加えたものが頼れる感覚。嗅覚はともかく、聴覚しかまともに機能しないほどの暗闇だった。
「どうして、か……まあいずれは分かるだろうさ。言うなれば、ゴーストが囁いたといった所か」
答えに対し、ハーっと溜息が浴びせられる。本来ならばこの空間の冷気で白く染まるそれも、黒に隠れて視認されない。しかし、それに押し込められた嘆息、それは有無を言わさずに伝播するのだ。さながら喉を逆撫でるナイフ、そんな言葉と一緒に。
「相変わらず食えない人間ですね、貴女は」
「まあ、所詮人間はヒトにしかなれんよ。辞世しか書けない私だ、死に過ぎたとて、縋る糸は自分で紙撚るさ」
カツン、湿った空間に足音が響いた。同時に遠くから何かがグツグツと煮え返る様な不快音がこだまする。続いてバチバチと稲妻が燻り、向けられた言葉と同じ、或いはそれ以上の刺々しさで牙を剥き出しにする。
「さあて七ヶ崎、君に罪を数えて貰おう。君が奪ったのは幾らの価値か、はたまた幾らの年月か、果たしてどの程度の重さか、その身にしかと教え込んでやろう……!!」
相対する両者の内、小柄な影から電撃が迸る。あくまで威嚇であるそれは、陶酔に焦燥を加えて掻き混ぜた様な声とともに四方の壁へと紫の枝葉を伸ばした。
「一寸の虫にも五分の魂、沢山殺したのは貴女だって同じですよ? まあ、良いじゃ無いですかねぇ負け犬同士……っ!!」
ジャキン、重厚な金音が洞穴にこだまする。重なりピピピと、アラート音が五月蝿く大きく響き渡った。それと同時に、小柄な影は凛と澄ました声を荒げた。響く轟音と無音の静寂、それが交わる瞬間に未来は決した。
「さぁ、七ヶ崎……お前の罪を数えろ!!」
勝者は漁夫の利を得た者。
そして、世界は白亜に包まれる。
◆◇◆◇◆
校舎前、アスファルトは激流に剥ぎ取られる様に抉られる。鎌首を擡げた水流改め水龍は、絡まり纏まり重なりながら、まさしく“生きている様な”動きで僕らを追いかけて来ていた。西園寺百合香の高笑いが響く、依然と彼女は頭上で腕組みをしていた。
「流石はボクだよね? 普通に考えて私の能力って対多人数向きなのよね、うん。それで、逃げ回っている気分はいかがかしらね? ふふっ、ルナの予感は当るってね?」
「卑怯ですよ、降りて来て下さい!!」
葉月が黒鎌を振り回して、降りかかる水を能力関係無しに弾け飛ばすが、継ぎ足されるように続々と襲い来るそれを相手するには少し辛そうだった。何せ息が荒い。必死だからか何故だからか、その姿が目蓋に焼け付いて取れなくなる。そんな、獅子も竦む奮戦振りを見せる葉月に西園寺百合香は冷たく言った。
「何を下で喚いているのかしら、ボクは馬鹿みたいだから知らないなぁ」
「くっ!」
状況は圧倒的に不利だ。気絶した久遠を友人Aが揺すり続けているが、それも走りながらだ。戦力としては貴重である未来さんも、殆ど恥ずかしがらずに白狐モードで戦ってくれているが、電気は水に逸れてしまう為に殆ど意味が無かった。
「やはり分が悪いな……友人A、久遠を起こしたら基地から武器を!! 初号機でも何号でも構わないから、距離関係無い奴を大至急! 間に合えばMIBにも支援要請しろ、赤ボタンで使える!」
「了解、つっても……」
「反応が無いです、よほど残念さんのが効いたんじゃないかと思うのですが……」
未来さんの大声に答えたのは久遠を抱えて走り続ける友人A、続いたのがそれを覗き込む様に併走する乃々葉だった。やはり意外にも乃々葉は運動が出来るらしい、それも友人Aのアスリート走りに平然と追従する実力だ。しかし、その2人でも水流から逃げ惑うのが限界、久遠を起こす作業は難航しているようだった。失神とまどろみでは訳が違う。
「久遠! 起きろよ久遠!!」
「久遠さん、久遠さんっ!!」
やはり、返答は無かった。それを見かねて未来さんが溜息と共にぼやく、それも束の間、即座に横飛びで水龍の死線をかわして見せた。やはり神業、一体何処で見に付けたのか不思議なまでのセンスである。未来のぼやき、それは身内ならではの皮肉でもあった。
「わが妹、久遠は懐こそ大きいのだが……胸とか度胸」「胸胸言うな!! 貧乳で悪かったわね!!」
「「「…………」」」
「やはり、起きたか虚乳妹」
「く、くる姉の意地悪!! 今日のくる姉意地悪だよ、なんか!」
まさかのまさか、いや最早お約束だが久遠が跳ね起きた。立ち上がって尻を払いながら、久遠は頬をプクリと膨らませた。不機嫌そうな顔、それはそれで可愛いと思えるのは前回の告白の性だろうか? 沢山の久遠の表情、それがたまにフラッシュバックするのだ。それほもう狂おしい程に強く、狂気的な程に鮮明だった。僕の脳味噌は、その熱に焦がれる様な眩暈を覚える。また、熱が氾濫する感覚。
『優しいんだよ、そのボスはね! 甘党な貴方にぴったりだと思ったの!!』
『離して!! 私は、あたしは死んでも構わないっ!!』
『あ、ありが……とう……』
『違うよ、私……あの時もこうやって泣いてたんだよ? ずっと、ずっと前から弱虫で、ずっと前から変われないんだよ?』
『誰の役にも立たない存在なんだよ、私はね……?』
『私は、ずっと好きだったんだよ一喜憂……貴方を、君だけを見てた』
ふと、言葉に埋もれた『ずっと好きだった』が友達とか幼馴染の括りじゃない事に僕は今更ながらに気付いた。消そうにも消せない『――さようなら』の記憶、それに涙が滲んだ時に僕は、まるで忘れ物を思い出した様に気付いてしまった。僕は今、彼女を目掛けて生きている気がすると、正しい事か知らない事だが気付いてしまった。
ひょっとすると、彼女の存在にいつしか依存していたのかも知れない。その原因が七ヶ崎乃々葉による悲劇とは言え――僕には嘘に思えなかったのだから――僕はそれを信じていたのだろう、僕は彼女に夢を見続けていたのかも知れない、それはとても強く、どうやっても崩れない核心へと変わった。
(そうだ、カルデラに行こう)
全てが片付いたらそうしよう、そこで彼女に告白しようと僕は決めた。不謹慎なタイミング、本当にどうでも良いタイミングが切っ掛けになる事も世の中多いと、僕は付随するそれをあっさりと悟った。多分、それは自分への言い訳なんだろうけど。
だから決めよう、僕はきちんとケリを付ける。今日という日を何周しても何十周しても
、例え幾憶数多に繰り返そうとしても乗り越えると。そして――まだ見ぬ明日で心を決めると――僕は心を拳に握り締めた。
こんばんは、作者です。体調不良と危険物試験が重なりグロッキーです、ピンチです。
なので、お粗末ですが今回は書き溜めていたのを少し仮公開します。少なからず後に直しますので、その時はまた目を通していただければと思います。
駄目作者ですが、よろしくお願いします。お気に入り登録、ありがとうございますね? 凄く嬉しいです、作者は頑張れますよ〜!
では、おやすみなさい。良い夢を、素晴らしき明日を貴方に。狐っ娘がお送り致しました、次回もまた御覧いただければ幸せです。
では、また明日にでも逢いましょう……?
P.S.一応、誰かを明記しない会話などの設定や正体を考える猶予を持たせたりしてみましたが……難しいですね。
2012/11/4(sat)後書微修正、以下加筆
こんばんわ。今回、あげてから書き換えるという苦肉の策に出てしまいました事をお詫び申し上げます。そして展開の大幅な訂正、修正をどうかお許しくださればと思います。
我儘ばかりで、付き合いきれない様な私ですが、どうにか皆様これからもよろしくお願い致します。
皆様に、素晴しき今日を生き抜く力と夢とかを! にゃんと鳴く狐っ娘が、皆様の価値観構築に協力できれば幸いです。おやすみなさい、また今日か、はたまた明日には逢いましょう?
P.S.危険物乙4、私はどうやら博打打ちみたいですw




